学食
「結構、男女いっしょに食べてるんだなあ」
食堂を眺めながら中畑が言った。
「そうですね。これなら私達もわりと普通に見えそうです」
テーブルの向かいに座っている柏木が、同じように見回した。
「学食のメニューって色んな物食べてる? 俺わりと偏食なんでよく分からないんだよね」
中畑のトレイに乗っているのはフライドポテトと唐揚げとコーンポタージュ。
「私も偏食なんで分からないです」
柏木のトレイには、ドーナツとコーンサラダとグレープフルーツジュース。
「改善の具体的な要望とかもっと書いてあればやりやすいんだけどな。俺は今のメニューで満足しちゃってるから」
「そうですね。私も満足です」
「女子のアンケートは値段満足度高かったよね。やっぱり男だと値段なのかなあ、俺もそのジュースとかは高く感じる。
安くて腹一杯になりたいのかな。ペットボトルや無料の水は飲んでる男子も多いのに、食堂のジュースやスープ飲んでる男子はかなり少ないし」
「男の人だと、ご飯もの二つ食べてる人もいますもんね」
「牛丼屋やトンカツ屋で見てると結構豚汁頼む男客が多いし、スープが嫌いってわけじゃないと思うんだけど、ここのコーンポタージュじゃ満腹感足りないのかな?」
ポタージュをゴクリと飲んで、中畑が聞いた。
「ああいうところの豚汁って具がわんさか入ってますもんね」
「――そうだ! このコーンポタージュにさ、パン販売コーナーの人がパンを作った時に余ったパンの耳や切れ端部分が自由に入れられるようにならないかな?」
「それ実現出来たら美味しいと思います! パンが付くようになったら私コーンポタージュもっと飲みます。女子も好きですよ絶対」
柏木は珍しく少し興奮して賛同し、中畑は気を良くした。
「考えながら食べれば結構、色んなことを思い浮かぶかもね。友達と来るとどうしても普通のこと喋っちゃうから、たまにこうやって二人でゆっくり食べながら、学食のことを考えるのは良いかもしれないな」
「そうですよね。また食べませんか?」
「でも大丈夫? 俺が学食についてあれこれ考えながら口数少なく食べるわけで、柏木さんすごくつまらなくない?」
中畑は、暇そうにしている柏木を想像して心配になった。
「私は楽しいですよ」
「そう?」
「中畑さんなのに生徒会長っぽいことしてると思うとなんだかおかしくて」
中畑はそう言われ、少し納得がいかなかった。