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裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第3章:遺跡になんて行きたくなかったんだ。
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草原

--草原--


あらすじ:魔獣の馬車を操っていたら転びそうになった。

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行商人の馬車を避けようとして魔獣の馬車が転んだら一大事だっただろう。普通の馬車よりスピードが出る魔獣の馬車で転んだら、外にいるボク達は遠くに投げ出されるだろうし、中に居る勇者様達も馬車の中で転げまわって壁に体をぶつけてしまうだろう。けど、戦士ライダル様の機転で事なきを得たんだ。


「どうした?」


勇者アンクス様が馬車の屋根から慌てた顔を覗かせる。そりゃ、馬車の片輪が浮くくらい傾いたのだから、中にいる勇者様にだって分かるはずだ。


屋根に乗せた荷物の前の方に体が出せるような窓が有る。街を出る時にも顔を出して手を振っていた。


「いや、ちょっとミスっちまってな。話に夢中になっていたら、他の馬車とぶつかりそうになっちまったんだ。」


ライダル様はそう言ってボクを(かば)ってくれると、手綱を渡してきた。アンクス様と面と向かって話をするのに馬車を操作しながらできないからだろう。ボクは黙って手綱を受け取った。


「せっかく良い夢を見てたんだから、もうちょっと丁寧に運転してくれよ。」


「ああ、悪い。今度はちゃんと前を見ておくさ。だが、馬車の中で寝るのもいい加減にしておけよ。また、寝られないとか言って夜の村を出歩くなんて止めておけよ。」


「うっせーな。馬車の中なんて退屈なんだよ。寝る事以外にする事なんて無いだろう?」


ライダル様の忠告に機嫌が悪くなるアンクス様。アンクス様はそれを隠そうともしない。


「今度は昼夜逆転した状況で、森の中を探索する気か?注意力不足になって死ぬことになるぞ。」


「期日が決まっていないんだ。2,3日調整日を取っても構わないだろう?どうせ馬車の旅で体が(なま)って動けなくなるんだ。」


「燃費の悪い魔獣の馬車を出しているくらいには急いでいるんだ。ヒマなら馬車の操作を変わってくれないか?気晴らしにはなるだろう。」


「できるかよ!代り映えの無い景色を見ながら寝てしまうのがオチだ。今のオマエじゃネェけど、事故るぜ。」


変な自慢をするアンクス様。今、馬車が走っているのは畑も終わって草原の真っただ中のまっすぐな道だ。何も見るものが無いって言うのはうなずける。こんな風景を見た事が無いボクでさえ同じ光景が続くとは思っていたんだ。


でも、強そうな人が2人して口喧嘩をしていてもボクには割って入るような度胸はないよ。ここで、本当はボクが悪かったなんて言っても意味は無いよね。話の論点はすでに変わっている。


勇者様は言うだけ言うと、馬車の操作を変わる事も無く、中に戻ってしまった。今までも寝ていたようだから、きっと今からも寝るのだろう。まぁ、静かに走るとは言え、薄暗い馬車の中で何かできる事も無いよね。魔法使いのウルセブ様は何かやっていたけど。


「悪かったな。」


「いえ、庇ってくださってありがとうございます。」


「なに、馬車の扱い方を教えている最中だったからな。前を見ないでヘマをやっちまったのはオレも同じだ。さて、今みたいに馬車とすれ違ったり、追い越したりする場合なんだがな…。」


ライダル様はボクの隣に座りなおすと、馬車の操り方を再び教えてくれだした。というか、もっと前に教えて欲しかった。


魔獣の馬車は他の馬車より早いので、すれ違いだけじゃなくて、追い越しをすることもしばしば有るそうだ。当たり前だよね。だけど、その度に横に普通の馬車より大きい魔獣の馬車を退()けたり退かしたりしていると折角の早い馬車の特性が生かせなくなる。


馬車が1台しか通れない道もあるしね。


だから、魔獣の馬車を作ったウルセブ様はどこでも走れるようにした。魔獣の馬車には車輪が付いているんだけど、地面には触れていないらしい。倍の速度で走っている馬車の上からじゃ確認しようがないけど。そうなっているらしい。


難しい事はよくわからなかったけど、空気を固めてその上を走っているそうだ。空気が固まるってどういう事だろう?


魔獣の馬車が走っても静かなのはデコボコな路面の土を踏まないからだろう。普通の馬車だったら道を走ればガタゴト音が鳴るし石を踏めば馬車が跳ねる。だけど、魔獣の馬車は車輪が地面に付いていないから音がしない。


車輪が地面に付いていないから道が無くても走れるんだ。その代わりたくさんの魔石を使ってしまう事になるらしいけど。魔獣をバッタバッタと倒すことができる勇者様の一行だからこそ使える馬車なんだね。


「だからな、相手が来たらアラスカが勝手に道を逸れるから心配しないで良い。」


「手綱を使わなくてもですか?」


「どちらに避けるか指定したいときだけ引けばいい。でも、さっきみたいに急に引くんじゃなくて、軽く方向を教えるくらいでな。」


ライダル様がボクから手綱を取ると、「こうするんだ」と言わんばかりに右の方に引く。本当に優しく引いてアラスカの(はみ)、口元の金具が少し動いた程度だ。すると、魔獣の馬車は道を()れて、一面に広がる草原の上を走り出した。


魔獣が草原を走ると一面に生えていた草が割れて、その上を馬車が通る。草原が波打ち大きなうねりを広げていく。馬車の速さも(あい)まって風になったような気分になれる。


「わぁ!本当に道から逸れても同じように走るんですね。」


「だろ。道を考えなくて良い分、普通の馬車より簡単だ。まぁ、段差が激しすぎるとつっかえたりするから普段は道の上を走るし、その方が道しるべが有って道に迷わなくて済む。」


見えない岩を踏んで転びそうになることもあるが、本当に急いでいる時はまっすぐに突き進むんだけどな、と言ってライダル様は笑った。


草原を掻き分けながら馬車は道に沿って突き進む。それだけで気分が良い。さっきまでのアンクス様とライダル様の言い合いも忘れてボクはその光景に夢中になっていた。


草原が夕日に染まって金色になった時に走ったらどんなに綺麗だろうか。


想いを()せていると、馬車に驚いたサビノリが草むらから飛び出して逃げていく。


「お、今日の晩飯が獲れた。」


いつの間に取ったのかライダル様の諸刃の斧の先にはサビノリが突き刺さっていた。嬉しそうに笑いながら首を()ねると馬車の後方へきらきらと血しぶきが飛んでいく。


「ちょうどいい。馬車の操作は任せるぞ。オレは少し体を動かしたい。」


手早くサビノリの血抜きをすると、ライダル様は魔獣の頭の上に乗って諸刃の斧を振り回し始めた。いや、なんでそこで鍛錬を始めるんですかね。そこに立たれると前が見えないんですけど。



手綱を握っているのはボクなのだけど、何か言えるはずも無かった。



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次回:おっかなびっくり『街道』を



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