告白の痛手
「君が好きだ!君のパンツが欲しい! 」
16歳高校1年の夏休み前日、三日月隼斗はクラスメイトのヒロイン、姫咲日奈子に告白した。俺にとって生まれて初めての告白だ。
俺をこんな気持ちにさせた姫咲はブルーに輝く目を見開き、細い両手を口に当て驚きの表情をしている。金髪のロングヘアを靡かせ正統派ヒロインらしい表現をする彼女は今日も可愛い。ちなみに胸は可愛らしさよりダイナマイトらしさをアピールしてる。
告白するという気持ちが焦り、口が勝手に『全て』を『パンツ』に変更した以外は一字一句間違えなく言えた。昨日何度も何度も抱き枕カバー相手に練習した成果が発揮された。これはパーフェクトと言っても過言ではない。
手応えありと自信満々の俺に対する彼女の返答は、
バシッ!バシッ!
無言の往復ビンタだった。
予想外の返答に戸惑う俺に彼女はトドメのビンタを放った。
「……三連発!? 」
「いいえ、2+1よ。」
学園の中庭で告白した俺は姫咲日奈子にOKを貰い周りのオーディエンスに祝福を貰う予定だったが彼らは何故か変態を見る目をこちらに向けている。だが、ポジティブな俺は一切気にしない。
「俺は本気だ! 」
彼女に追加告白をした。
彼女は俺の言葉に赤面し……手を振り上げたが、その手を振り下げる事はせず踵を返した。
「三日月君、大変申し訳ないのですが今後私と関わらないでください。 」
後ろ向きにこちらを見る彼女の目は睨んでいるようにも見えるが俺はポジティブ。心は強い。
「断る!俺は諦めない! 」
彼女は応じず、その場を去った。
「なかなか最悪の告白だったぜ。」
ケラケラ笑いながら甲高い声が聞こえてきた。声の主、最上吾妻は俺の悪友だ。小中高と一緒だったので互いの事は理解している。俺がポジティブなのに対し、こいつはネガティブだ。対極なのだが何故かそれが相性良い。
「どこがだよ?確かに間違えてパンツって言ったが全体的にみてくれ。八十点オーバーで合格ラインは確実に超えている。」
「いや、告白でパンツって単語を使うヤツが成就するわけないだろ。俺なら三年石の上で寝込む。ビンタされたら、もう三年で合わせて六年寝込む。それでビンタ痛かった? 」
「いや、ビンタぐらいじゃ俺はノーダメージだ。身も心もな。」
そう答えながら俺は衝撃の事実に気づく。
「そうだよ。俺はビンタされただけで振られたわけじゃないじゃん。振るならごめんなさいって言葉で言うよな?」
ポジティブゲージがガンガン溜まっていく。
「ビンタで答え出てるんじゃね?そんなに姫咲が良いのか? 」
隣のネガティブさんが振られたのを認めろと訴えるが棄却する。
「諦めねぇよ。今の俺には彼女しか考えられない。この気持ちは誰にも止められない。止めさせない。」
「そっかぁ。まぁ頑張れよ。応援はしてるぜ、ポジティブくん。そういえば俺が勝手に応募したバイトも明日からだろ? そっちも応援してるぜ。割引券よろしく。」
そう。俺は吾妻が勝手に応募したバイト先で夏休み初めから働くことになっていた。もともとバイトはする予定だったし、時給も悪くないから断る理由もなかった。
――翌日。バイト先で俺は姫咲と対峙していた。