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裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第10章:魔王の森が広がっていたんだ。
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魔石拾い

第10章:魔王の森が広がっていたんだ。

--『魔石拾い』--


あらすじ:『破邪の千刃増幅くん』。すごい

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秘密兵器、『破邪の千刃増幅くん』は正式に『魔断の戦車』という名前に変えられた。


名前が長くてカッコ悪いからだ。


偉い人が口にする時に『破邪の千刃増幅くん』は長くて言い難いし、吟遊詩人の人達が『破邪の千刃増幅くん』と歌ったら、正気を疑うよね。語呂も悪いし。勇者アンクスだって嫌がっていた。


魔法使いウルセブ様は最後まで反対していたけれど、名前がカッコ悪いとボクたちは死ぬかもしれない。アンクスが勇者の力が弱くなったら、魔獣の大群をさばききれない事も出てくるかもしれない。


ボクの『薪割りの剣』を『羽化の剣』と呼び名を変えさせられたのと一緒だ。ボクとしては『薪割りの剣』でも『羽化の剣』でも同じだけど、カッコいい名前の方が頼りになるように聞こえるからね。


アンクスが『魔断の戦車』の上で『魔断の白刃』と叫んだのも、たぶん必要だったんだよ。神様に貰った『ギフト』を使う時に、違う言葉を叫ぶのは失礼な気もするけど。


『破邪の千刃』や『破邪の一閃』、『魔断の白刃』で魔王を倒したと聞いた方が、『耕す一振り』で魔王を倒したと聞かされるよりもカッコいいよね。


『耕す一振り』だと、魔王が耕されたのかと聞こえてしまう。


ボク達が魔王の森で生き残るにはカッコいい名前が必要だったんだ。


勇者の力を強めるために。


おかげで勇者アンクスが使った『魔断の白刃』は魔王の森を木くずの平原にした。見た目には平らになって歩きやすそうに見えるけど、ふかふかに柔らかくて足元が沈む。たまに足が埋まってしまったりする。


だけど、狩人の『深き森の千里眼』が無くても見通しが良いから、魔獣を警戒しやすいし、少しくらい離れても兵士さん達が見守っていてくれる。貧弱なボクでも魔王の森を歩く事ができる。


もっとも、兵士さんのほとんどは『魔断の戦車』が通れる道を作るために木くずを掘っているんだけどね。ふかふかの地面だと重い戦車の車輪が沈んで動かないんだ。


(『魔断の白刃』でできた魔石はどこにある?)


ボクは妖精に囁かれた場所を目指して積もった木くずの山を歩き出す。ジルを杖のように使うとふかふかの地面に沈んでしまうから、肩に掛けて。


新しい仕事。


魔石拾いだ。


狩人のように森の中の魔獣を警戒する事もできないし、兵士さん達のように戦う事もできない。道づくりだって非力なボクは足手まといになってしまう。


その中で、魔石拾いができる事は幸運だった。


魔王の森でのボクの仕事は『魔断の戦車』に乗って方向を調整するだけだからね。地図に書かれた赤い線は変わる事も無くて、道ができて『魔断の戦車』が進むまでは時間が余ってしまうんだ。


『魔断の白刃』を1回使うたびに72個もの魔石を使うから、1回につき10個ほどしか拾うことができないけれど、無いよりはあった方が嬉しいし、魔石を運ぶ人も楽ができると兵士さん達からも喜ばれていた。


何より、アンクスといっしょに居ないですむ。


『失せ物問い』の妖精に感謝しないといけない。『失せ物問い』の妖精が魔石を落とし物だと判別してくれているから探せるんだ。他の人だと木くずの下にある魔石なんて探し回っても見付けられないからボクだけの仕事なんだ。


(この辺りかな?)


ボクは『失せ物問い』の妖精に囁かれた場所に『羽化の剣』を差し込んで跳ね上げた。木くずが舞い散って中から黒い魔石が青い空に飛び出す。


なぜ、木くずの下に魔石があるのかというと、『魔断の白刃』で森を切り崩した時に巻き込まれた魔獣が死んだからだ。大木をも木くずに変える『魔断の』白刃の中で魔獣が生き残る事はできなくて、兵士さんが武器を振るう暇もない。


魔石が『魔断の白刃』で粉にならないのは、魔獣が死んでから魔石になるまでに時間があるからだ。


魔石は魔獣が生きている時から体内にあるのではなくて、死んでぐずぐずになっていく中で魔力が集まってできるものらしい。魔獣が死んで魔石ができる前に『魔断の白刃』が収まるから、魔石には傷も残らないのだとウルセブ様は仰っていた。


最初は魔石をシャベルで掘り起こしていたんだけど、軽い木くずの山は崩れてしまって掘るのに苦労したんだ。剣なら簡単に刺さるし、柔らかい木くずは邪魔にならない。大切な『羽化の剣』を粗末に扱うなと怒られたけどね。


でも、ボクが剣を刺した所からあっさりと魔石が掘り起こされるのを見て、『羽化の剣』は魔石を掘り当てる『奇跡の剣』とか、『魔石の剣』とか呼ばれるようになった。いや、これ以上名前が変わると面倒だから、『羽化の剣』で良いと思う。


いくら名前が変わっても、鉄の剣には違いないんだ。


(今日は大きい魔石が多いな。)


ジルの言う通り、ボクの手のひらに収まった魔石は昨日拾った魔石よりも大きかった。魔石が大きいって事は、より強い魔獣がいた証拠だ。


(兵士さん達に報告した方が良いよね。)


(そうだな。これからもっと大きな魔石が増えていくかもしれねえ。)


兵士さん達は森を切り拓くのに必要な数しかいない。あとの人は魔王の城に攻め込むための準備をしている。魔王を倒して魔王の森をこれ以上広がらないようにするために。そして、新しい魔王が生まれないように、魔族を根絶やしにするために攻め込む用意をしているんだ。


その前に、ボクは魔王の城に行きたいと思っている。


白い姫様にアンベワリィにセナ。たくさんの魔族の人にお世話になったから、助けたい。


それに、ボクに白い腕輪と黒い魔晶石をくれた魔王が悪い人に思えない。黒い魔晶石は魔獣に襲われた時に身を隠すもやもやを出して助けてくれたし、黒いドラゴンのソンドシタ様達と話をする助けにもなってくれた。


魔王に腕輪を貰わなければ、ボクは死んでいたかも知れないんだ。


できれば、魔王にも生きていてもらいたい。


何より、白い姫様が悲しむ顔は、もう見たくない。


ボクが単独で魔王の城に行けば、偉い人から怒られるかもしれない。勇者アンクスに殴られるかもしれない。村や畑、手足を失った人たちからは恨まれるだろう。


それでも。


今はまだ『魔断の戦車』は魔王の森を半分も進んでいないけれど、魔王の城の近くまで寄ればカプリオに乗って進む事ができる。魔道具の魔獣の彼でも何日も森の中を走り続ける事は無理だけど、1日くらいの距離まで近づけば辿り着く事ができる。


あとは、ジルやカプリオに協力してもらえるように、お願いをするタイミングを考えないと。


魔王が森を止める方法を知っていて、平和に解決できればいいのだけど。



「兄さん!そろそろ次の準備が終わるッス。」


「うん。こっちも終わったから、すぐに行くよ。」


ボクは呼びに来たヴァロアに返事をして『失せ物問い』に他に魔石が落ちていないかを確認すると、拾った魔石を袋に入れて『魔断の戦車』へと歩き出した。



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次回:新章/魔王だって助けたいんだ。『魔断の戦車』



前回は投稿が遅くなり申し訳ありませんでした。



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