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海岸清掃

 砂浜に太陽が照り付けている。中畑は、今日は海岸の清掃活動には日が悪かったかなと思った。


「柏木さん、暑くないですか? 疲れたり具合が悪くなったら休んで下さいよ。俺がサボりにくくなるから」

 海岸と言っても岩や草もあり、素足を出していると意外と危ないと分かった。長いジャージに運動靴と靴下という、海岸にしては着込んだ服装。

 しかも、いざ清掃に来てみるとなかなか区切りが付かず、中畑は柏木が心配になっていた。


「私は、まだ大丈夫ですけど……」

 柏木は、大きな麦わら帽子をかぶり直しながらそう答えた。キビキビとゴミを拾い続けているのに元気一杯で、肌の白さと背の低さ(と、若干小さい胸のサイズ)を(のぞ)けば、まさに心身ともに健康的に成長してきた女子高校生という姿形。


 それにひきかえ、中畑はずいぶん前から息が荒くなっている上に、腰が痛いだの目に汗が入っただの、泣き言ばかり言っている。


 柏木の方も中畑の体力を心配していたところだった。

「でもちょっと、お腹がすきましたね。休憩しましょうか」


「海の家の賄いサービスってやつ、もらいにいく?」


「ボランティアしたら無料って太っ腹ですよね」


「まあ、無料だからあんまり期待しないでおくけど。あ、柏木さん海の家の人に話するのお願いします。僕もうダメです」


「また私が会長にされちゃうじゃないですか」

 そう言い柏木がふざけて足でペチンと中畑を蹴ると、中畑が力なくヨタヨタと数歩よろけた。柏木は思わず

「中畑さん、歩き方がおじいちゃんみたいですよ」

 と笑った。




「混んでないタイミングなら好きなメニューを選べるなんて、すごいサービスだね」

 中畑は大粒のたこ焼きをつつきながら感心していた。


「なんだかラッキーでしたね」

 柏木はそう言いながら焼きそばを口に運び、

「――うわ、これスパイシーで美味しいです」


「たこ焼きもちゃんとしてるよ」


 二人は予想以上の美味しさに喜んだ。


「こういうの、嬉しいよね。食べ終わったらもう少しゴミ拾いしようか?」


「そうですね、頑張りたくなっちゃいますね」

 柏木も、中畑の言うことに同感だった。


「でもそうなると、スケジュール的に、今日は泳げないかもしれないね」


「仕方ないですよ」

 柏木は僅かに微笑みながらそう言った。


 残念がっているのか、わりとどうでも良いのか、中畑には判断出来なかったが、自分の無計画さのせいだと感じた中畑は心苦しくなった。


「……ところで俺、今度ホームセンターに生徒会で使う物を買いに行かないといけないんだけどさ、一人で行くのすごく嫌なんだよね」


「それは大変ですね会長」

 こういう時だけ会長扱いだ。


「ホームセンターの隣に楽しそうな大きなプールがあって、ラーメン屋がそこの割引クーポンをくれるから、俺なんとなく二枚持ってるんだけどさ」


「はい」


「副会長としてホームセンターにいっしょに来てくれませんか? 今ならたこ焼き一個付き!」


 会長が少しおどけて、たこ焼きの皿を大袈裟な動きで差し出すと、副会長はたこ焼きにつまようじを刺して頬張った。

「こっちも美味しいですね。……まあ『副会長としてホームセンターに』なら良いですよ」


「やった。俺、実は方向音痴だから助かったよ」

 中畑は緊張が溶けて、大きく息を吐いた。


「もう知ってます。さっき、私がいなかったら迷子になってましたよ」




 ――ちなみに後日、副会長はしっかり水着を持ってきていて、大いにプールを楽しんだ。

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