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裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第2章:書類整理だけをしていたかったんだ。
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選択肢

第2章 書類整理だけをしていたかったんだ。

--選択肢--


あらすじ:王妃様は勇者様と王女様を結婚させたくないらしい。

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(なぁ、王女様に着いて行ってシンドイネン領に行くつもりなのか?)


天気が良いから図書館の窓を開け放ち、日課になっている掃除を風の魔法でしているボクにジルが問いかけてくる。


(ん。考えてないよ。誘われたワケでも無いしね。)


昨日のシンドイネン夫人の話だと近いうちに王女様が夫人の領地に疎開するそうだけど、ボクを連れていくとは限らない。それにいくら王女様が願ったとしても、ボクの仕事は図書館の整理なのだから、図書館の管理をしているホンコト様の許可も必要になってくる。


まぁ、絶対に拒否はしないだろうけど、冒険者ギルドもね。


朗読やレッスンの時だって図書館のいちおうは仕事が優先されているんだ。ただ、ボクに仕事を頼むために断りを入れる相手が王女様や王妃様になってしまうので、図書館にボクを頼ってきた人が遠慮をしやすいと言うだけだ。遠慮しなくても良いのに。


(いや、考えておけよ。)


(今までの経験だと、嫌がっても連れていかれると思うし。連れていかれなかったら、王宮に残った王妃様に朗読をさせられるんじゃない?)


カナンナさんの時も、王女様の時も、王妃様の時も、ボクが何かを言う前に決まってしまったからね。


(ああ、そうか。王女が疎開するからって王妃様もいっしょにいくとは限らないのか。)


(王妃様は王宮に残るんじゃないかな。王宮で1番偉い王様が王都を離れるワケが無いと思うし、王子様や他の王女様だって居るんだからね。)


ボクの記憶が正しければ王子様が2人と王女様が4人いたハズだ。王女様みんなをシンドイネン領に連れて行くとしても、王様だって王子様だって残っているし、そもそも意外と真面目な王妃様が政務を投げ出して疎開するとは思えない。


(んじゃ、王女様に着いて行って歯の浮いたような恋の詩を朗読させられるか、王妃様と残ってねっとり濃厚な愛の詩を朗読させられるかの違いにしかならないワケだ。)


(はっきり言わないでくれよ。どちらにしたって気が重たいんだ。)


王女様が好む恋の詩も、王妃様に読まされる愛の詩も、テレてしまうので女の子達の前で読みたくはない。ああいうのは好きになった人と2人だけの時に聞いてもらえれば良いんじゃないかな。


バタン。


「ああ、ヒョーリ、居たか。今日は、王妃は来ていないよな。」


「おはようございます。ドゴ様。まだ早くて誰かが来るような時間ではないですよ。」


ジルと話している最中に白い髭を撫でながらドゴ様が図書館に来た。まだボクが気を抜いて朝の掃除をしている時間だ。ここに来る若い貴族だって朝礼をしているか、あるいはまだ王宮に来てない人もいる。


「ああ、そう言えば朝ごはんを食べていなかったな。なに、ちょっとばかり夜更かしをしてしまって来るのが早くなったみたいだ。」


「もしかして、家に帰っていないのですか?」


夜更かしをしたと簡単に言っているけど、どれだけ夜更かしをしたら朝早くから図書館に来ることができるんだろう。カナンナさんのお父さんだから少し気になってしまう。


「ああ、最近はちょっとな。アレも難しい年頃だから近寄りにくいし。それよりも、オマエの持ってきたネックレスの謎が解けそうだったから、ついつい夢中になってしまったんだ。」


誤魔化すようにドゴ様は懐からボクがソンオリィーニ子爵の家から持ってきてしまったネックレスを取り出して見せてくれた。忘れもしない。このネックレスのおかげでボクは王宮に来ることになってしまったんだ。


「ネックレスの謎ですか?でも、子爵様の宝物はすでに見つけた後になりますよ。」


子爵様にネックレスが示す財宝を探すように言われて、見つかったのが励ましの言葉が1つ書かれた紙切れ1枚だったから、ボクは子爵様に殺されそうになったんだ。それで逃げ込んだ先が今働いている図書館なのだ。


「宝よりも謎解きが面白いのさ。それに、新しい発見もあったんだ。オマエは宝を探す時に謎をまったく解いていないのだろう?」


「ええ、ボクの『ギフト』で探したので、謎なんて解いていないです。」


子爵様に()かされてボクの『失せ物問い』で宝物を見つけたんだから、謎なんて解いていない。少し『失せ物問い』の精霊の言葉には引っかかったけど、結果的には宝箱は見つかったんだ。


「じゃあ、もう一度、教えてくれ、このネックレスの示す宝物はどこに有る?きちんと教えてくれ。」


ドゴ様の問いかけにボクの『失せ物問い』の精霊が囁く。


「子爵家の門番の詰め所の金庫の裏です。」


「本当にそうか?」


本当の事を言うと少し違う。それを見越したかのようにドゴ様はじっとボクの事を見つめてくる。


「子爵家の門番の詰め所の金庫の裏と裏(・・)です…。」


そう、妖精が囁いたのは裏だけじゃ無かった。


聞き間違いかと思ってジルに聞き直してもらっても、精霊は同じように囁いたんだ。だけど、子爵様は1つの宝物を探していると思っていたし、金庫の奥から宝箱が見つかって執事のヒダリィさんも納得していたので、ボクはそれ以上追及することを止めたんだ。


「まったく、アシンハラのガキも惜しい事をしたもんだ。ちゃんと謎を解けばダミーの事にも気が付けただろうに。挙句の果てが王女誘拐未遂で失脚だとは笑わせてくれる。」


いや、笑えないからね。ボクの占いのせいで人の人生が間違っちゃったなんて本当に笑えない。占い師が人を不幸にするなんて、ボクは占い師失格だ。


「なに、気にするな。アシンハラは放蕩(ほうとう)していて敵も多かったから、宝が見つかっていても遅かれ早かれ勝手にくたばっていたさ。」


青くなってうなだれてしまったボクをドゴ様が優しく励ましてくれた。


「それよりも、オマエの『ギフト』の範囲はどれだけあるんだ?ここから子爵家まではかなり距離があるが、それでも判るくらいなんだから相当広いんだろうな。」


『ギフト』を使うのにも有効な範囲がある。例えばジルの『小さな内緒話』だと目に見える範囲、せいぜい図書館の建物の中くらいしか効果を及ぼすことができないし、農夫がよく持っている『土の聞き手』なんかだと自分が耕した畑の声しか聞こえない。


「はっきりと、試したことはありません。ただ、街の中で探し物をするのに苦労したことは無いので、それくらいは判るかと思います。」


『ギフト』を貰ってこの街に来てからは街の中か森の中でも近くしか探し物をしていないし、尋ねられることも無かった。まぁ、街の外で落とし物をするなんてないよね。


「そうか、では『勇者の剣』はどこに有るかわかるか?」


ドゴ様の問いに『失せ物問い』の妖精が囁く。


「ここから北東の『賢者の居ない遺跡』にあるようですが…。」


「なんだ?そんなに遠くまでわかるのか?」


ドゴ様は知っているようだけど、『賢者の居ない遺跡』なんて聞いた事もない。


「え、あ、はい。あと、ソンオリィーニ子爵の時のように少し変な風な結果になっています。」


「どんなものだ?」



「北東の『賢者の居ない遺跡』の最奥の賢者の像の右か左か。と。」



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次回:不穏な空気の流れる『謁見の間』




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