生徒会新聞
「私の記事は終わりましたけど、新聞の四コマまだですか?」
「ネタが思い浮かばないんだよー」
中畑が情けない声を出したので、柏木は思わず笑った。
柏木は中畑の席に椅子を寄せた。中畑がうなだれていると、柏木はなんだか放っておけない気持ちになるのだった。
「生徒会新聞に四コマ三本って、多過ぎるんじゃないですか?」
「ネットで検索したら男性向け四コマ一本女性向け四コマ一本でやってる学校が結構あったから、じゃあウチは三本やろう、これやってれば他のことをサボれるしと」
「かえって忙しくなってるじゃないですか」
「意外と難しいんだなあ」
「全然思い浮かばないんですか?」
「そうだ、柏木さんを四コマにしようかな」
ふと閃いて、中畑はにやっと笑った。
「なんでですか、止めて下さいよ」
「えーっと……。
最初のコマに、『会長は知らない人と喋るのが苦手だ』って俺の絵。
次のコマに、『特に外部の大人は大の苦手で』って書いて、俺が副会長にお願いしてる絵。
次のコマに、『ボランティア活動に行った時には副会長に喋ってもらっている』で、副会長が理知的に大人と話してる絵。
最後のコマに、『だからボランティア先の人達は副会長を会長だと思っている』で、副会長が会長さんって呼ばれる絵。
――ほらもう一つ出来たぞ」
「なんか恥ずかしいけど、四コマにはなってますね」
「よーしやっぱり副会長四コマにするぞ」
「ダメですよ」
「あ、傘を手に持っているのに傘を探した話を四コマにしよう」
「あれは絶対止めて下さい!」
「じゃあペットボトルのキャップ閉まってるのに飲もうとして誰も見てないと思って誤魔化そうとした話を」
「それもダメです!」
「副会長ポンコツ説を浸透させていこう」
「一つ目の四コマみたいに、会長ポンコツ説の方向でやってください」
「俺だとギャップがないからつまらないだろ」
「まだ投票した人達にはバレてないから大丈夫ですよ」
柏木にそう言われても中畑には一切怒る気配がなかった。中畑がこういうことを全く気にしないどころか嬉しそうに笑うことを、柏木は既に学習している。
年上は偉いだとか、生徒会長は偉いだとか、そういう上下の意識が全くない様子の中畑に、柏木は安心して話しかけるようになっていた。
「そんじゃ、俺が三コマ『副会長さん』『副会長さんは』『副会長さんって』って感じに副会長を呼んで、『一週間経ったのにまだ名前を覚えていないんですか?』って副会長に怒られるオチ」
「それ面白いじゃないですか、そういうので良いですよ。会長実話シリーズでいきましょう、生徒会の活動を告知する新聞なんで」
「えー、やっぱり副会長の水着回とかやっていかないと読者つかないよ」
「水着なんて完全に嘘じゃないですか!」
「そうか、四コマにするには先にまず水着を着てもらわないとダメなんだな」
真面目な顔で中畑が困った。
「着ませんからね!」
柏木は思わず宣言した。