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裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第3章:遺跡になんて行きたくなかったんだ。
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旅立ちの朝

第3章 遺跡になんて行きたくなかったんだ。

--旅立ちの朝--


あらすじ:王宮の人たちから餞別をもらった。

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「おはよう。ジル。」


冒険者ギルドで必要な物を買って王宮の人たちに色々な物をもらって、今日はいよいよ遺跡に出かける朝だ。


(おはよう。相棒。良い朝だぜ。)


いつもと変わらない朝の目覚めに、変わらないジルとの挨拶だ。手早く水の魔法で顔を洗って制服に着替えると、ここからはいつもと違った朝になる。


部屋の荷物を全部廊下に出して共用で備え付けられている掃除道具を持ってきた。今まで使っていた部屋に感謝を込めて掃除をするんだ。ドアも窓も全部開けきると、晴れた爽やかな空の心地よい風が入って来る。


図書館の掃除は昨日したんだ。1日中掃除をしていると、いつもの若い貴族たちが声をかけにわざわざ来てくれた。実は夜にはパーティーまであったんだよ。


王様が勇者様を呼んでの壮行会だ。勇者様の使っている雷鳴の剣は彼の『ギフト』に合わなくて力を存分に発揮できなかったらしい。それでも一撃で魔獣を黒焦げにしていたんだけどね。だから存分に力が発揮できるかもしれない『勇者の剣』には大きな期待がかかっている。魔獣の群れを制して魔王を倒すために。


ボクも今回の旅の仲間に加えられているから、参加させられたんだけど王様が主催するだけあってとても豪勢で、参加している人も偉い人ばかりで緊張しすぎて何を食べたのか全く覚えていない。


ああ、でも、ノーナッテさんの『食器の舞踏会』は見れたんだよ。食事が盛られたお皿が宙を舞って全員の目の前まで運ばれて来る様子はカナンナさんじゃないけどものすごく興奮した。



廊下から風の魔法を使うと、寝る以外はほとんど使っていなかった部屋にキラキラと(ほこり)が舞うのが見える。風を操ってキラキラを全部窓の外に追いやって、水の魔法で床を一撫でするとブラシでさっとこすりあげる。


いつもより丁寧に掃除をすれば気持ちよく出かけられると思うんだ。騒がしい酒場の近くの安いアパートとは違って静かで居心地が良かったし、遺跡から戻って来た時に綺麗だった方が嬉しいよね。



掃除が終わって朝食を済ませると、いつもの制服の上から王妃様からもらった革の鎧を着ける。街で着ていた服より制服の方が動きやすいし通気性も良いからね。


鎧は深い緑色で肩まで(おお)ってくれるけど、肩も回せて動きやすい作りになっている。カナンナさんの説明だと王宮で研究中の素材で出来ていて、魔力を通すと鎧の表面がヌメっと滑りやすくなって剣や魔獣の爪を通し辛くなるらしい。


でも、素材になる魔獣の名前は言わないで欲しかった。雨の日にケロケロ鳴くヤツだなんて。


鎧のベルトには小さな魔道具を入れられるポケットが付いているので冒険者ギルドで買ってきた火の魔道具、水の魔道具、塩の魔道具をそれぞれ入れておく。これは魔法が使えないイザって時の物だけど、冒険者は必ず持っているので身に着けただけでも身が引き締まる。


ベルトの後ろには王女様からもらったナイフを取り付ける。これもイザって時に使うものになる。普段はもったいないから自分で買ったナイフを使うつもりだ。


なぜ、これを身に着けておくのかと言うと、ナイフには王女様の従者であることが証明される紋章が彫ってあるからだ。ボクは正確には従者ではないけど、この国以外でも有効な身分証明書になるので身に着けておいた方が良いだろう。


腰には王宮に来てから新しく買ったショートソードを吊るしておく。ボクが扱うのはショートソードの中でも、とりわけ短いものだ。剣術なんてしたことないから長いと自分がケガしちゃうんだよね。歩くのにも邪魔だし、森に行くためだけに買った護身用の武器だ。


そして、リュックを背負う。鍋と使い古した方のマントに非常食、それに細々とした雑貨が入っている。いつも使うナイフだけ使いやすいようにリュックの側面に括り付けておく。


古いマントも使えると思って入れてある。ジルと森で野営をした時のように寝る時にはマントが1枚あればなんとかなるのだけど、2枚あったら他の事、例えば敷物にしたり雨の時にロープと組み合わせて屋根を作ったりと役に立つと思うんだ。


最後に、ドゴ様とカナンナさんの親娘に貰ったフードの付いた焦げ茶色のマントをかぶる。これも少し良い物みたいだ。王妃様に貰った鎧と同じように魔道具で、魔力を通すとマントが周囲の景色に溶け込むように変わってくれる。


全てを着終えると、まるで本当の冒険者になったかのような気分になる。


(馬子にも衣装とは言うが、オマエのひょろっちぃ体じゃ鎧に着られてしまっているな。)


(うるさいな。自分でも似合わないって解っているよ。)


冒険者になった気分でポーズを付けて格好つけていると、冷やかすようにジルに声をかけられた。ジルの言葉に傷ついたけど、ボクには戦うための筋肉なんて付いていないんだから仕方がない。この鎧だって普通の兵士の鎧だと大きすぎるから王妃様の侍女が着るための物をしつらえ直したモノだって言うんだ。


(まぁ、今回の旅でヒョーリにも筋肉が付くんじゃないか。)


(筋肉ムキムキの占い師なんて居ないし、居てもお客さんが怖がっちゃうよ。)


どうせ遺跡に冒険に行くと言っても、ボクは道案内をするだけで実際に戦うのは勇者様達なんだ。


(そうかもな。ああ、でも嬉しいのは解るがマントは外していけよ。暑いだろ?)


(そうだね、ちょっと暑いや。リュックにでも(くく)り付けておくよ。)


ポーズをとるために無理な姿勢で動いたりしていたから体が熱くなっていた。


カナンナさんに貰ったマントをリュックの上に乗せて括り付けると、王宮でボクが使っていた部屋は据え付けのベッド以外は何もない元の姿に戻っていた。結局のところココでも余計なモノは持っていなかったし、王宮の暮らしでも旅の暮らしも持ち物は変わらないみたいだ。


(さて、行こうぜ。)


(そうだね。早く帰って来れると良いね。)


最後に、占いの旗が付いたままになっているジルを抱えて、空になった部屋の扉を閉めた。



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次回:『パレード』なんて聞いてないよ。



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