表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第2章:書類整理だけをしていたかったんだ。
36/343

依頼

第2章 書類整理だけをしていたかったんだ。

--依頼--


あらすじ:お礼を断られたと思ったら、依頼を受けて欲しいと言われた。

------------------------------



「王妃様の依頼?朗読以外に何をやらせる気だ?」


ジルが声を上げてカナンナさんに噛みつく。


この間の泉のほとりの件でボク達に警告するために声をだしてしまってから、ジルはメイドさんや侍女さんと話すようになった。ボクの元に来る前からの知り合いだって多いしね。


「あら、初めまして。『盗賊の棒』。」


「『盗賊の棒』?」


トゲのあるカナンナさんの言葉にボクは思わず聞き返してしまった。


「そこのフランソワーズさんの事よ。」


ジルに対して初めましてと挨拶していたのだから、『盗賊の棒』がジルを差している事くらい解っている。


ちなみに、フランソワーズはジルが王宮で名乗っていた偽名だそうだ。こんがらがりそうなのでジルで統一して欲しい。


「なに、最初にオレが見つけられたのが、壊滅した盗賊団のアジトからだったって話だよ。昔の話だし何より、オレは盗賊から逃げ出すために棒に身をやつしたんだから関係ないと言っているんだがな。」


「でも、『盗賊の棒』みたいな『ギフト』を持っている人も居るから気を付けなさいって言われるわ。」


「オレの『ギフト』が盗み聞きを得意にするからな。ただの盗聴器にすら怯える貴族からすれば当然だろう。今はヒョーリに何かない限りは大人しくしてるぜ。」


「ほんとに?」


「何なら、今すぐ王女様にチクってやっても良いんだぜ。サボり魔が来ているってな。」


前に聞いた話だと、王女様はジルの『小さな内緒話』の範囲外に居るとだと思うんだけど、そんな事関係なく強気に言い放つ。


「あら、今日はちゃんと許可を取ってあるからサボりじゃないわ。」


「それじゃあ、この間、調理場からちょろまかして来ていたお菓子の事についてチクってやろう。」


「な!あれは。あれはヒョーリも食べていたじゃない!」


「オレは食べていねぇ。」


「食べられないアナタが悪いのよ。」


「まぁまぁ、2人とも落ち着いて。」


ジルとカナンナさんがどんどん険悪になっていくのに耐え切れなくなってボクは止めてしまった。


本当はジルの過去が気になるのだから、止めずに聞いていた方が良かったのかもしれない。


だいたい、ジルは謎が多すぎる。名前もそうだけど、性別も過去も全然教えてくれない。


気になってもしょうがないじゃないか。


「それで、王妃様の依頼って何なの?」


ジルの事も気になるけど、もっと気になるのは依頼の方だ。毎日のように朗読や歌の指導に来ていたんだから、その時に話してくれれば良いのに、わざわざカナンナさんを通して話をしに来ている。


いっしょに指導しに来てくれているヤワァ夫人に知られたくない事なのか、あるいは他に理由がある事なのか。


「そうそう、それよ。忘れる所だったわ。」


「いや、王妃様の依頼なんだから忘れないで下さいよ。」


一番重要な事なのに忘れるなんて、カナンナさんはのんびりしているというか、侍女をやって行けるのだろうか。まぁ、貴族のお嬢様みたいだから、侍女をクビになっても良いのかもしれない。


「依頼は簡単な事よ。ただ、ヒョーリにしかできない。」


「探し物をするのかな?」


ボクにしかできないなら『失せ物問い』を使った探し物しかない。


「そうよ。手紙を探して欲しいの。」


なるほど、手紙なら今までお願いして来なかった理由も解る。王妃様が忙しくなった後に届いた手紙なのだろう。


「はい、コレ。」


カナンナさんが封をした手紙を1通渡して来る。あれ?手紙を探すんじゃないのかな?


「これが探す手紙?」


「いいえ、その手紙の返事を探して欲しいの。」


カナンナさんは辺りを見回して声をひそめて言った。ここからは内緒の話にしたいらしい。


(ジル。お願い。)


(しかたねぇ。)


内緒話とくればジルの出番だ。ボクがジルにお願いをすると、すぐにジルは了承してくれた。


(返事を探すの?)


ジルが『小さな内緒話』を使ってくれると、とたんに頭の中に響くような声に切り替わる。


(わ!なにコレ。おもしろ~い!)


(ジルの『ギフト』だよ。周りの人に聞こえなくなるから、辺りを気にする必要が無くなるでしょ?)


図書館の中にはボク達しかいないから気にする必要はないけど、王妃様の依頼なんだから、気を使いすぎる事も無いだろう。


(なるほど、便利な『ギフト』ね。)


(それで、返事を探すってどういうことなの?)


のんびりと『小さな内緒話』を楽しんでいるカナンナさんに答えを早く聞きたいボクの口調がきつくなってしまった。けど、仕方ないよね。手元にある手紙の返事を探すって言われても何の事か解らない。


1度送ったけど、返事を無くしてしまったのだろか?でも、封をしたままに見えるからまだ送っていない手紙なのだろうか?


(ああ、ごめんね。面白くってつい。その手紙をシンドイネン辺境伯夫人に渡して欲しいの。)


(普通に送れば良いんじゃない?)


手紙を送るなんて誰にでもできる事だ。侍女の人でもメイドさんにでも誰かに持って行ってもらえば良いのだから、わざわざボクに依頼する必要なんて無いよね。


(ちょっと邪魔が入っている様でね。今までの方法だとシンドイネン夫人からの返事が誰かに盗み見されているようなの。)


手紙を使って打ち合わせをしていたのだけど、2人きりで会って話をしようとしたら、シンドイネン夫人の手紙に日時と場所が書かれていた時ばかり盗聴器が仕掛けられていたらしい。


盗聴器が見つかった時は大事を取って重要な話をすることを避けたけど、このまま同じように盗聴器を仕掛け続けられるのも面白くない。手紙の内容だって読まれているに違いないからね。


だから、王妃様は新しく手紙を受け取れるルートを開拓することにした。そう、ボクの『失せ物問い』を使ってね。


手順はこうだ。


シンドイネン夫人が書いた手紙をどこかに置き忘れて貰って、ボクが探すだけだ。


無くす場所はボクが動き回っても怪しまれない場所ならばどこでもいい。王宮のなかの廊下の花瓶の隅に落としても、どこかの部屋の引き出しの中に入れて忘れて帰っても良い。それこそ、街の片隅の倉庫の裏にでも刺したままにしておいても良いだろう。


後はボクが忘れた手紙を探す依頼を受ける。いや、手紙が来る事が判っていれば依頼を受けなくても毎日『失せ物問い』の妖精に聞いていれば良いんだ。ただ、それだけで手紙を盗み見ていた人物はどこを経由して手紙が運ばれるのか判らなくなる。


安全に手紙を受け取る手段となるかもしれないのだ。


そのための最初の1歩として、ボクが王妃様の手紙を拾ったことにしてシンドイネン夫人に持って行って説明をしてきて欲しいとの事だった。王妃様の手先として動いている事は出来るだけ隠すようにと言われた。


(失敗してもフランソワーズさんの『ギフト』を使えるわよね。ヒョーリを巻き込んでしまえばフランソワーズさんも『ギフト』を使わざるをえなくなりそうだもの。」


(なんか、巻き込んでしまったようだな。ごめんよ、相棒。)


ジルが情けない声をだす。



なんか、いつの間にか貴族様の争いに巻き込まれて行っているようだけど、王宮で生活してると当たり前なのかな?



------------------------------

次回:王妃とシンドイネン夫人の『計画』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ