表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/294

さらばリオン(嘘

2月10日に『最弱冒険者が【完全ドロップ】で現代最強』のコミックス1巻が発売となります。

何卒、ご購入の程宜しくお願いいたします!!

「ししょおおお!!」

「ひぃぃぃ!」


 森の向こうからリオンが現われ、シトリーが続く。

 その後ろから、《危機感知》を刺激するものの正体が、すぐに姿を現わした。


 二人が引き連れて来たのは、4足歩行する巨大な魔物だった。


 大きな顎に堅そうな額。長い尾に、足のように動くヒレ。

 その体高は一般的な家屋の屋根ほどあるように見える。


「一体どこから拾ってきたんですか!?」

「海の中から沸いて出て来たんだよ」

「リ、リオンさんが挑発して魚を引き寄せようっていいましたの。それで引っかかったのがアレですのよ」


 魔物が着くまでに、二人が手早く説明を終えた。

 それほどまでに、二人と魔物との距離が離れていたのだ。


 どうやらあの魔物の足はあまり速くないようだ。

 海の中の生物なので当然といえば当然である。


 むしろ海の中の生物が、陸上でも素早かったら恐怖である。

 そんな海洋生物とは一切お知り合いになりたくない。


「またリオンさんは奇妙な魚を釣――って魚か?」


 魚というよりも、ドラゴンっぽい。


「これは、俺の勝利でいいよな!?」

「ですがあれは魚ではありませんわ!」

「ぷぷっ! 俺がアレを引き上げるまでに、1度も魚が釣れなかったシトリーさんがなんか言ってるぅ!」

「ぐぬぬ!」

「はぁ」


 アルトは額に手を当てる。

 角を突き合わせている場合ではない。


 さて、どうしよう?


「師匠! 今日はあれで飯にしようぜ!!」

「ダメです。棄ててきてください」

「なんでだよ! アレでとびきりの勇者メシ作ってくれよ!」


 結果、焼いただけでおいしい肉をもりもり食べて、ゲロゲロ嘔吐する。

 そんな未来しか見えない。


 ドラゴン系の肉、怖い。

 食べちゃダメ、絶対。


「ドラゴンを倒せば、素材だって手に入るぜ?」

「これ以上、なんの素材が必要なんですか? もう武具を十分作ったじゃないですか」

「う~」

「アルト。わたくしからもお願いしますわ。このドラゴンを倒せば、確実に実力が上がります」

「あ、もうドラゴンで確定なんだ、この魔物」

「違いますの?」

「いや……まあ、他の生き物で当てはまりそうにないですね。うん、ドラゴンでいいや、もう」


 アルトはため息を吐き出した。


「師匠の好きな熟練上げも出来るぜ! だからほら、料理にかかるぞ!!」

「じゃあモブ男さん1人でどうぞ」

「なんで一緒に戦ってくれないんだよ!? 師匠は勇者(おれ)の仲間だろ!!」


 ずいぶん引っかかる言い方だが、突っ込んでいる余裕はない。


「仲間というか、モブ男さんが勝手に僕に付いて来てるだけです」

「ちち、違うから。俺の行く先に師匠がいるんだって。……仲間だろ?」

「それはただの顔見知りの他人です」


「くっ、こうなれば奥の手だ。行くぞシトリー!」

「え? わたくしもですの!?」

「そうだよ! ほら、あいつにアンタの必殺ジャスティス砲を食らわしてやれ!」

「ジャスティス砲……なんですのそれは?」

「いいから、ほら先に攻撃しろ! 力が欲しいんだろ!?」

「わたくしは遊撃が得意ですのよ。あなたなら攻撃に耐えられるんですから、あなたが前に出るべきですわ!!」

「あんな顎に噛まれたら俺でもやばいって!!」


 大物を釣り上げた2人が、喧々ガナリ合って、ガクガク足を振るわせる。

 それを見ながら、アルトははぁ……と再びため息を吐き出した。


(この2人、ほんと緊張感がないなあ)


「し、師匠! なにぼさっとしてんだよ。殺されるぞ!」

「そそ、そうですわよ! あれは危険で危ない魔物ですわ!! 気を引き締めて討伐してくださいまし!!」


 何故アルトが戦うことが前提になっているのだろう?

 釣り上げた人がきっちりリリースしてもらいたい。


「モブ男さんが釣ったんですから、きちんと責任取りましょう」

「なんで!? 師匠は俺を見殺しにする気!?」

「いや……大丈夫だと思いますけど」

「だだ、大丈夫なわけないってば!! 助けろよ!」


 助けて欲しいのならもっと下手に出るべきである。

 泣きそうな顔をしながら命令口調で言われても、助けたい気持ちにはちっともなれない。


 かわいそうだとは思うけど。(主に頭が)


 ただ、アルトは彼を見放したわけではない。

 理由はわからないが、ドラゴンを前にしても、何故か大丈夫だろうと感じていた。


 相手から感じる気配は強烈で、顎に挟まれたらそれこそ、即死の可能性もありそうな見た目であるにも拘わらず、だ。


「ほら、貧乳が前に出ろよ!」

「貧乳じゃありませんわ! ここは脳まで筋肉が詰まっているリオンさんが行くべきですわ!」

「俺の脳は筋肉じゃねぇよ! ってか、アンタが先に行けよ! どうせ骨と皮ばっかで食べられるところがないから、突っ込んでも大丈夫だろ!」

「骨と皮だけじゃありません! そういうリオンさんこそ頭が筋肉ばかりで――」


「あの、お二人さん?」

「――なによ!?」

「――なんですの!?」


 止めに入ったアルトを呪い殺すくらい鋭く睨み付ける二人。

 恐ろしくて次の言葉が出ない。


 けれど、言わなくちゃ。

 勇気を出して、言わなきゃいけない!


「ドラゴン、もう目の前ですよ」

「……」

「……」


 リオンとシトリーの表情がガチン、と固まる。

 プルプルと震えながら首を動かす。

 すると二人の瞳に、口を大きく広げたドラゴンが映り込んだ。


「「ぎゃぁぁぁぁ!!」」


 二人はさすがに一般人ではない。

 叫びはしたものの、叫ぶとほぼ同時に戦闘行動に移っていた。

 リオンは盾を構えて腰を下ろし、シトリーは細剣を抜いてバックステップする。


 結果。


「ギュベロボブカババッ!!」


 リオンが食べられた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ