準備
第3章 遺跡になんて行きたくなかったんだ。
--『準備』--
あらすじ:結局、勇者様ご一行と遺跡に行く事になった。
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(遺跡に行くって言っても、何を持って行けば良いんだろう?)
(さぁな。旅はしたことは有るけど、遺跡になんて言った事は無いからな。旅の道具に使えそうな武器でも持って行けば良いんじゃないか?)
ボクの疑問にジルが答えてくれる。ジルは行商をやっていた事があると言っていたから、旅に必要な物を知っているかと思ったのだけど、帰ってきた答えは思ったより頼りない物だった。
(武器って言ってもショートソードしか無いんだけど。)
旅をするのにも自衛の武器は持って行く。他にも無いかと自分の部屋をぐるっと見回したけど、特に思いつきそうなモノも見当たらない。というか部屋の中は殺風景でたいしたものが置いてない。王宮の寮へ来た時には何も持たないで来たんだ。
あれから万が一の時のために森へ行く道具は買ったけど、他に増えたのはタオルとかクシとかの日用雑貨くらいだ。
(なぁ、冒険者ギルドに行けば教えてくれるんじゃねぇか?アイツ等はプロだから持って行きそうなものくらい知っているだろう。)
そうか、ギルド長のマッテーナさんは忙しいかも知れないけど、受付嬢をしているソーデスカかアーノネネに相談すれば冒険者が持っていそうなものくらい知っていそうだね。
(そうだね。それが良い。早速行ってみよう!)
(いちおう、自分の荷物も持って行け。冒険者ギルドの娘たちなら、自分の小遣い稼ぎに要らないものまで買わさせようとするかも知れないからな。)
王宮で働いているとご飯が寮で食べられるし、アパート代もかからないから貯金もできたんだ。少しくらい無駄遣いしても大丈夫だけど、旅に余計なモノを持って行くわけにもいかないからやっぱり必要な物だけを買い足すのが良いだろう。
マントに、新しいショートソードとナイフと鍋。それと申し訳程度の雑貨の入った袋。思いつく限りの冒険をするのに必要な物をジルに括り付けて冒険者ギルドに行く事にした。
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「はぁ?勇者といっしょに『賢者の居ない遺跡』に行く事になったって。アンタそれがどこだか知っているの!?」
ソーデスカの大きな声が冒険者ギルド中に響き渡る。
「んと、北の魔王の森の中だっけ?」
確か、魔王の森の近くに作ったけど人が居なくなって森に飲み込まれてしまったと言っていたはずだ。200年前に賢者様のお孫さんが作ってから、たった100年で森に埋もれてしまった。それからさらに100年経っているんだから森でも深い所にあるんじゃないかな。
「そうよ!魔王の手下になった魔獣がうようよ居るのよ!しかも、この近くに出るような弱っちぃヤツじゃない強い魔獣がよ!森の動物からも逃げるようなアンタが行ける場所じゃないのよ!」
「ボクも行きたいワケじゃ無いんだ。僧侶様がどうしてもって言うし、王様が決めた事だから。」
王妃様の言うようにボクが謁見の間で声を上げていれば結果は違ったのかもしれない。でも、最終的に決めたのは王様だから、王様の言う事を聞かないと王宮どころかこの街に居る事すら大変になるんじゃないのかな。
「なんで王様が出てくるのよ?勇者様案件だから?チッ、あの時、マジでシメておけば良かったわ。」
「シメるって…。物騒だね。」
「あの男がこの街に最初に来た時は冒険者ギルドにもよく顔を出していたのよ。それこそ、魔王の森から一番近い農村の出身でね、なんにも知らないから色々お世話をしてあげたのに、有名になったら全然顔も見せないのよ。感謝の欠片もないのよ!」
ソーデスカは憤慨しているけど、ギルドの受付だって仕事で、お金を払ってやってもらっているって思ったら感謝も無いよね。やってもらって当たり前だと思うんだもの。
勇者…だったら感謝をしてもらえるのかな?
「それで、いつから行くのよ?」
「3日後。」
普段の勇者様たちは魔王軍との戦いの前線に居るんだ。今回はたまたま休暇と装備の補充に戻っていたけど、遺跡の探索で長く空けてしまうと前線に居る他の兵士たちが消耗してしまうそうなんだ。
「はぁ!?なんでそんなに急なのよ!ヒョーリにフルプレート、とは言わないけど、革の鎧くらい着せてあげないと死んじゃいそうなのに、アンタの貧弱な体に合うように仕立て直している時間も無いじゃない!」
そうか、鎧か。確かに鎧を着れば魔獣に噛みつかれても噛み千切られにくくなるかもしれない。その間に治癒の魔法が使えれば生き残れる可能性が増えるね。
「貧弱って…筋力は全くないけど、ソーデスカよりは強いんじゃない?」
鎧の事を考えていてうっかり思ったことが口に出てしまったら、ソーデスカに無言で殴られた。涙がでるくらい痛かったから、たぶんソーデスカはモコッロの親戚に違いない。
「とにかく、緊急会議よ!マッテーナを呼んでくるから、ちょっと待ってなさい!!」
マッテーナさんとアーノネネとで集まってくれて遺跡に持って行きそうなものを選んでくれた。会議よりも愚痴の言い合いになったけど、使えそうな物をいくつか選んでくれたんだ。
革の鎧は手に入れる事が出来なかったけど、ロープに道に迷わないようにする道具、水筒とかの魔道具それに疲労回復のポーションとか色々有るんだね。それに道具を入れるためのリュックも必要になりそうだ。ひとつひとつが丹念に作られている。
ハイデスネが作っている保存食も分けてもらえたけど、せっかくの貯金が無くなってしまった。遺跡に着くまでにもお金は必要なはずなのに。
「いい?非常食なんだから迷子になったら食べるのよ。それまでは勇者に食べさせてもらいなさい!」
「そうするよ。ありがとう。」
食べ物は勇者様というか、馬車にいっしょに乗せてもらえるはずだし、村や街では宿屋で食べる事ができるはずなんだ。だから、非常食に干し肉や干した果物をもらった。
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帰り道。
孤児院にしばらく不在になる事を告げに行った。
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次回:ちょっと寂しい『旅立ち』




