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骸花ノ勇者  作者: 春嵐世湮
残酷の世代編
1/20

希望の終わり、残酷の初まり

処女作です。よろしくお願いします。

 カイカノユウシャ


 日が落ち初めた頃。駅のホームに一つの生首が落ちていた。黒髪を生やした。男子中学生の頭だったものが駅のホームに落ちていた。

「あれは、俺か……」

 男子中学生は、ゆっくりと進む時間の中、巻き込まれる自分の身体を見ていた。

 男子中学生の名は、神田最也(しんださいや)。高校受験を終え合格し友達と遊んでいたところ、誤って駅のホームに落ち。そのまま通過列車に巻き込まれて死んだ。哀れな男である。

 駅では、多くの人がいた。友達が死に泣き喚く人。吐き散らす人。スマホで撮影する人。多くの人を横目で見ながら、最也は死んでいった。

「あぁあ……全員、俺以上に苦しんで死ねばいいのに……」


 気づいた時には雨が降っていた。ザァーザァーと大きな音を立てて、そこは何処か小さな教会の開かれたドアの目の前であった。

 今まで寝ていたのか身体は怠く、瞼は重い。最也は自分の身体が小さいことに気づき、さらに誰かに抱きかかえらていたことにも気づいた。

 抱きかかえていた人は、優に百八十を超える黒いフードを被った男性であった。男性は、黒い髪を肩まで伸ばしており、そして目に掛かった髪から深海のような深い青色の目を覗かせていた。

 男性の前には、男性より少し背の低い禿げた牧師がいた。そして男性が冷たい口調で、

「この子を頼む」

 牧師に向かって、言い放った。

 牧師は、どこか寂しそうな、悟ったような目をしながら、最也を優しく抱きかかえた。

 最也は、最後に教会の奥にいる。白髪とピンクの髪をした二人の五、六歳の子供を横目で見ながら、深い眠りに入った。


 最也が気づいてから十二年の月日が経っていた。

 最也がいるところは、前の世界でいうところのヨーロッパの小さな農村であった。

 そこは、主に秋に小麦を育て春に大麦を育ておりさらに牛や羊などの家畜を育てている。

 家は、大半が木造である。

 

 あの時最也を抱えていた男性は、最也の父親であった。

 男性の名は、ホープ・テンスと言う。ホープは牧師に最也を渡してから一週間ぐらいで帰ってきた。

 帰って来た時は、白い右腕を持ってきた。腕はまるでミイラのように干涸びていた。

 ホープの顔は、どこか絶望が混じった顔をしていた。

 クルーウ・テンス。それがこちらの世界の最也の名前であった。

 クルーウの容姿は、暗い茶髪で髪は、目と耳に少し掛かるくらいで目は、深海のような深い青色の目をしていた。

 

 クルーウは、夕暮れ時に村の近くの川で釣りをしていた。周りには紅く染まった草木が生い茂っていた。

「おーい、クルーウ」

 遠くの方から甲高い声が聞こえてきた。

 ピンク色の長い髪をした。十代後半ぐらいの女性が小走りで近づいてきた。

「なんだぁ、シーヌ」

 シーヌ・ツイコ。クルーウと同じ村に住んでいる。十七歳の少女だ。

「ホープが呼んでんるよー」

「りょーかい」

 クルーウは、そう言いながら釣具を片付けた。並びながら歩き始めた。

「クルーウは、本当に旅に出るの」

 シーヌは、真剣な声で言った。

「ああ……」

 クルーウは、即答した。

「なんでぇ」

 シーヌは、クルーウの顔を見ながら言った。

「一番は、やっぱアンだなぁ」

「やっぱー、アンかぁ……理解出来ねぇー」

「なんでだよッ」

 今度は、クルーウがシーヌの顔を見た。

 ハァーとため息をしながら、半分呆れながら話始めた。

「だってさあー、アンが貴族に連れて行かれたのは、結構昔の話だし、なによりその貴族は家が火事になって死んだって話じゃん」

「いやッ、ぜってぇー生きてるッ」

「かぁー、理解出来ねぇー、この天才的な頭脳を持ってしても理解出来ねぇー」

「お前、そこまで頭いい訳でもないのに、その自信はどこからくるんだよ」

 クルーウは、半分呆れていた。

「なら、私も旅に連れってってよ……」

「なんでだよッ」

 クルーウは、呆れていた。

「えぇー、いいじゃんいいじゃん」

「えぇー、まあー、考えておくねぇー」

 クルーウは、完璧に呆れていた。


 

 村に戻ると、ホープが待っていた。

「近くの森で、魔物の目撃情報があった。それを始末しにいく、準備しろ」

 ホープは、淡々と言った。

 わかったと言って、家に戻り、片手で持てるくらいの斧を手に取った。そして、家の外にいる。白銀の狼を呼んだ。

「いくよ、スーデ」

 白銀の狼の名は、スーデ。


 この世界には、魔物と呼ばれている者たちがいる。

 大半は、森や洞窟などの人がいないところにいるが人の集落付近に現れ、人を襲う奴らもいるため始末される。


 クルーウとスーデは、馬車の開けた荷台に乗っており、近くの森へ向かっていた。

 馬は、ドンドンと深い闇の中を進む。森は、紅葉に染まりきっており、少し眩しい木漏れ日を浴びながら進んでいた。

 少したった後。小さめの洞窟が見えてきた。

 ホープは、馬から降り、クルーウに向かって言った。

「一人で、殺れ」

 クルーウは、何も言わずに淡々と火打ち石を使って火を焚き、持ってきた。松明に明かりを灯した。

 深い闇を進むたび、強烈な匂いがクルーウの鼻に入っていく。

 洞窟の奥には、小柄な緑の色の魔物たちが人だった物を、食べていた。

 人だった物は、大柄の男と平均的な女、そして小さな女の子だったものが、無惨に食べられていた。

「ゴブリンか、数は三か」

 そういうと人だった物に、松明を投げ付け、夢中になって食べていたゴブリンに燃え広がりそこから向かってきたゴブリンの首から上を斧で斬った。

「南無三ッ」

 頭が宙に回っている間に次の二体目のゴブリンに向かい頭を上から斬りつけた。三体目のゴブリンは、クルーウに飛びかかり、クルーウは、そのまま体を回し三体目のゴブリンの首から上を斬った。

 クルーウの身体は、真っ赤な血に染まり、ゆっくりと温かい光に向かって歩いていった。

 

 洞窟の前には、ホープとスーデが待っていた。

「中に死体が三体。ゴブリンが三体。殺してきた」

 クルーウは、淡々と説明し、ホープから。

「近くの川で血を洗ってこい、私は、その間に薪を拾ってくる。いくよスーデ」

 と言われ、ホープとスーデは、森の中に入って行った。

 クルーウは、近くの川に向かっていた。

 木に囲われている、川の近くで服を脱ぎ、クルーウは川の中に入り、返り血を洗い流した。

 クルーウは、川から出て、川のほとりで服を着ていた。

 

 ボロボロの人が倒れていた。暗い茶髪が目に掛かっており右目から緑色の目が覗いていた。

 

「あぁ……あ……」

 と呻き声をあげ、クルーウに近づいてきた。

「俺は、幸福だ……自由だ……俺は、違う……」

 とそう言って、クルーウに近づいてきた。

「君は、自由だ」

 ホープを呼ばないと、そう考え、戻ろうとし横を見た瞬間、人は、消えていた。

 幻覚ではない、そう感じ取り、何が起きたのか考えているうちに、遠くの方から声が聞こえてきた。

「村の方から煙が出ている」

 ホープの声が聞こえてきた。


 誰かが、村の教会の地下で首を吊った。希望が絶望に変わるのを感じ、神に祈り死んでいった。

 目の前には、白い右腕があった。

 

 ホープが村に着いた頃には、完全に日が落ちていた。

 村は、ところどころ壊れ、燃えていた。村の中央で巨大な白い物体が蠢ていた。

 肉塊ような感じであり、それが這いつくばっていた。村にいた人々は、逃げ回っており、白い物体にはところどころ真っ赤な血があり、牧師ような男の姿もあった。

「まじか」

 クルーウとスーデは、シーヌのところに向かって行った。ホープは、村に着いた瞬間どこかに消えていた。

 クルーウは壊れかけた家と家の間を慎重に大胆に動いていた。

「シーヌ」

 シーヌは、半壊した家の後ろの方で小さく丸まっていた。

「ヤベヤベヤベ……」

 シーヌは、小さく呟いていた。

「おい、行くぞ」

 クルーウは、手を引っ張り移動していた。目の前に、白い物体が伸びてきた。

「ヤベヤベヤベ……」

 クルーウは、大きく叫んでいた。

 

 刹那の瞬間に、黒い衣装を纏い白い仮面を被った、人間が現れ、白い大剣で白い物体を切断した。

 肌は、いっさい見えない格好をしている人間は、静かにこちらを見てきた。

「クルーウ」

 声でホープだということがわかった。


 心臓の鼓動が、早くなっていくの感じていた。自分の心臓の位置がわかるくらい早くなっていた。

 クルーウは、見惚れていた、あの白い物体に見惚れていた。

 クルーウは、静かに笑みをこぼしていた。


(頭イカれてるのかなぁ)

 シーヌは、クルーウの右の顔を見て思った。

「村の状況を見てくるからあー」

 シーヌとスーデは、そう言って村の方にいった。


 クルーウとホープの間に少しの静寂が流れた。

 ホープがクルーウの顔を見ると、ホープの顔が、どんどん青ざめていった。

「ハァハァ……」

 どんどんと呼吸が荒くなっていく、ホープは、

「お前は、自由か…」

 ホープは、感情を感じない声で言った。

「お前は、死ぬか」

 ホープは、感情を感じない声で言った。


 クルーウは、気絶させられた。


 気づいた時には、日がてっぺんまで登っていた。周りは森だった、村からニ日ぐらいかかるところにいた。

 やべぇ、獣の森だぁ、シンプルでバカな野郎が三秒で考えつきそうな名前だが、こういうところに一人で行くやつは、たいてい死ぬんだぁ、バカだよなぁと。シーヌと話していたところだ、やべよぉと考えていた。

 目の前には、石が、置かれた手紙があった。

 手紙には、自由か。と書かれていた。

 クルーウは、持っているのを急いで確認した。

「斧と火打石と……それしかないッ、ヤベヤベヤベッ」

 クルーウは、まじで焦っていた。

「道もわからんし、食料をないし、魔物もいるし、どおーうしようッ」

 クルーウは、ガチでまじで焦っていた。

「冷静になれ、冷静になれ、冷静になれ、……ヤベヤベヤベ、どおーうしようッ」

 クルーウは、本気でガチでまじで焦っていた。


「冷静になったぜッ」

 クルーウは、冷静になっていった。周りは、完全に闇に覆われていた。

「まず道は、分からんが、食料は、手に入ったッ」

 周りには、干されたゴブリンの死体があった。

「まず川を見つけ出し、水をゲットッ」

 周りには、川が流れていた。

「そして狩ってきた、ゴブリンの血抜きをし、そして焼くッ!クソゴミほど不味くて硬いがこれで食料ゲットッお!」

 クルーウは、興奮していた。

「木の皮で鍋を作り、これを川でしっかり洗い。枝を三角にし支え合い、焚き火三脚を作り、そこから吊るし鍋に水を入れ、水を沸騰させる。生の水は危険だぜッ」

 クルーウは横になり、そして自分の力に酔いしれていた。

 (シーヌの野郎になったつもりは、ないが、天才かな)

 

 その頃、シーヌは、馬に乗って移動していた。

「ホープのゴミから、やっとクルーウの居場所を聞き出すことが成功したぜッ、しかしホープの野郎どうやってあんな、早く獣の森に行ったんだ」

 スーデは、影からシーヌを追ってきた。

 

 


 痛い

 

 


 クルーウは、右足に違和感を感じていた。

 

 


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

 

 


 クルーウの右足が喰われていた。二匹のゴブリンがクルーウの右足が食べていた。

 膝から肉と骨が見えていた。

 

「はぁ…はぁはぁ…あああああぁ」

 クルーウの呼吸は荒くなり、呻き声をあげていた。

 

 クルーウは、近くの斧を取った。

「こんな、足ッ!いらないッ!」

 そう言いクルーウは、膝から下の部分を切断した。

「いてぇッ!」

 クルーウは、ゴブリンの頭を叩き壊し、二匹目のゴブリン斬りぶっ殺した。

 右足を、焚き火に突っ込んだ。

「イッギャァ!」

 ちょっと遠くの方から、シーヌの声が聞こえた。

 

 

 

「さあーすが、天才的な頭脳を持つ私だぜッ、一般ピーポが来るのに、二日掛けてくるところをたった一日で着いたぜッ」

 シーヌは、暗い道を松明を持って、進んでいた。

 

 暗い道を少し進むと二つの光が見え、どんどんと二つの光が増えていた。

 それが、ゴブリン達の大群だと気づいた。

 シーヌは、持ってきた、剣を構えた。

 シーヌの額から汗が流れた。

 

「ワオーンッ」

 暗闇から、白銀の狼が現れた。

「スゥーーーーデッ」

 シーヌの甲高い声が、森中に響き渡った。


 クルーウは、森を這いつくばりながら、シーヌの声が聞こえてきたほうに進んでいた。

 クルーウは、泥まみれになりながら、這いつくばっていった。

 嗚咽を吐きながら進んでいた。


 血と臓物が付いた、ゴブリン達が何かに集まっていた。

 

 そこには、シーヌだった物が、あった。四肢が、完全に離れており、ゴブリン達が、食べていた。

 スーデは、頭だけそこにあり、ゴブリン達が被って遊んでいた。

 

 体が熱くなり、頬に液体が流れているのを感じていた。

 嗚咽を吐きながら、右足から痛みが流れているのを感じながら、斧を振りかぶった。


 

 一瞬の叫び共に、静寂がクルーウを包み込んだ。

 周りには、ゴブリンが、血と臓物を流しながら、倒れていた。

 静かにシーヌだったものに近づいていった。スーデは、形が分からないほどバラバラになっていた。

 シーヌは、静かに目を閉じており、四肢が、あった場所から、静かに血が流れていた。

 

 クルーウは、シーヌを抱き寄せ片足でふらふらと立ち上がり、それを持って闇夜の道を進んでいった。


 七日の時が、たった。

 酒場で、ホープと数人の中年の男達が酒を飲んでいた。

「そろそろ、クルーウが帰ってくころじゃない」

 一人の男が、ホープに話かけた。

「あぁ、そうか。あいつは、一度も死んでいないから、死なせておかないと、思ったんだ」

 黒髪をなびなかせホープは、淡々と言った。

「あいつが、死なずに戻ってきたらぁ」

 男の一人がホープに、高らかな声で質問した。

「あんな、劣悪な森に言って、数日生き延びるやつなんていないだろ」

 ホープは、相変わらず淡々と話していた。


「クルーウが帰ってきたぞぉーーーー」

 一人の少年の声が村に響きわったった。

 

 クルーウは、シーヌの頭を両手で大事に抱えて、少し涼しく気持ち良い風を全身に浴びながら、美しき黄金に染まった草原をゆっくりと歩いていた。

 

 クルーウの右足は、木で作った、簡素な義足をつけていた。

 青い目は、どこか遠くを見ていた。

 

 ホープは、静かに歩みを寄せた。

 

 ホープとクルーウの間に少しの静寂が流れた。

 

 



「シーヌは、美味かったか」

 

 クルーウは、ホープに斧を振った。

見てくださり、ありがとうございます。

誤字があったら、言っていただけると、ありがたいです。

毎週土曜日を目標にがんばりたいです。

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