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裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第3章:遺跡になんて行きたくなかったんだ。
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魔獣の馬車

第3章 遺跡になんて行きたくなかったんだ。

--魔獣の馬車--


あらすじ:コロアンちゃんにお守りをもらった。

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空気が重い。


人でにぎわう大通りをパレードして街を出ると、パレード用の馬車から魔獣が引く青い馬車に乗り換えて旅立つことになった。


大勢の街の人たちに見守られて乗った大きな青い馬車の中は、外見から想像するよりもずっと狭くて暗かった。馬車の中に小さいとはいえ2段ベッドが2つも付いていたんだ。


勇者様達が寝る時の物なのかな?


馬車は外から見ると、普通の運搬に使われる(ほろ)馬車よりも大きくて、全てが分厚い木の板を青く塗って作られているようだった。矢が雨のように降ってきても中に入っていれば人間が傷つくことは無いんじゃないかな。


それに、作り物の魔獣が引いているから本物の魔獣に襲われても無理やり逃げる事が出来そうな気がする。それくらい頑丈そうなんだ。


魔法使い様が作ったと言われる魔獣が引いているからなのか、馬車はものすごく静かに動いているらしい。らしいと言うのは箱型の馬車の外が見えないから風の音でしか判断できないんだ。


天井に明り取りの窓と壁に小さな窓が4ヶ所あるのだけど、今は閉じていて薄暗い。風も入って来てはいるようだけど、馬車が静かな事もあって息苦しく感じる。


(旅…というより冒険用の馬車なのかな。村で泊まらなくても、どこでも寝れるように作られているとか?)


馬車の壁は魔獣の爪なんかにはビクともしないんじゃないかと思える。地面の上で野宿をすれば虫に刺されることだってあるけど、地面から十分な距離を取った馬車の上で寝れるんなら途中で起こされる心配もない。


でも、野宿をするよりはマシかも知れないけど、馬車の中でボクを含めて5人もの男が寝ると思うと息苦しくなりそうだ。戦士様なんて体が大きいからベッドからはみ出すかも知れない。


勇者様のイビキがうるさかったらどうしよう。


(雨の日に馬車の中で寝るのは勘弁してほしいなぁ。窓を閉め切ったら何も見え無さそうだ。)


寝る必要のないジルにとって、夜中に何も見えない、聞こえないと言うのは苦痛なのだそうだ。


街であれば夜遅くまでやっている酒場なんかの話を『小さな内緒話』で聞き耳を立てて暇をつぶせるし、森の中でも見張りをしてくれるけど、噂話をする人が居ない場所で何も見えないくらいに真っ暗だと身動きが取れないジルにはやることが無くて退屈なのだそうだ。


(晴れの日でも退屈なんじゃない?)


(いや、雨の日だと雨音しか聞こえなくなるから、なおさら退屈だと思ってな。晴れていれば鳥の声や虫の声くらいは聴けるんだ。)


ジルの退屈は何となくわかる。今だってジルが居なかったらボクは息が詰まっているかも知れない。


(ジルは旅に向かないのかな?昼の内に屋根の荷物に(くく)り付けておいてあげるよ。)


馬車の上には荷物が積んであった。たぶん、食料品とか今回の冒険に必要な物が詰まっているんだろう。ボクの荷物もいっしょにしてもらうついでにジルをリュックに括り付けるくらいはできるだろう。


ジルとのお喋りは『小さな内緒話』があれば外とでもできるしね。


そうすればジルも退屈しないだろうし、ボクもジルから外の様子を聞いて暇をつぶせるかもしれない。今なら外の畑に何が実っているか知るだけでも嬉しいんじゃないのかな。


勇者様と僧侶様は馬車に乗りこむとすぐに2段ベッドの上に登って寝てしまったようだ。そして戦士様は乗り込んで来なかったから馬車を操作しているのかもしれない。残るは魔法使い様だけど、馬車に乗ってから魔法の明かりをつけて魔晶石を見つめてずっと何かやっているようだ。


ああ、屋根にはハッチが有って出発する時は勇者様と僧侶様はそこから体を出していたよ。2段ベッドに乗れなかったボクからは見えなかったけど。


(そうしてくれ。でも、こんな締め切った馬車じゃなきゃ退屈しないと思うぜ。暗すぎる。夜も退屈だろうけど今も退屈なんだよ。窓くらい開けられないか?)


何というか、友達の家に遊びに行って放置されている気分。まぁ、勇者様と友達になっていないけど。退屈しのぎに何かをしたいけど、ここにあるものに勝手に触れたら怒られそうで怖い。とはいえ、真剣な表情の魔法使い様に声をかけるのも(はばか)られる。


結局、手持無沙汰にジルと話している事しかできないんだ。


(やめておこうよ。勇者様と僧侶様が寝ているかも知れないんだ。外の明かりが入って寝れなくなったなんて文句言われたら…あの勇者様だと文句を言う前に手が出てきそうだ。)


(相棒と会った時の事を思い出せば、それが無難なんだよなぁ。)


勇者様と初めて会った時、なかなか返事ができなかったボクの机を壊してしまったんだ。光が入って機嫌が悪くなったらボクもあの机と同じ運命を辿(たど)ることになるかもしれない。今度は戦士様も僧侶様も止めてはくれないだろう。


馬車の外にいる戦士様はともかく、僧侶様も機嫌が悪くなって暴力を振るうかも知れないしね。


街を出てしばらく走った所で、風の音が止んで青い馬車の扉が開いた。


「おう、ちょっと手伝ってくれないか。」


馬車を操作しているハズの戦士様が笑みを浮かべて顔を覗かせてきた。



なにか有ったのかな?



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次回:『戦士様』の手伝い。



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