貴重品保管庫
「全部出してみたんですか?」
中畑が生徒会室の机の上に大量の物品を並べているのを見て、柏木が聞いた。全て紛失物として預けられた物だ。
「うん。次の朝礼で言って取りに来なかったら、一部捨てるかと思って。落とし物リストが長すぎるよ」
「半年前とかの物は本人も忘れてるんじゃないですか?」
「でもさ、女子トイレの忘れ物? 口紅とかイヤリングとか化粧ポーチ。あとこれはもう先生に渡したけどコンドームとか。こんなの本人、分かると思うんだよね。先生には教えないって言ってるのになあ。これなんて四千円の物だよ?」
拾った日時、場所、気付いたことなどが書かれている落とし物リストを見ながら、中畑が言った。
「やっぱり恥ずかしいんじゃないですか?」
「それならまだ良いけど、店やクラスメイトからの盗品で言い出せないってこともあるだろうから、この辺は捨てにくいんだよなあ。捨てるんじゃなくて、先生の方の落とし物保管庫行きかな」
「そういうことも考えなきゃならないんですね」
「そうだね。バレンタインを成功させるためにも、物が盗まれにくい環境にして、盗難と紛失を減らす。盗品は誰が盗んでいるか知る。これが大事だからね。
先生に頼んで、何かを盗んで捕まった生徒にはバレンタインのことも聞いてもらってるんだけど、みんなバレンタインの時は自分が盗んだんじゃないって言ってるらしい」
「そういえば、バレンタインって何を盗まれたんですか?」
「俺も、盗まれた物が分かれば対策が出来るかもしれないからって聞いたんだけど、買ったばかりの高いスポーツシューズ。でかいから見付かると思って先生達も強気に持ち物検査をしたんだろうね」
「けど、見付からなかったんですよね」
「うん。大きい物でも盗まれる可能性はあるってことだね。してはいけない具体例を上げるなりして、貴重品管理への心構えを伝えていくしかないかな。一月から紛失物防止月間とかやっても良いと思ってる。柏木さんにまたかなり手伝ってもらうことになるけど、良いかなあ?」
「何を言ってるんですか! そういう真面目なことのお手伝いなら、いくらでもやるっていつも言ってますよね」
「ありがとう。
――しかし、真面目っていえば、男子の忘れ物は真面目だよな。鍵、ハンカチ、メガネケース、メガネ拭き、傘、ボールペン。ゲームとか時計とか高そうなものはほとんど取りに来るし」
「なんかすごく不真面目なやつがあるじゃないですか!」
そう言いながらしかめっ面で柏木が指差したのはDVD。女子校生実録リアルナンパ旅などと書かれてあり、肌色が多いパッケージだ。
「そういえばこれ、女子に『教室に変なものがある』って呼ばれて俺が取りに行って、そのままここに入れたんだけど。俺がもらっても良いのかな?」
「良いわけないでしょ! 持って帰ったら先生に言いますよ」
「仕方ない、先生に渡すか」
「中畑さんも、生徒会室で一人の時に変な小説を読んだり、隠したまま忘れて帰るのはやめた方が良いですよ」
「よ、読んでないよ」
「そういう時だけ慌てて隠すからすぐに分かるんですよ」
「普通の話だよ」
「そうですか」
「普通の話なんだって」
「分かりました、普通の話ですね。触らないで下さいね変態会長。まあ、生徒会長になっても、生徒会女子に触っただけでトリコにする能力なんて取得出来ませんけどね」
「違うんだよー」
「何も違わないです」
「俺の年齢でも読んで良いやつだし、生徒会活動の参考になるかと思ったんだよ」
「もう帰ります私」
「あ、いっしょに帰ろうよ。二分で片付けるから」
中畑はそう言い、慌ててテーブルの上を片し始めた。
「付きまとわないで下さい」
「俺、柏木さんと帰りながら生徒会の話をするのが好きなんだよ。今日も頑張ったなって気がして」
「……私もです」
「あれ、入らなくなっちゃった」
中畑の「二分で片付ける」というのは、物をでたらめに貴重品保管庫に突っ込んだだけといった具合で、蓋が閉まらなくなってしまった。
「ああ、無茶ですよ。なんですかこの入れ方。もう、私がやりますよ」
柏木は自然につい手を出してしまい、
「こっちの会長は私がいないと全然ダメですねえ」
と笑った。




