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裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第3章:遺跡になんて行きたくなかったんだ。
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教会

第3章 遺跡になんて行きたくなかったんだ。

--教会--


あらすじ:村を歩いても何も無かった。

------------------------------



(なんかおかしいよな。)


ジルの言葉通り、教会には違和感があった。


何の変哲もない、どこにでもありそうな普通の教会。そんな風に感じる。だけど、普通に見えるからこそ違和感があった。


ドアが有ったんだ。


村にある()ちて屋根が無くなっている家は、当然のように風にドアが飛ばされて無くなっていた。100年以上の歳月が経って屋根が落ちているんだ。ドアが無くなっていても、おかしくは無い。


でも、教会には立派な観音開きのドアが残っていた。ここが廃村だって忘れるくらい綺麗な教会だと思う。


(結界が張られているのかな。ほら、重要な場所って別に張られてたりするじゃない。)


王宮や王宮の宝物庫、他には特殊なギルド、錬金ギルドとか薬剤師ギルドなんかにも結界が張られている。街の教会には無かったけど、ここに大事な宝物が置いてあるなら張られていてもおかしくは無い。


(ん~、いや結界だけじゃねぇよ。なんだろうな。)


(じゃあ、ここに勇者の剣があるんじゃない。だから結界が張ってあるとかさ。)


すっかり忘れていたけれど、ボク達は勇者の剣を探しに来ていたんだ。食べ物や寝床を探す事ばかりに気を取られていて、村の探索の時には頭から抜け落ちていた。


(オレ達も入れないような結界が張ってあるかもな。)


大事な宝物をしまっておくのに限られた人しか入れないようにするのは、おとぎ話で良く聞く話だ。盗賊が財宝を目の前にして痺れて動けなくなったとかね。


(それだと、ボク達も入れないかもね。)


恐る恐る近くにあった枝を持って教会の門に近づけてみる。盗賊の例のように痺れるかもしれない。けど、近づけた枝からは手応えも結界に入った時に感じる違和感も無かった。


(大丈夫か?相棒。)


(うん。問題は無さそうだ。)


枝をポイっと捨てると、草むらから小さな虫が飛び出して教会の扉に張り付いた。


(生き物が触れても大丈夫そうだな。)


小さな虫が体を張って教えてくれたように、ボクが触っても扉は何事も無かった。ドキドキしていた緊張が台無しだ。


(やっぱり、人が来る教会に危険な結界なんて張らないんだよ。)


考えてみれば当たり前かもしれない。護衛が守っている扉ならともかく、村の教会に人を傷つけるような結界を張ったら子供たちが間違えて触れてしまうかもしれないし、酔っ払いが突っ込んでしまうかもしれない。


魔王の森と廃墟になった村の雰囲気に呑まれてしまって、必要以上に怖がっているだけだ。


(鍵が開いていれば良いんだけどな。)


(そうだね。)


愛想なく答える。緊張していたのがバカみたいだったと思えていたんだ。無造作にドアの前まで行ってドアノブに手をかける。


「わっ!!!」


ジルが突然大声をあげたので、ボクはびっくりして跳び上がってしまった。


(ど、ど、ど、どうしたの?)


(いや、もうすこし警戒した方が良いと思ってな。)


(やめてよ。心臓が止まるかと思った。)


(悪い、悪い。けど、少なくともドアの前に立たないくらいの注意はしとけよ。)


ジルはドアノブに毒が仕込まれている場合や、ドアを開けた瞬間に毒矢が飛んでくるトラップを例に挙げてくれたけど、今しがた村の人たちが集まる教会に危険な結界を張らないと考えていたので、場違いに思える。宝物庫やダンジョンの中じゃ無いんだからね。


(人を傷つけるようなトラップは無いんじゃないかな。)


そんなものが村の中に有ったら怖いよね。


(注意するに越したことは無いさ。)


ドアを開けるだけなのにジルは慎重になりすぎだよ。と思いつつ、草むらに放った枝を拾いなおして、ドアノブに引っ掛けてドアを開けた。ドアが呆気なく開いた以外には変化はない。


(やっぱり、心配のしすぎだって。)


(いや、悪い、悪い。)


ジルは謝罪の言葉を並べるけど、あんまり反省しているようには見えない。まぁ、ボクの事を心配して言ってくれているんだ。怒る気も無いけど。


今度こそ安心して両開きの観音ドアを開ききると、中には1本の通りと左右には礼拝をするための椅子が並んでいた。だけど、まっすぐ進んで中央最奥に祀られているはずの肝心の神像が置いて無かった。


(教会…だよね?)


普通の教会に有るはずの神像が無い。ボク達は『ギフト』をもらう時に必ず神像の前でお祈りをする。だって神様に『ギフト』を貰うんだからね。お礼を言うのが当たり前じゃないか。『ギフト』をくれた神様を祀って『ギフト』で得た物を供えて感謝をするんだ。


(教会ッポイ何かだな。)


教会のような神々しさはあるものの不気味な感じもする。今朝、ジルが真夜中の人気のない教会のようだと例え話をしてくれたけど、あるべき所にあるべきものが無い。あるべき人達が居ない恐怖。それにボクの背筋はゾクゾクとする。


(チロルも居ないよね。)


ゾクゾクする背筋を何とかしようと話題を変えてみる。村には、たくさんのチロルが居たんだから、最後に残った教会に居るんだと思っていたんだけど、掃除をしたばかりのような埃の無い床にはチロルどころか泥の付いた足跡さえ見えない。


(ヘンな場所だよな。とっとと勇者の剣を探してズラかろうぜ。)


ゾクゾクする奇妙な雰囲気さえなければ、踊り場よりもずっと安心できる寝床になるのに。少し残念に思いながら神像が有るはずの場所に近づくことにした。


神像の代わりに勇者の剣が置いてあるかも知れないよね。


広くみんなが集まれる場所。シンッと静かな自分の足音だけが響く通路を進む。


ジルを杖のように床に突くと、コツンと言う音が何重にも重なって聞こえる。神官様が歩くときもそうだけど、教会ってなんでこんなに音が響くのだろう?お説教を聞きやすいようにしてくれているのかな。


ミシッ。


足元で木が(きし)むような音がした。


立ち止まって床を見る。石でできた床で、古い木の床を踏みしめた時のような音がするとは思えない。


「逃げろ!ヒョーリ!」


ジルが大声を出した時には、足元の石の床が崩れてボクは地下へと呑まれて行った。



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次回:2本の『勇者の剣』



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