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裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第2章:書類整理だけをしていたかったんだ。
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争奪戦

第2章 書類整理だけをしていたかったんだ。

--争奪戦--


あらすじ:ボクを巡って僧侶様とドゴ様と王妃様が対立した。

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「ヒョーリには新しい使命を与えるのです。」


王妃様が主張する。


「ヒョーリには今まで通り図書館の管理をしてもらわねばならん。」


ドゴ様が静かに言う。


「彼にはぜひ『勇者の剣』を回収する旅に同道(どうどう)してもらいたい。」


僧侶様は言うけど、他の勇者様一行は我知らずを通すように無関心だ。


ボクとしては今まで通り図書館ので資料整理をしていたい。だってのんびりとジルと仕事をしながら食事も食堂でお代わりして食べられるんだよ。そのうち若い貴族から占いの仕事を貰えるかも知れないし、上手くすればパトロンになってくれる人がいるかも知れない。


王妃様には悪いけど、王女様に本や詩の朗読をしてあげるのは緊張するし、シンドイネン夫人の領地まで行くのも不安が残る。この街に来たときも占い師の師匠の所に弟子入りするまで、すごく苦労したんだ。新しい街に行くのには興味があるけど、しんどい思いはしたくない。


勇者様ご一行に着いて行くのは論外だ。遺跡は魔王の森に飲み込まれているみたいだから魔獣がうようよいるはずなんだ。普通の森の動物を狩ることができないボクが魔王の森に行ったら魔獣に食べられる未来しか見えないよね。占い師じゃなくたって視える未来だ。


それに、初めて勇者様に会った時の事を思い出すと未だに震えが止まらない。いくら勇者様たちが強くたって、いや、強いからこそ一緒に冒険したいとは思えない。


「ふむ。まずはアテラの意見だが、『お使い』とはどのようなものかね?」


王様が王妃様に向かって問いかけた。ボクなんかが直接呼ぶには恐れ多いけど、アテラは王妃様の名前だね。


「彼にはアンバヨウへ行ってもらおうと考えています。そのためのテストを現在している所です。」


王妃様が言うと辺りがザワついた。だけど、アンバヨウってあまり聞いた事が無いけど、確か国の名前だったと思う。でも、確かシンドイネン辺境伯夫人の領地に行くんじゃなかったっけ?


(王妃様からの伝言だ。オマエからもアンバヨウへ行きたいと言えとさ。)


混乱しているボクにジルが『小さな内緒話』で話しかけてきた。


(どういう事?)


(どういう事も何も、王妃様が自分の手駒を手放したくないだけさ。)


王妃様を見るとボクにウインクしてきた。ウインクというと色っぽいけど、絶対に催促の合図だよね。


(いや、王様と王妃様が喋っている時に僕が口を挟めるわけが無いでしょ?)


貴族様がたくさん集まる謁見の間だし、ボクみたいな使用人がしゃしゃりでて口を挟めるような状況じゃないよね。


(あ~、やっぱりダメだってよ。)


(さっき、助けてあげたじゃない。男の子でしょ?頑張りなさい!)


ジルの声に続いて王妃様の声が聞こえた。さっき?今までもジルと『小さな内緒話』で話していて、もしかしたら王妃様がボクと勇者様の出会いの一件を知っていたのは、ジルの『小さな内緒話』で聞いていたからだろうか?


でも、王様と王妃様の会話にボクなんかが口を挟んだら死刑とかになるんじゃないかな?だって、貴族様たちの会話でさえ使用人は問われるまで口を挟んじゃいけないことになっているんだ。それに、アンバヨウに行くとか聞いた事もない話なんだけど。


「アンバヨウの件は確かに重要ではあるかもしれんが、今すぐにというわけでも無いだろう。」


ボクが言いよどんでいる間にも『小さな内緒話』で話している事を知らない王様は話を進めてしまう。


「現在、連絡が取れない者がいるのです。」


「連絡はとれずとも、遠くから安否の確認はとれている。もう少し先延ばしにしても大丈夫だろう。」


ボクが発言しないから王妃様はなんとか話を繋げようとしたのだけど、王様は結論付けてしまった。


王妃様に睨まれる。


「ドゴの言い分も同じく緊急性が無いと判断する。」


「陛下!緊急性はありませんが、こう言う事は持続していくのが大切でして。」


「だが、彼が来るまでも報告書は上がって来ていたのだろう?」


「資料を確認して、正確な報告を上げる事ができなければ、我々が判断を誤るかもしれないのですよ?」


「まぁ、それは問題だが、しばらくは人員を増やして対応しろ。」


「しかし、それでは図書館の機密性が問題になります。」


「なら、文官にがんばってもらうしかないな。少しくらいは持ちこたえて見せろ。」


王様はドゴ様の意見をバッサリと切ってしまった。


「さて、最後に勇者一行に同行させる件だが、問題としては最重要ではあるがアテラが言ったように場所さえ聞き出せば彼を連れていく必要は無いと思うのだが?」


「100年もの間、誰も入っていない遺跡です。魔王の森に飲み込まれてからは場所さえもはっきりとはしていないので、彼を道先案内人として必要だと考えます。」


王様の否定的な問いに、僧侶様がはっきりと答える。ボクだって行ったことが無い場所なんだから案内できないと思うのだけど。あ、でも、『失せ物問い』が有れば『勇者の剣』までの間違いのない方向は解るのか。


「ヒョーリはただの占い師であって魔獣と戦う事は出来ないわ。足手まといになるのではなくて?」


「その辺は私達がフォローしますよ。問題は彼の『賢者の像の右か左か。』という曖昧な占いです。賢者の像の前まで来てもらえばはっきりと答えが判るのではないでしょうか?」


「それくらい、両方とも持って帰ってくれば済むことじゃない!」


「万が一ではありますが、両方ともニセモノかも知れません。魔王の進行が激しくなりつつある今、何度も前線を空けるわけにはいきません。」


「なるほどな皆の意見はよくわかった。アンバヨウの件は確かに気になるが、魔王の侵攻はそれ以上に気になる。アンバヨウが同盟を破棄し動くとしたら魔王を倒した後になるハズだ。『勇者の剣』を取ってきてからでも遅くは無いだろう。」



こんな事なら王妃様の言う通りに発言していればよかった。



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次回:新章/遺跡に向けて『旅立ちの準備』




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