ワガママがすぎる幼馴染みに、絶縁を持ちかけてみた結果
最近流行りの『幼馴染みざまぁ』を読んで、幼馴染み系の小説を書きたいなと思い、書いてみました。
俺こと紅林光春(17歳)には、幼馴染みがいる。
名前は、灘山美湖。
この幼馴染み、ワガママがすごく、あれはやだこれもやだ、ああしてほしいこうしてほしいといつもいつも俺にばかり苦労をさせる。
昔はこんなにワガママではなく、むしろ、ああしなさいこうしなさいと鬱陶しいくらいに面倒見の良い子だった。
それが、いつからなのか、なにが原因なのかわからないが、ものすごいワガママな子になってしまった。
これまでは、仏の顔も三度までと自分に言い聞かせ、そのうち治るだろうと我慢していたのだが、さすがに三度どころか何十回もされれば、我慢の限界が来るというもの。
ただの幼馴染みなのに、「私以外の女の子と喋るのは嫌だ」とか「毎日私のためにお弁当を作ってくれないと嫌だ」と言われた時はさすがに堪忍袋の緒が切れそうになったが、なんとか抑えた。
そんな時、俺はラノベ小説投稿サイトで小説を読むのが趣味なのだが、そのサイトで最近『幼馴染みざまぁ』というカテゴリが流行っていることを知った。
幼馴染みを絶縁した後成り上がる。
それが、『幼馴染みざまぁ』というカテゴリらしい。
それ、今の俺にピッタリじゃないか!
成り上がるかどうかは置いておいて、絶縁を持ちかければ、美湖のワガママから解放されるはずだ。
よし、美湖に絶縁を持ちかけよう。
そう決意した俺は、美湖に絶縁を持ちかけることにした。
「なぁに、みっくん? 話って」
みっくんというのは、俺のあだ名だ。
「美湖、俺、お前と絶縁しようと思うんだ」
「……ふぇ? 絶縁? なんで?」
「あのな……この際だからハッキリと言わせてもらうけど、美湖のワガママには付き合ってられない。だから絶縁する。これからは赤の他人だから、気安く話し掛けてくるなよ?」
そう言って去ろうとすると、美湖が俺の右手首を掴んで引き止めた。
「ま、待って! まだ私、了解してないよ!」
「言っとくけど、これでも我慢してきた方だからな? 何十回もワガママに付き合わされて、それでも我慢に我慢を重ねてきたけど、もう限界なんだよ! 仏の顔もできないくらいに我慢が利かなくなってんの! わかる!?」
本音を怒鳴り散らす。
美湖に向かっては初めて怒鳴ったため、怒鳴られた美湖は明らかに狼狽している。
これで引いてくれたら助かるんだけど……。
「ご、ごめんなさい! みっくんがそういう風に思ってるなんて、知らなくて……。みっくんには伝わってるとばかり思ってたけど、私が勝手に思い込んでただけだったんだね。本当に、ごめんね?」
は? 思い込み? どういうことだ?
「この際だから、私も本音をぶつけるね。――みっくん、いえ、光春くん」
「は、はい?」
急にちゃんとした名前で呼ばれ、今度は俺が狼狽する。
美湖の表情が真剣そのもので、これからなにを言われるのかドキドキしてしまう。
その美湖は、少し深呼吸してから決心したように口を開いた。
「ずっと前から好きでした! 私と……け、結婚を前提に、付き合ってください!」
そう言いって全力で頭を下げる美湖。
そしてそれを、頭の中が真っ白になりながら、ただ見詰めることしかできない俺。
ただ、今の告白を聞いたことで、今までのワガママの意味が繋がった。
やけに〝他の女の子と喋るな〟とか〝昼は私とだけ食べて〟とかそういう系のワガママばかりだったのは、そういうことだったのか。
理解できた途端に、自然と長いため息が出る。
「……みっくん?」
「美湖、ごめん……」
「……!? そ、そうだよね! 絶縁、するんだもんね! うん、そうだよね……」
謝罪の意味を取り違えてることに気づいた俺は、慌てて訂正する。
「違う違う! そうじゃなくて……そうじゃなくて、美湖の気持ちに気づいてあげられなかったどころか、一方的に怒ったりして、本当にごめん」
「えっ……? あっ! う、ううん! 思い返してみれば、ちょっとワガママすぎたかなって思うから、気にしないで? そ、それで……どう、かな?」
「どうって……俺が美湖と付き合うこと?」
「……うん」
と、言われてもなぁ。
美湖って、他の男子からモテるぐらいに可愛いし、しかも品行方正,成績優秀でスポーツ万能と隙が無いくらいに……いや、家事全般と裁縫と美術的なところは壊滅的だった。
まぁ、それでも、モテることに代わりはない。
けど、なぜか、誰かが美湖に告白したと聞いたことがない。
……まさか、それほどまでに美湖の態度はわかりやすかったのか?
クラスの誰もがわかっている中、俺だけが勘違いしてイラついてたってこと……なのか?
「ちなみに……」
「うん?」
「ちなみに、いつからだったんだ?」
「えっと……入学したての頃にね、みっくんと別の教室だったから、どうしてるかなって思って見に行ったの。そしたらね、みっくんが知らない女の子と楽しそうに喋ってるのを見て、どうしてか胸がズキッってしたんだよ。その時にね、思ったの。そっか、私、みっくんのことが好きなんだって。だから、他の女の子にみっくんを取られたくなくて、それで、ワガママばっかり言っちゃって……」
「わ、わかったわかった! もうわかったから!」
話していくうちに涙ぐむ美湖を見て、慌てて話を止めに入る。
「絶縁はしない。一生傍にいるから……その、これからもよろしく。美湖」
俺の言葉に、数秒間唖然としていた美湖だったが、意味を理解した途端、パァッと表情を晴らした。
「付き合ってくれるの!? やったぁ! うん! よろしくね! みっくん!」
大喜びな美湖が俺に抱きついてくる。
本当にこれでよかったのか? と一瞬不安に思う俺だったが、それは杞憂に終わる。
その理由と今後の俺達がどうなるのか――
――それはまた、別の話。