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裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第3章:遺跡になんて行きたくなかったんだ。
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街道

--街道--


あらすじ:手綱を任されたと思ったら戦士様が魔獣の頭の上に乗った。

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ぶおん。ぶおん。


戦士ライダル様が作られた魔獣アラスカの上で諸刃の斧を振り回している。魔獣の馬車は風のように走っているのに、落ちるどころか態勢を崩す事も無い。


すごいけど、手綱を持って馬車を操作しているボクにはすごく邪魔。


前が見えづらいのはもちろん、風に乗って汗が飛び散って来る。今まで誰も迷惑だと意見を言わなかったのかな。あれだけ態勢を崩さないで安定しているし、慣れているようなので今までも何度かアラスカの頭の上で鍛錬をしてるんだと思うんだけど。


(なぁ、ライダルなんかほっといて、とりあえず街道に戻ろうぜ。)


ぼんやりとライダル様を見ていたのだけど、ジルに助言されてやっと我に返った。気が付くと太陽もずいぶんと傾きかけている。王様のスピーチが有った式典から始まりパレードを経てから街を出たから、馬車に乗っている時間は短かったけど、しばらくすれば陽が落ちてしまう。


道がどこに行くのか判らないのだから、街道から外れるのはマズイ。ライダル様が居ても道に迷ったらボクの所為(せい)になるよね。


(夕陽の草原も走ってみたかったんだけどね。)


草を掻き分けて走る爽快感に少し名残を感じながらボクは魔獣の馬車を街道に向けた。今度はアラスカが暴走しないようにゆっくりと慎重に。


(街道からでも草原は見れるさ。それに何回か草ばっかりの場所を通る事になる。)


(ジルはここまで来たことがあるの?)


ジルは商人をしていた時にあちこち旅をしているようだったから、ここまで来ていてもおかしくは無い。


(ん、だいぶ昔だけどな。草原は街道から外れると足元に何が潜んでいるか判らないから、あまり街道を外れない方が良い。)


(今回はその心配はしなくて良いみたいだね。)


何かが草むらに潜んでいてもボク達は馬車の上だし、ライダル様の一振りで何が来ても一振りで両断してくれるだろう。


(他には、大型の動物なんかが群れで動いているのは見ものだぞ。ただ、街道を横切られてしまうとこっちが身動き取れなくなるけどな。)


(そんな事もあるんだ。よっと。)


魔獣の馬車が街道に戻った所で、もう一度優しくアラスカの手綱を引く。戻るまでに何度か試したけど、大型の割にアラスカは思った以上に敏感に動いてしまって、普通の馬と同じように扱うと曲がりすぎてしまう。


だけど、作られたアラスカが意志を持っているかのように、街道に戻ると馬車を道なりに引いてくれた。対向して人が来たり、馬車を追い抜いたりするときも自動で走ってくれると言うのだから、アラスカはよっぽど頭の良い魔獣なんだね。


人間が、魔法使い様が作ったとは思えない。


(アラスカみたいに自分の意志を持った魔獣ってたくさんいるの?)


(いや、滅多にいないぞ。作るのには沢山の複雑な魔法陣が必要な上に魔石をバカスカ食うからな。よほどの金持ちか、兵隊でもなきゃ使えやしないさ。商人の馬車じゃ割に合わねぇ。)


魔石は魔獣から獲る事ができるけど、ボクが行っていたような森の中だと普通の動物しか獲る事はできなかった。魔王軍が操っているとか作っているとか色々な噂があるけど、少なくとも魔王が居る北の方から魔獣が来ているのは確かだ。


つまり、北の魔王軍と戦っている場所で魔石が獲れるんだよね。色々な魔道具に使われたりするけど値段はそれなりに高い。ボクの持っている水と火と塩の魔道具も、親指くらいに小さいのに高かったんだ。


冒険者への憧れで買ってしまったけど、万が一の時の事を考えれば備えていても損は無いだろう。たくさんのお金を持って歩くよりは便利だし、いざとなれば売れば良い。



ジルとお喋りしながら、しばらく魔獣の馬車を走らせていると、再び畑が見えるようになってきた。ライダル様は疲れたのか、訓練に飽きたのかアラスカの頭の上でじっと動かなくなっている。


けど、アラスカの頭の上でじっとしているのも大変だと思う。だって街を出てから走りっぱなしのアラスカは休みなく走っていて息ひとつ乱していないけど、大きな魔獣だとは言え頭はあんまり広くないからね。


ライダル様も片足で立っている。


「そろそろ村が見えてくる。今日は村の集会所に泊まるぞ。」


ライダル様が片足を曲げて、ひょいと宙返りをすると、ボクの隣に腰かけていた。気が付いたら隣にいて話しかけてくるんだからびっくりした。


「集会所ですか?宿屋とかじゃなくて?」


「この村に宿屋がねぇんだから仕方ない。アンクルの人気を保つためにパレードはどうしても必要だから、中途半端な位置の村に着いてしまうんだ。」


勇者の称号の恩恵は、勇者様を称える人が増えると力を増す事にある。つまりパレードとかをして勇者様の人気を維持していかないと勇者様の力も弱まってしまう。そのために度々パレードをしなきゃならねぇから面倒なんだ。とライダル様はぼやいた。


パレードをしてから街を出るから行商人たちが泊まらないような宿屋の無い村に着くんだね。


王宮から出る時には、いきなりパレード用の馬車に乗せられた時にはびっくりしたけど、それが勇者様のためのものだと知ってやっと合点がいった。


「そろそろ、スピードを落としてくれ。村の中だと道が狭いから人を()ねかねん。」


「え、あ、はい。」


アラスカの手綱をゆっくりと引く。どれくらい引いたらスピードが落ちるか判らない。強く引いてアラスカが立ち止まったら馬車がひっくり返りそうだし、弱かったら村に突っ込んでいってしまうかもしれない。


「もう少し強めでも大丈夫だ。アラスカも分かっているから勝手に調整してくれるさ。」


恐る恐る手綱を引くボクにライダル様はアドバイスをくれるけど、馬車がひっくり返りそうになったことを思えば怖くなっていても仕方ないよね。馬車の中には怖いアンクル様とモンドラ様が乗っているんだから。


村の家屋にぶつかっても怒られそうだけど。


「これくらいですか?」


「そうそう、その調子だ。上手いじゃないか。あそこに見える大きな建物の横に着けてくれ。よう、村長久しぶり。また世話になるぜ。」


ライダル様が指さしたのは村でもひと(きわ)大きい2階建ての建物だった。ボクに話しかけてくれている間に、村の村長さんを見つけて声をかけてサビノリを放り投げた。


泊まるのが宿屋じゃ無いので夕飯は用意されないのかと思ったのだけど、いつも村長さんのご厚意で食べさせてもらっているらしい。あ、でも、対価はちゃんと払うみたいだよ。


勇者様ご一行以外にも、王宮から派遣されてきた役人や兵隊さん、それに神官さんなんかも泊まりに来るそうで、小さな村の集会所にも関わらずちゃんとした宿泊施設が付いていたんだ。


良かった。ハンモックがどんな物か知らないけど、今日は狭い馬車の中で寝なくて済みそうだ。



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『爆宴の彷徨者 ~作者に殺されそうなんだが、どうしたらいい?~』を無事(?)にバッドエンドで終える事ができました。


気分が悪くなっても構わないという奇特な方がいらっしゃったら、ご一読ください。


こちらの更新は、そのまま週2を予定しています。

というか、ストックが無いから次回予告すらできていない。

( ̄□ ̄;)

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