入学相談会
「えー、今見てもらったのが、私の隣に座っている生徒会会長の中畑さんが立候補した時の演説ですね。前回は先生側主体でやったオープンスクールだったんですが、学校の雰囲気を伝えるために体験学習で動画を流したら、大ウケだったそうです。
今回は私達生徒会主体なので、ほぼ自由にやらせてもらえたんですが、必ずこの動画だけは流してくれと言われました。
――ここまでで感想や質問などありますか?」
女子の一人が挙手をした。
「はい、なんでしょうか」
「ウチの中学は男子と女子の仲が悪くて、バレンタインチョコとか全然渡してる人がいないんですけど、この高校は男女の中はすごく良いのですか?」
「えー、私は中学が女子中学だったのでよく分からないんですが……どうなんでしょうか、会長?」
困った柏木は、中畑に聞いた。
「そうですね。僕はあんまり友達がいないので全体的に男女の仲がどうなっているのかはちょっと把握出来ていないんですけど、ビックリするくらいみんなチョコを持っていましたね。
実は隠れて仲良くしているのかもしれませんね。人によっては、異性の友達と二人でプールに行ったりしてるみたいですよ」
「それって、付き合ってなくてですか?」
「付き合ってなくてですね。真面目そうな人だから無理だろうなと思いながら男子が誘ったら結構あっさり来てくれて男子大喜び、って感じみたいです」
「それはすごく仲が良いと思います。ありがとうございました」
「質問ありがとうございました。他にありませんか?」
と、柏木が赤面しながら新たな質問を促すと、今度は別の女子が挙手をした。
「はい、どうぞ」
「演説とても面白かったです。本当にバレンタインやるんですか?」
「どうなんですか会長?」
柏木は、今度は困ってというよりはやや面白がって、中畑に話を振った。
「そうですねー、面倒で嫌なんですよね。本当にやるんですかね? こんなこと生徒会の仕事じゃないですよ絶対」
「中畑さんが言い出したんでしょ!」
中学生達が遠慮しながら笑ったが、中畑は全く気にせずに話を続けた。
「バレンタインをやるって言ったらそれまで喋ったことがなかったイケメンの人達が声を掛けてくるようになったんですよね。『俺もあの時、女の子がすごく可哀想だと思ってた。すごく共感したよ』とか、『部活の合間でも手伝えることあるかな』とか言ってくるんですよ。
こういう性格だからこの人達モテるんだなって思うと悔しいというか、なんでこいつらのただでさえ大量にもらえるチョコを、さらに増やさなくちゃいけないんだろうとーー」
「ちょっとちょっと、こいつらとか止めて下さい、嫉妬が出ちゃってますよ会長! 中学生の前ですよ」
「えっと、なんの話でしたっけ?」
「だから、バレンタイン本当にやるんですかっていう質問です」
「ああ。まあバレンタインが成功したら、多分学校のホームページに特色として載せるので、もし載ってなかったら闇に葬られてますね。そしたら大失敗したんだなと思って下さい。多分この高校で二度とやれないでしょうね」
この発言には、それまで笑うのを我慢していた控えめな子達も耐えられなかった。




