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裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第3章:遺跡になんて行きたくなかったんだ。
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--『砦』--



あらすじ:モンドラ様に役立たず認定された。

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「あ、あれですか?今日の泊まる街は!!」


林の中の1本道。ライダル様のお腹の下あたりに、石でできた壁に囲まれた街が見えてボクは思わず声を上げた。ちなみにライダル様はいつものようにアラスカの頭の上に片足で立って、体ともう片方の足を地面と平行にしてバランスを取っている。ライダル様の体の向こうに壁が見えたんだ。


何の意味が有るのか分からないけど、ときおりクルクルと回っているので鍛錬のひとつなのだろう。それともヒマなのかな?アラスカの操作を代わってくれても良いんだけど。


「ああ、正確には街じゃねぇけどな。今日はあそこで泊まるぞ。」


ライダル様は姿勢を戻すとひょいとボクの隣に座って手綱を取り上げた。そのまま手綱を引くとアラスカの走るスピードが普通の馬車くらいまで落ちた。


「街じゃないんですか?」


いきなり手綱を取られたことにはびっくりしたけど、ちゃんと操作してくれているので安心してボクは尋ねた。


「ああ、あそこはタガグナル砦だ。その先には魔王の森が有って魔獣が森から出てこないように見張っているんだ。言わばここが最前線って所だ。」


いよいよ目的地に近づいているようだ。『勇者の剣』は魔王の森に飲み込まれた廃村にあるとボクの『失せ物問い』が囁いていたんだ。


王宮を出てから15日目。いつの間にか勇者様一行の雑用係になっていてアラスカの手綱もずっと握りっぱなしだったけど、ようやく単調な馬車の旅から解放される事になるんだ。


大きな街以来、モンドラ様の手伝いや馬車の手入れなんかも手伝うようになっていたんだ。なんでも意外な雑用ってあるもんだよね。酔いつぶれた人の介抱とか。


そしてタガグナルを越えて魔獣がウロウロしている森の中に行く事になる。ボクなんかが独りで行ったら命がいくつあっても足りないだろう魔王の森。


でも、ボクは勇者様一行と一緒なのだ。『賢者の居ない遺跡』に行って『勇者の剣』を手に入れるまでは守ってくれるだろう。できれば帰り道も守ってくれると良いんだけどな。


旅の途中の退屈しのぎにジルと話している時に、「『勇者の剣』を手に入れてからの方がヤバいかも知れない。」なんて脅かされていたんだ。目的を果たしたらボクなんて捨てられるってね。


ジルの考えすぎだと思うけど、森に置き去りにされたら誰にも分らなくなっちゃうからね。念のために注意するように言われているんだ。


「おい!アンクス!モンドラ!ウルセブ!起きろ!!タガグナルに着くぞ!!」


ライダル様は村に入る時よりも緊張した声色でアンクス様達に声をかける。馬車の中からウルセブ様の返事と、他の2人を起こしているだろう声が聞こえてきた。


村に入る時はしっかりと止まって身だしなみを整えるんだ。着いたら小さなパレードで手を振っているんだけど、今日は馬車を止めずにそのまま中に入るようだ。


タガグナル砦の周りには木の柵で囲まれた畑が作られていて色々な野菜を育てている。


「こんな所でも畑を作っているんですね。」


「ああ、野菜は持ってくる間に干からびてしまうからな。空いた時間に少しずつ作っているんだ。メシ以上の楽しみがねぇからな。訓練も楽しいのに他のヤツはなぜか嫌がるんだ。」


ライダル様は訓練をするのが好きだったみたいだ。15日もの間、アラスカの頭の上で訓練をしているライダル様を見ていたけど、ヒマだから遊んでいたんじゃなかったんだね。


畑で働いている人たちにライダル様が挨拶をしながら砦の中に入っていく。石を組んで作られた砦の太い丸太の扉が頼もしく見える。


砦の中には多くの兵士が訓練をしていてボク達は魔獣の馬車でその中に入っていく。兵士の人たちからはアンクス様が来たことに驚いている様子がうかがえる。


ここはいくつかある砦の中でも北の端っこの方にあるみたいで、勇者様が来る事は稀のようだった。


「ようこそおいでくださいました。」


「久しぶりだな。今回は『賢者の居ない遺跡』へ向かう事となった。」


広場で訓練を指揮していた人にライダル様が挨拶をする。この砦の責任者とかなのかな。


「遺跡へ?あそこには何も無いはずでは?」


「占いの結果、『勇者の剣』が有るという事が判ったんだ。」


「占い…ですか?」


「ああ、『ギフト』で占っているようだから、信頼できると思う。済まないが、森に行くために数日準備させてくれ。」


アンクス様なんて馬車の中でほとんど寝ていたみたいで、夜になるたびに宿屋から抜け出しているとジルが言っていた。さっきも馬車の中で寝ていたようで、ウルセブ様が怒鳴っていたから間違いないだろう。


挨拶を済ませるとライダル様は訓練に参加してしまった、モンドラ様はさっきの指揮をしていた人とどこかに行ってしまったし、アンクス様とウルセブ様は割り当てられた部屋に籠ってしまった。


物珍しそうに砦を見ていると一番高い見張り台に登らせてもらえることができたんだ。魔王の森が一望できるんだけど、北の方には終わりが見えないほど遠くまで森が続いているし、北東の奥の方は高い山が並んでいる。


『賢者の居ない遺跡』は北の山の縁に沿って作られていたそうだから、きっとあの森と山の境目くらいに有るのだろう。じっと目を凝らしてみると、薄い土色の山にレンガを積んだような遺跡が見える…気がする。


「あれが遺跡かな?」


(さぁな。ヒョーリの『失せ物問い』で方向を聞くことは聞くことはできないのか?)


ボクの独りごとにジルが答えてくれる。


(どうだろ?)


(この間は北東の方と言う答えが返ってきたのだろう?物は試しだ。『勇者の剣』はどこにある?)


ジルの問いに『失せ物問い』の妖精が囁く。



どうやら、まだ先は長そうだ。



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次回:砦を守れ!『破邪の千刃』!!



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