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裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第3章:遺跡になんて行きたくなかったんだ。
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野営

第3章 遺跡になんて行きたくなかったんだ。

--野営--


あらすじ:大きな馬車が空を飛んだ。

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「これでどうでしょうか?」


ジルに教えて貰いながらエマンドを(さば)いて1口大きさに切ってウルセブ様に持って行った。毛皮を()ぐところからやったから、ものすごく時間がかかったんだ。


「何じゃ、やっとできたのか。あぁ、毛皮なんぞ使わないから適当で良かったものを。」


面倒くさそうにウルセブ様は肉だけ鍋に放り込むと、毛皮はポイと捨ててしまった。


「あの、毛皮は要らないんですか?」


苦労して肉から剥したんだから、使ってくれると嬉しいのだけど。まぁ、皮を剥がす時に失敗して、あちこち切ってしまっているから小さな物しか作れないだろうけど。


「肉の美味い所だけ取れば良かったんじゃ。どうせここで皮を(なめ)している暇なんて無いからの。食いきれない分は荷物になるだけじゃ。」


ウルセブ様は鍋をかき混ぜながら答える。言われてみれば当然だけど、誰かにおすそ分けする事も、保存食を作っておくこともできない魔王の森で新鮮なお肉を持って歩くのは邪魔にしかならない。


「魔獣の馬車に乗せておけば良いのではないですか?」


荷物になるなら馬車に乗せておけばいい。馬車の屋根の上には保存食だって乗っているんだから、少しくらい増えたって邪魔にはならないだろう。


「バカモン!いったい何匹分の肉を乗せるつもりだ?今日獲った分だけでも溢れてしまうわ。それに魔石を節約せねばならん。コイツを運ぶだけで魔石が1個無くなると思え!」


素朴な質問をしただけなのに怒られてしまった。今日1日だけでも何度も戦闘が有ったみたいだし、獲物はボクが捌いたエマンドだけじゃなかったのだろう。一番おいしそうなヤツだけを取っておいたのかな。


「ごめんなさい。」


とにかく謝るしか無いよね。


「ああ、そんな事より、馬車から皿でも取ってきてくれ。パンと酒も忘れるんじゃないぞ!!」


料理に集中したいからなのか、ウルセブ様はうるさそうにボクを追い払った。



せっかく狩ったのに、もったいないと思うのはボクだけなのだろうか。



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夕食は、質素な見た目には似合わないほど美味しかった。たくさんのお肉がゴロゴロ入ったスープには、ウルセブ様が趣味だと豪語するだけあって色々な香草が入っていていたんだ。それにお肉がびっくりするほど柔らかくてパンに乗せて食べても噛み切れるくらいだったんだよ。


でも、乾燥させた香草のビンだけでエマンド1匹より重たそうなのには納得できなかったけどね。ボクが魔石を取って来れるワケでも無いから何にも言えないけど。


「ほら、明日は日の出から出発するんだから、さっさと寝るぞ。」


夕食でお酒も飲んだから少し眠い。魔獣のウロウロする森の中でお酒を飲むなんて信じられなかったけど、ライダル様に勧められて断り切れなかったんだ。でも、魔王の森でお酒を飲むなんて不用心だよね。


アンクス様とモンドラ様は酔っぱらったのか早々に馬車に乗りこんで寝てしまったんだけど、ボク達は夕食の後始末をしていた。浄化の魔法で使った食器をキレイにしたり、出てしまったゴミや使わなかったエマンドを土に埋めたりね。


そして、食器を馬車の屋根に戻しているとライダル様が言ったんだ。


「ああ、ハンモックも下ろしてくれ。」


「どこにあるんですか?」


ハンモックは旅に出る時にライダル様が言っていた寝具だ。村や街それに砦でも部屋のベッドで寝る事ができたから結局今まで見る事は無かったのだけど、馬車には寝具になるような大きなものを積んでいるような気配はない。


「御者台の上の箱に入っているハズだ。滅多に使わんからな。」


言われた通りに探してみるけど、ベッドになりそうなものは見当たらない。というか、御者台の上の箱は長いけど、幅が腕の長さくらいしか無いんだ。こんな小さな箱に入るようなベッドってあるのだろうか。


「すみません。ハンモックって、どういった物なんですか?」


「ん、そこに丸まったオレンジ色の布が無いか?」


確かにぐるぐる巻きになった布が置いてあって、渋めのオレンジ色をしている。でも、雨の時に御者をしている人が羽織るマントか、荷物を雨から守る掛け布かと思っていた。マントをぐるぐる巻きにしたらこんな感じになるよね。


「これで寝るんですか?」


ただの布を敷いて寝るのならマントで包まって馬車の床で寝るのと変わらないんじゃないかな。それだったら、カナンナさんに貰ったマントと古いマントを使っても同じことができそうだ。


床で寝たら夜中に起きた人に踏まれそうだからイヤだけどね。


「ああ、コレをアンクスとモンドラのベッドの柱に引っ掛けるんだ。掛布はないからマントを使ってくれ。」


両端に棒の付いている、人が寝れるサイズの布の端に着けた輪を左右の2段ベッドの柱にそれぞれ固定すると、なるほど空中浮かぶベッドみたいな形になった。


試しに乗ってみると、布が体重を支え切れなくて凹んでしまうけど寝れなくもない。寝転がっても体は丸まってしまうし、ふわふわしていた布に包まれてしまって寝返りがうてそうにないけど。


「まぁ、野営の時はソレで我慢してくれ。それじゃ、ウルセブ!馬車を上げてくれ。」


ライダル様の合図にウルセブ様がうなずいて馬車のスイッチを押すと、馬車が空にするすると昇って行く。そうか、馬車は飛べるんだし空の上で寝れば魔獣を1晩中魔獣を警戒して見張っていなくても良いんだ。


これなら、みんなで寝てしまっても魔獣に襲われる事も無いね。


空に浮いているからか、風取りの小さな窓から心地よい風が入って来る。


でも、大きな馬車の中に5人の男が寝ているんだ。左からアンクス様のいびきが聞こえる。右にはモンドラ様が寝返りをうっているのが分かる。下の段ではライダル様とウルセブ様がまだ起きていて何かやっているし。ハンモックが揺れている。



ものすごく寝にくいんだけど!



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次回:『空中』の戦い。



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