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裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第3章:遺跡になんて行きたくなかったんだ。
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戦士様

第3章 遺跡になんて行きたくなかったんだ。

--戦士様--


あらすじ:魔獣の馬車の中は居心地が悪かった。

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「おう、ちょっと手伝ってくれるか?」


薄暗かった魔獣の馬車のドアが開かれると、眩しい外の光と共に戦士様が笑顔を覗かせていた。まぁ、頼みごとをするのに怒った表情をする訳も無いか。


「あ、ハイ。良いですよ。ボクも1つお願いをしても良いですか?」


馬車の中の居心地も悪かったし、外に出たくてボクは一も二もなく返事をした。あのままジルと話しているだけだと、そのうち寝てしまいそうだし寝てしまうとジルが寂しい思いをするかもしれない。丁度いいからジルを荷物に(くくり)り付けてもらおう。


「ん、なんだ?面倒な事か?」


少し顔が歪んで嫌そうな雰囲気になる戦士様にボクは慌てた。だって重たそうな戦斧を軽々と振り回す人だからね。


「あ、いえ、ボクの荷物なんですけど、馬車の中だと邪魔になるかと思って外の荷物といっしょにして欲しいんです。」


「ああ、なんだそんな事か。確かに中にあったら邪魔かもな。」


パレード用の馬車から魔獣の馬車に乗り換える時は、街の人が見送りに来てくれていたこともあってあまり時間が取れなかったんだ。勇者様達の荷物は事前に馬車の上に括り付けられているのに、当日に合流したボクの荷物はパレードの最中もボクといっしょに有って少し邪魔だったんだ。


「リュックと、この棒なんですけど。」


「なんだ、それだけか?寝る時はどうするんだ?」


「マントに(くる)まって寝るつもりでしたけど。」


おかしなことを戦士様は聞いてきた。馬車の旅で大きな荷物を持つなんて事は出来るはずもない。寝る時と言ってもどこかの宿に泊まるか、野宿だと思っていたのでマントに(くる)まって寝れば良いと思っていた。今回はマントが2枚あるから森の時よりもゆったりと寝れるハズだ。


「なんだ、ベッドも布団も無いのか?」


いやいやいや、ベッドなんて重たい物、ボクが持って来れるわけも無いし、持っていたらもっと目立って邪魔になっていたはずだ。


「そんな、旅でベッドなんて持って来れないじゃないですか。」


ちょっと驚いて素の言葉で返してしまった。でも、戦士様は気にした様子はない。


「ああ、悪いな。馬車のベッドはオレ達はオレ達で使わせてもらうぞ。オマエも他人のベッドでは寝たくなかろう?」


「もちろん、構いませんが。」


「そうだな、オマエにはハンモックを貸してやるよ。」


「ハンモック?」


「知らないのか?まぁ、寝る時になれば分かるさ。前に乗せた貴族たちはベッドを持ってきていたから使わなかったが、ベッドを持ってくるヤツばかりで馬車の中に入らなかったりして苦労したんだぜ。てっきりオマエも王宮から来ているから持ってきているのかと思っていたぜ。ああ、このヒモを引くと幌が外れるんだ。旅の途中で自分の荷物を取り出したいことも有るだろうから覚えておいてくれ。」


戦士様は馬車の使い方を教えてくれながら、前に乗せた貴族についての愚痴をこぼしてくれた。


「あ、その棒はなるべく外から見えるようにして欲しいんですけど。」


「ん、ああ、これってオレ達がオマエに持って行った棒なのか?」


「そうです。あの時はありがとうございました。」


「こんな棒が役に立ったのか?」


いぶかしんで戦士様が聞いてくる。まぁ、占い師の旗が付いてたり、王宮の寮に居た時の洗濯担当のチョッカの手によって綺麗な布を巻かれたりしているんだけど、元々は小汚いただの棒だ。ほとんどの人には役に立つとは思えないだろう。


「この棒のおかげで、王宮で働く事ができるようになりました。」


「どうやって?」


率直に聞かれて、ちょっと口ごもる。たぶんジルの事だから他人には存在を知られたくないだろう。戦士様に知られても良いと思っているのならボク達が会った時に口を出しているハズだ。


それに何か有った時に勇者様達にジルの存在を知られていない方が良い気がする。いっしょに旅をするとは言え、勇者様に乱暴に扱われたことがあるせいか、ボクはまだ勇者様達を信用しきれないでいる。


「えっと、この棒を持っていると不思議な事が起こるんです。どうゆう理屈か解りませんけど。外を見せていると色々な事を知らせてくれるいたいなんです。」


そう言いながら、ボクは頭をフル回転させて物語を作っていく。王女様のために読んだ冒険の中で有りそうな物語をアレンジして新しい話をでっち上げていく。


杖代わりに森持って行った時に棒に呼ばれた気がして珍しい木の実を見つける事ができた。なんて適当な話だ。実際のジルだったら、木の実の食べ方まで教えてくれるんだけどね。


「ふ~ん。不思議な力が有ったんだな。あのババァの持っていたもんだから不思議じゃないが。それがキッカケで王宮に来ることができたのか?」


「いえ、その後に色々あって王宮に行ったんですけど。いつも棒が鳴った気がすると良い方向に事が運ぶんです。だからきっと、外を見せていたら魔獣が来ても見つけてくれるんじゃないかなと思うんです。」


「ああ、それで外を見せていて欲しいってワケか。魔道具にも見えないが役に立つんなら試してみても良いだろう。」


まさか、ジルを楽しませるために外を見せたいとは言えない。そんな事を言えば汚い木の棒に意志が宿っている事がバレてしまう。この話で少し不思議な何か察知させてくれるかもしれない棒、程度に思ってくれると良いのだけど。


何も疑わずに戦士様はボクに幌の取り付け方を教えてくれているから気にしていないだろう。良い具合にジルが荷物の端で外を見る事ができる位置に括り付ける事ができた。


「ありがとうございました。それで、手伝いって何をすれば良いんですか?」


感謝の言葉を述べると、ここからが話の本題だ。屈強な戦士様がボクなんかに手伝いを頼まなきゃならないなんて、一体どんな面倒な事が待っているんだろう?


「ああ、そんなに難しい事じゃねぇよ。気楽にしてくれればいい。馬車の操作はしたことがあるよな?」


「馬車ですか…。それくらいはしたことありますけど。けど、まさか…。」


ボクは村から出て占い師になりに街に来た人間だ。街で育った子は知らないけれど、村で育ったボクみたいな子供は小さい頃から親の手伝いをすることになる。


馬車を使って荷物を運ぶんだね。父さんに連れられて街まで商品を売りに行った時に教えて貰ったことがある。というか、父さんと交代しながら街に売りに行くのに必要だったんだ。


だけど、馬車は馬が引くものだ。まさか、この魔獣が引く馬車を操作しろなんて言わないよね?


「ああ、そのまさかだ。なに、そんなに難しい事じゃない。馬車が動かせれば簡単さ。」


戦士様は良い笑顔でニッコリと笑った。



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次回:のんびりできない『馬車の旅』



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