夜明け
「おい、ゾネ。さっとリベラの所に運べ」
掠れた声でクルーウは横にいる、影からひょこりと顔を出したゾネに向かって言った。白い仮面に血がべっとりとついていた。
「フィクスとテオをよく殺したなぁ。クルーウって、案外強い?」
そう言いながら、ゾネは影の中から出てきた。クルーウの手を持ち、体を自分の影に入れた。リベラの所にゾネは向かった。
(影の中ってこうなってんだ)
影の中は四方に広がっており、床には色々な武器が落ちていた。クルーウの横には大剣が転がっていた。影の世界はゾネに合わせて移動していた。天井から外の風景が見えた。
「左手もしっかり拾ってくれよ!」
影の中からクルーウが叫ぶ。はいはい。と言いながた左手を拾い影の中に入れた。
「あいた!」
顔に左手が落ちてきた。クルーウの体はもう動けなかった。
(やばい。意識が飛びそう)
歩いていると異臭が漂ってきた。リベラに近づいてきたと分かった。
リベラは死体の山に座っていた。空を見上げ風に吹かれ余韻に浸っているようだった。
ゾネに手を掴まれクルーウは影の世界から出てきた。足に力を入れようとしたが立てなかった。
「おいリベラ!治してくれ!」
そう言って、左手を右手で持ち上げリベラに見せた。
「なんだ。勝ったのか?死ぬと思ってたのに……」
(俺って弱いって思われてるんだ……)
死体の山を滑り、リベラはクルーウの方に歩いてきた。血まみれのリベラが星の光を背にクルーウを見た。クルーウの左腕を持ち上げ立たせ。
「ロベリア」
そう呟くと左手が飛び断面にくっついた。
「これで。傷は全部繋がったら」
そう聞くとクルーウは立とうとした。しかし、力が入らず頭から転んだ。
「いてぇ……」
「あぁー。血とか失いすぎたね……」
「テメェだって失ったろ。なんで普通なんだよ」
「私はファート家だから」
「あっそう……」
もう聞く気にもクルーウはならなかった。
ほらと言いながらリベラはクルーウの左手を持ち上げ、死体に山に投げ入れた。
「それ、燃やしてくれ。東風に火葬だ」
「はぁー」
クルーウの体が燃え、火が死体に移っていく。鼻に悪臭がつく。
リベラはブーツを脱ぎ捨て、裸足になりながら死体の山を登っていく。
「ゾネ。油持ってる?」
そう聞くとゾネはローブの影の中に手を入れた。その中から瓶を取り出し、リベラに向かって投げた。目線も向けずノールックでそれをキャッチした。死体の山を登りながら瓶の蓋を開け、撒き散らした。
頂上に着き、リベラは足元の感触を楽しみながら踊るようにした。
「アハ、アハアハハハハハ!」
(イカれてる)
クルーウは頑張って這いながら死体の山を抜け出した。
「おつかれ……これでも食え……」
ゾネはクルーウに労いの言葉をかけた。影の中から紙に包まれた物を出した。クルーウはそれを持ち開けてみるとパンだった。
クルーウはパンに齧り付いた。
夜空を背にした白髪のリベラの姿は絵画のように美しかった。
「はぁー。楽しかった……」
満足そうなリベラは死体の山を滑り落ち、クルーウの左手を持ち肩に手を回した。
「さぁ!次の所に行こう!」
リベラはゾネ達が来た方に向かった。
焼けた死体と血を流す死体。テオとフィクス。
「すごーい。本当に勝てたんだ、罠だと思ちゃってたよ」
リベラはそう楽しそうに言う。
クルーウはそれを無視しリベラの肩から抜け出した。自力で歩いて、テオに近づく、フラフラと近づいていく。まだ死体は人間の形を保っている。よく見るとまだ燃えていない物があった。黒い物。手に取ってみると黒い眼帯だった。星が輝いてる。
「運命かな……」
そう呟くとクルーウは手に取り、黒い眼帯を大事そうにポケットにしまった。
胸だった所に左手を置き、テオの体を燃やし尽くした。灰になり、夜風に飛ばされた。
「終わった……?フィクスもよろしく……」
フィクスの体を持ってきた、ゾネがそう言った。
「ありがとう……」
また胸の所に左手を置き、フィクスの体を燃やし尽くした。
「次はロマンだね」
「うわー。悲惨だね!」
まだ燃えているロマンの村。沢山の悲惨な死体。それを見ている、リベラは楽しそうだった。
「そういえば、酒場に財宝があるよ」
思い出したかようにゾネが言った。
「あぁー。言ってたね!金があるとかそんなこと!じゃあ次は酒場だ!」
「食べ物あるといいな……」
フラフラとしたクルーウが切実そうに言う。
リベラを先頭にクルーウは少し遅れながらついていった。
燃えている家をドンドンと進んでいき、クルーウ達は酒場ロマンについた。
酒場ロマンは半壊していた。燃えている所をみると簡単には入れそうにない。
「どうする……」
クルーウが呟いた。
「君は入れるだろ。場所、教えるから、行ってこいよ」
酒場に指を差し、ゾネは入る事を促した。
「かいか的にいけるだろ。」
そう付け足した。
「本当……?」
「私も入るよ」
嬉々としてリベラが酒場に入っていく。
「煙で死ね!」
「私はファート家だから。煙では死なないよ」
「便利だなぁ!ファート家!」
「カウンターの所にあると思うよ」
ズケズケとリベラは入っていく、転がっている机や椅子なんかを蹴飛ばしながら。
「なんか……懐かしい……」
クルーウの頭の中にはテオと出会った瞬間が流れてきた。
ズラーと棚に酒瓶が並んでいるカウンター。リベラはカウンターを飛び越えた。店側のカウンターの下には鉄で出来た黒い金庫がある。南京錠がついている。
軽々と持ち上げリベラは適当に酒を選び、コルクを噛んで抜いてみせた。プッとコルクをそこらへんに飛ばした。そして、楽しそうに店を出た。
酒を飲んでいる、リベラが店から出てくる。黒い金庫を放り投げた。
「どうやって、開けるの?」
リベラの後から出てきたクルーウが言った。
「お!見てろよ!」
そう言ってリベラは黒い金庫を殴った。大きい音が鳴った。
南京錠が壊れ、黒い金庫に穴が空いた。穴の中から宝石やら金貨が見える。
「すげぇ……」
「どうだ!これがファート家だ!」
「すげぇ……」
「……バベルの塔め」
嫌悪感を込めた声が聞こえた、振り返るとゾネだった。
「なんか言ったか、ゾネ」
怒った様子はない、リベラはニヤニヤとしていた。
「その力を得るためにどれくらいの尊厳が破壊されたと思ってるんだ」
「そんな事気にするか、これは受け継いだ力。使わなきゃ持ってない」
「残酷の世代め」
その光景をクルーウはちんぷんかんぷんに見ていた。
「まぁ!いいか!」
空気を変えるようにリベラが言った。
「ほら、この宝石達、ゾネの影の中に入れていいから」
金庫を持ち、ゾネに渡した。
「さぁ!ノリドに行こう!」
「なぜ?」
疑問があった、クルーウが言う。
「キラ兄ぃに会いたいんだろ」
「あ!そうだ!君がアンに会わせるせって言ったんだから!初めて人を殺したんだぞ!」
「まぁ、ノリドが着いたら教えてやるよ」
リベラは歩き始めた。青い夜がもうすぐ終わる。
ノリドに着くまでの道のりでゾネがクルーウに話しかけてきた。
「いいか。クルーウ。ファート家っていうのはだな、戦争の時にできた、人工的に人間を改良したクソどもの事だ」
「そんな事、知ってるって君って案外、物知りなんだね」
話を聞いていたリベラは振り返って笑った。
「ふん!戦争の時はどの国にも属さず、人を殺しまくったんだ。まぁ、一説にはムーンが作ったって言われてる」
「そんな国、聞いた事ないけど」
「まぁ、結構、昔に滅んだからな。若いから知らないんだろ」
「はぁ!ゾネの方が若そうに見えるぞ!十五歳ぐらいに!」
「私は三十だ」
「「えー!」」
クルーウとリベラは顔を合わせて驚いた。
「はぁー。逆に君達は何歳だ」
「十七」
「十九」
「えー。俺、こん中で一番、年下なのかよ」
「まぁ。そんな事はどうでも良い、話を戻すぞ」
「人を殺しまくった、ファート家は自分達を神のように振る舞い始めたんだ。そんなこんなで、嫌われまくったファート家は狩られるようになった。それから、人々はファート家というものを歴史から消そうとしたんだ。文献に残すのも喋る事を禁止にした国だってある。それがファート家」
「へぇー」
パチパチとクルーウは拍手した。
「まぁ、私も父から聞いた話なんだけどね」
「あ!あれは残酷の世代っていうのは、何?」
「あーあれは君達ぐらいの歳の連中を差す言葉だよ。この世代は自分のためなら、人を殺せる連中が多いからそういう名称が出来た」
「俺、別に残酷って感じじゃなくない」
「クルーウ、君はテオとフィクスをアンっていう人間のために殺したんだろ」
「まぁーそうだね。他にもそういう世代があるの?」
「原初の世代、そして、希望の世代。まぁ。原初の世代は後ずけ何だけどね」
「なんで?原初は後ずけなの?」
「これは、魔王が現れた時に因んで呼ばれるようになった。だから、原初の世代は後から作られた」
「へぇー」
「ご清聴どうも」
ノリドに着いたのは朝方だった。
「やっとー、着いたー」
クルーウは感嘆を漏らした。
「とりあえず、なんか食べよう。まじで死ぬ寸前」
クルーウ達はゾネと出会った酒場に入った。そして、隅の席に座った。ゾネは影の中に入った。
「はぁー、馬とか欲しいな」
机に突っ伏したクルーウが喘いだ。
「まずは!アンだ!」
顔を全力であげリベラに向かって言った。
「はいはい。話すよ」
その口元は笑っていた。
「キラ兄ぃと私は一緒に旅をしていたんだ」
「私はあいつと旅をするのが嫌だったんだ」
「そうなの?」
「そう、私はあいつといて自由を感じれなかった、だから嫌になって抜け出したんだ。そしてね、次の目的地はクルーウだったんだ」
「俺ぇー?」
「正確には君の父親、ホープって言うんだっけ?ホープから物を受け取るために。まぁー、そんな事、私には関係ないし、だから別れの選別として君を殺そうと思ってたんだよ」
「はぁ!お前って!やっぱクズじゃん!」
「あいつは君の話をよくしたから、好いてる事はわかったんだよ」
「それで殺そうと!」
「正解。まぁ、好奇心的な奴だよ」
「イカれめ……」
「大丈夫。今は君を殺すはないよ。ゾネとフィクス、テオに頑張って勝った、案外、今は君に惹かれてるよ」
「あっそ、死ね」
「ハハハ。まぁー、だから、あいつはここを通ると思うよ」
「へいへい。じゃあ、アンが来るまで待機って事」
「そいう事、まぁ後明日ぐらいにはつくじゃない」
その後、クルーウ達は運ばれてきた飯を食べた。ゾネは影の中で食べた。
「ちょっと、トイレ」
「へーい」
クルーウは席を立ち、酒場から出ていく。
風が冷たい。そうクルーウは感じた。ハッと思い、クルーウは右目を燃やした。
「あったけー、かいか最高。いやー、目を燃やすのってなんか、カッケー」
ふんふん、と鼻を鳴らしながら、歩いていく。
酒場の隣に馬車があった。二匹の馬、茶色と黒色の馬が木で出来た小さな小屋みたいのに繋がれていた。
(馬、いいなー)
「それって、かいかなの?」
優しい声が聞こえた。クルーウはビクっとした。声の方向を見ると、金髪で緑の目の女性がいた。その、女性はクルーウを見下していた。クルーウよりも身長が高く、百八十センチはあった。
緑の目がクルーウを射止めていた。
「それって、義足なの?」
また、優しい声で聞いてきた。
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