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骸花ノ勇者  作者: 花嵐世湮
青い夜編
18/23

星の最後は綺麗 四

 テオはここまで話をし、ユックリと立ち上がった。

「私はそこから、シリウスで育った。あれから遠くに移動することが怖くなった。でも、シリウスは私を認めてくれた!私の家族だったんだ!お前は!そんな人達を殺したんだぞ!」

 テオの叫びには憤怒や悲哀が存分に込められていた。青い夜のような眼から涙が流れていた。

「メオの分まで、私は苦しまないと思った!けど!クルーウは自由だって言ってくれた!贖罪なんて果たさなくても良いって!自由だって!」

 テオがズカズカとゾネに近づく。鉈を持ち。ドンドンと早口になっていく。

「この思いが分かるか!ドブネズミ!シリウスは家族だったんだぞ!お前らが殺した、サテライトも!馬鹿だが良い子だったんたぞ!私の左眼を見た時、サテライトは可哀想だと思って、自分の顔を縫ったんだぞ!優しい子だったんだ!お前は!ドブネズミと同じだ!ファート家というペストを持ってきたんだぞ!」

 テオはゾネを見下ろす形になった。鉈を両手で頭から振り下ろせる体制になる。

「五月蝿いな。人殺し共が一丁前に家族を語るんじゃんねえよ。私の薬指、切断したくせによ」

「お前がアッシュとかいう、偽名を使うからだろ!」

 ゾネの体が沈む。テオの影に入っている。

「させるかよッ!」

 ブンッ。とゾネの手を掴み燃えてる家の方に向かってぶん投げた。テオはすぐにゾネを投げ込んだ家に石を投げ移動した。

「逃げられないぞ!ゾネ!」

 燃え盛る家の中。肌にひしひしと熱を感じる。ゾネの周りは火で囲まれていた。

 ゾネに向かって歩み始める。鉈を掌で華麗に回している。

「最初からお前が入団したことは嫌だったんだ。……シリウスは仲間を大事にする盗賊団だったのに、お前みたいな血や仁義が分からん奴が入るのは嫌だったんだ。」

 ゾネの上に立ち、鉈を振りかぶる。

「これで、終わりだ。私はクルーウと共に生きるよ」

 ゾネの右の掌に黒い球体が見えた。

(……爆弾?)

 テオの頭は急速に回転し、鉈を後ろに捨てた。

(ブルースター!)

 パッ!とゾネは消え、入り口近くに現れた。

 右から閃光が走った。音が消えた。何も聞こえない。

 体の右側が急激に熱くなっていく。熱がドンドンと痛みに変わっていくを感じる。

「……あ、あああ」

 声が震える。

「アアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 右側が抉れていた。ゾネの右側が抉れていた。右半身の肩から下の部分は無くなっており、そこから、火傷がテオの体を侵食していた。

 右肩らへんを左手で塞いでいたが傷が広がりすぎてダラダラと血がずっと流れているだけである。涙が出てくる。

「……お、オエぇー」

 理解できないというテオは眼は泳ぎ、呼吸が荒くなっていた。

 静かにゾネは立ち上がった。

「君らはどうせ、私を火の近くにやると思っていたよ。だから、爆弾さ。本当に運が良かった。リベラがいて良かったと初めて思ったよ。君はいつだって正確性を求めるから、私を近付いて殺すことがわかっていたし、爆弾なんて私普段使わないから、頭になかっただろ」

 言葉を溢しながらゾネはテクテクとテオに近づく。

「はぁーはぁー……」

 今度はゾネがテオを見下ろす。

「死ぬのは……怖いか……?」

「アアアアッ!!」

 絶叫が響く。テオはそこら辺に転がっていた木材を思いっきり外に投げた。

 外に出たテオは急いでそこら辺の石を複数手に取り、空に投げ、移動した。

 夜風が傷に染みる。

(フィクスの所に!)

 流星の如く、テオはもと来た道を戻った。

 ゾネは静かにそれを見上げる。追いかけもせず、ただ見上げた。

 木の燃える音だけがゾネの耳に染みる。


 森。クルーウ。

「アアアアッ!!」

 自分の飛ばされた左手をクルーウは見ていた。フィクスを睨む。

「ロベリア!ロベリアがある!」

 半狂乱になったクルーウは叫んだ。左腕から血がダラダラと流れる

(落ち着け。大丈夫だ。大丈夫じゃない!左手を切られて人はどれくらい生きられる!殺さないと!すぐに!)

 全身から冷や汗が滲み出る。

「やはり、弱いな。ホープから鍛えてもらったようだが、実践経験が少ないな。ホープの優しさからか」

 優しい眼をしながらクルーウを見る。

「ホープの息子よ。人を殺したことがないだろ」

「はぁッ!」

「人を殺してはいけない。人を殺せない人間こそが一番正常だってことも分かっている。だが、君がこの残酷な世界に足を踏み入れたいのなら話は別だ。殺さなくてはならない」

「この場で説教か!?」

「違う。これはとても大事なことだ。例えどんな人間だろうと。そう自分を好いてくれる人間であっても。一度でも牙を剥いたのならば殺すしかない。それが、このロマン多き、残酷な世界に踏み入る唯一の鍵なのだ」

 そう言いながらナイフを手に取る。月に照らされたナイフが恐ろしく光る。

 飛んできたナイフがクルーウの頬を抉った。血がダラダラ流れる。全身から疲弊を感じ、眼の焦点が合わない。足は震え今にも倒れそうだ。

(アン……シーヌ……スーデ……)

 痛みか、恥からなのかクルーウの眼から涙が出てくる。頭の中に今まで思い出が流れていくのを感じた。

 アンと川で遊んだ思い出。シーヌの初めて出会った時。そして、ゴブリンに喰われるテオの姿が頭の中に流れてきた。

(テオに自分は贖罪を感じないと言っていたが心の底では感じていたのかも知れない)

 倒れそうになった所を持ち直しクルーウはその場に全力で立つ。

(だが!俺は生きたい!自由だと心の底から思いたい!いつまでも死人縋るなんてのは嫌だ!アンに会うんだ!)

 涙が燃える。燃える涙はクルーウの青い眼を照らした。

「俺は自由だ」

「なら証明してみろよ」

 冷たい声でフィクスが言う。

 クルーウはハイドランジアを構えた。そして、フィクスはナイフを構えた。お互いの眼が合う。

 ナイフが飛んできた。クルーウは頭を右に逸らし躱した。すでにクルーウの感覚は成長していた。

 ハイドランジアがフィクスの首元を捉える位置までクルーウは潜り込んだ。切り込む。フィクスはクルーウの右手を蹴り上げた。ハイドランジアが手元から離れた。

 クルーウはすぐさま殴りに移行した。手を燃やしフィクスの鳩尾を殴った。

「ウグゥ!」

 フィクスもクルーウの鳩尾を殴った。

「アガァ!」

 そこからは泥試合。クルーウもフィクスもどっちも後退せず殴りあった。クルーウは鼻を殴られ鼻血が止まらない。フィクスの顔面をクルーウは思いっきり殴った。ここまでの殴り合いで疲弊したフィクスに初めて隙が出来た。

(今だ!)

 左手の断面でフィクスの右半面を殴った。フィクスが少し倒れそうになった。

「はぁーはぁー。やっと血が付いたな」

 気付いたのか全力でフィクスは右半面についた血を払う。

「もう遅ぇ!」

 炎が付く。フィクスの右半面が燃えた。

「アアアアアアッ!サザンクロス!」

 フィクスは掌から石を投げた。右半面の表面上を石がスライドしていき火と皮を抉った。右半面には火傷が広がりところどころ皮がめくれていた。

 ナイフを掴みクルーウの方へと投げた。それはあらぬ方向へと飛んで行った。

「どうした。片目じゃ距離感が掴めないか」

 フィクスの右眼は見えなくなっていた。

 荒れていた呼吸を落ち着かせ。クルーウの眼を見る。

「ふふ。あの子の気持ちが少しわかったような気がするよ。ありがとう」

「負け惜しみか!死ねッ!」


「クルーウッー!」


 テオの声だ。クルーウは声の方を向いた。

 星空を背にテオが現れた。左腕から血をダラダラと流れ、火傷で顔の半分が潰れていた。

 状況を理解したテオはクルーウに向かい石を投げた。

 クルーウの首元に鉈が当たる刹那。テオの体が燃えた。内側から一瞬にして燃えた。鉈はクルーウに当たらず静止していた。

 テオの方にクルーウは振り向いた。そして、燃えるテオを見つめて。

「ありがとう。ハジメテになってくれて」

 そう言いながら青い夜を目一杯に浴びた。

「クルーウ。好きだったよ」

 流星が消える寸前のような声で言った。

「君の右眼、そうなっていたんだね。可愛いいね」

 クルーウはギュと抱きしめ、体を燃やした。心臓に耳を当て鼓動が聞こえなくなるとクルーウはユックリとテオを地面に置いた。

「もうこれで、お前はロマンだ」

 フィクスは立ち上がった。

「ホープへの恩返しはこれで終わりだ」

 フゥーと息を整えた。

「ここからは個人的な復讐だ」

 さっきまでとは違う憤怒に満ちた声。

「よくも俺の愛娘を殺したな。クルーウ」

 初めて呼ばれる名前。クルーウの心臓は激しく動いていた。恐怖からではなく興奮からである。

 お互いの体は限界だった。しかし、どちらも止まる気配はない。クルーウはハイドランジアを手に取った。

 森が燃える音だけが聞こえる。

 炎の共にクルーウが切り掛かった。フィクスは避けようとしたが少し腹に掠った。

 右目を失ったことにより距離感が掴めなくなっていた。

 フィクスの蹴りがクルーウの腹に当たる。

「アアアア!」

 怯まず、クルーウは蹴られながらフィクスの腹にハイドランジアを突き刺した。

 フィクスはニッコリと笑いながら。

「ようこそ……ロマン多き、残酷な世界へ……」

 優しい声で星を見ながらフィクスは倒れた。

 クルーウは星を見上げながら仰向きに倒れた。勝利を噛み締めた。まだ、体の熱は冷めない。

 夜風が傷に染みる。

 右を見ると影からゾネの顔が出た。


 森。リベラ。

 死体の山ができていた。どれも体の一部が失っている。

 リベラはまだ生きているプラネットを山の上に運ぶ。プラネットの両足は失っていた。

「ああ……マーズ……もう少しでいくからなぁ……」

 うわ言を言いながらプラネットは死体の頂上に置かれた。

 リベラはその上に座った。幸福、優越感そして、懐かしさで胸が一杯になっていた。

「自由だぁ……」


 

 開示可能情報

・テオ

 かいか「ブルースター」

 能力 最後に触ったところに移動する。


・フィクス・サン

 かいか「サザンクロス」

 能力 投げた物を高速で飛ばす。銃と同じぐらい。


・プラネット・アース

 かいか「アリウム・ギガンチウム」

 能力 触った物を捻らせる。触ったところから一直線に伝導していく。射程距離、十メートル。

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