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裏路地占い師の探し物 ~勇者様のせいで占い師を続けられなかったんだ。~  作者: 61
第1章:占い師を辞めなくちゃならなかったんだ。
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査定

--査定--


あらすじ:ハイデスネに感謝された。

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ポリポリと茶色く揚がったベスターメンをかじる。


ハイデスネにお礼として貰った。


(良い音だな。で、味は?)


(コンソメと塩で味付けされてて、少し味が濃いね。)


(もうちょっと食欲が湧くようなレポートをしてくれよ。)


(どうせ食べれないんだろ。)


(想像するだけでも楽しいじゃないか。)


(エールが欲しくなる味だよ。絶対にエールを注文させたくてコレをチョイスしたって思うよ。値段も安いし。)


(大したことしてないしそんなもんか。そのうちハイデスネが自分で見つけただろうし、もらえただけでも儲けもんだ。それにしてもエールを飲みたくなる味か。ポリポリと触感を楽しんだ後に口に広がった濃い味をエールでさっぱり流し込む。するとまた濃い味が欲しくなって無限に食べられる。やれば出来るじゃねーか!)


(いや、そこまでは言っていないけど。)


ジルの大げさな表現に呆れて、さらにひとつまみをポリポリとかじりって口の中に魔法で水を生成させる。


エールの苦みが無いので少し物足りなく感じが、お金が無いので諦めるしかない。



「待たせたね。」


ベスターメンが無くなってしばらくたってからソーデスカに声をかけられた。査定が終わったらしい。


「これが今回の報酬だ。」


いつもより多い数枚の銀貨と銅貨を手渡されるとホッとする。これで数日は持つだろう…。夕飯もちゃんとした物が食べられる。だけど家賃の事を考えるとまだまだ足りない。もう一度、森まで行って稼いだ方が良いだろうか?


「ありがとう。他に仕事は無いかな?」


「キミ向けのは…ないかな。だいたいロクにウメトラも狩れないんじゃ冒険者ギルドに来る方が間違っているよ。」


ウメトラは小さくてすばしっこい動物だ。臆病だから狩るのも簡単だけど、素早いのでボクには狩ることができない。野草の採取より、だんぜん肉を捕ってくる方がお金になる。


「まあそうだよね。また迷子の子犬でも居たら声をかけてくれよ。」


「そう気を落とすなよ。何とかなるさ。じゃあね。」


ニコっと笑うとソーデスカはボクの背中を叩いて行ってしまった。結構痛かった。


(これからどうするんだよ?)


(ん、当てもないから、そうだね。とりあえず占い師ギルドに行って、どこかの食堂で客待ちをしてみるさ。)


何件かお世話になっている食堂があるのだけど、冒険者ギルドの食堂みたいに少しの時間だけ看板を持って待たせてもらえる。だいたいは何か飲むか食べるかしないといけないから、昼食や夕食は客待ちをしながら食堂で食べる事が多い。


(あ、ブルガムの資料ってどこに消えたかわかるか?)


ジルの言葉に『失せ物問い』の妖精が囁く。ブルガムの資料の位置が判る。


(今度は誰が探しているのかな?)


(ソーデスカだよ。教えてやればハイデスネみたいに何かくれるかもしれないぞ。)


ハイデスネは食堂の担当だから食べ物をくれたけど、ソーデスカはカウンターの担当だ。仕事をくれる、なんて事はない、よな。


「ソーデスカ!第2資料庫の右の一番奥の棚の下に有るよ。棚に入ってないから気を付けて。」


「何だってそんな所に?右の一番奥って!?なんでそんな面倒な場所に?ヒョーリ、ちょっと待ってて。」


(今度は何が貰えるかな?)


ジルが楽しそうに笑うけど何か貰えるとは思っていない。いつもお世話になっているし、ちょっとした手伝いくらいに考えていていたから期待を込めずに軽口で応える。


(もう一回、ベスターメンかもね。)


(エールを頼まなかったから有り得るな。これでエールを頼むまでベスターメンを貰えるぞ。)


(嫌だよ。口の中がカラカラになってしまう。それならダダ豆でも食べたいよ。)


(ダダ豆の塩ゆでか?あれも酒に合うよな。)


(ダダ豆の方が豆の甘さが有って美味しいよ。)


(なんだ、少しはレポートしてくれる気になったか?)


(味は知っているんだろ?それなら別にレポート聞かなくても良いじゃないか。)


(解ってないな。他人から聞くのが面白いのさ。)


(そんなもんか?)


(食べられないから味は楽しめないんだ。そんなもんだ。)


(それはそうと、さっきはソーデスカの声が聞こえなかったけど『小さな内緒話』で聞いたのか?)


ハイデスネの時もボクの所まで話声は聞こえてこなかったし、出会った時に遠くのヒソヒソ話も聞くことが出来ると言っていたので確認してみた。


(ん、そうだが?)


(動く盗聴器かよ。)


貴族の間で使われているらしい盗聴の魔道具だけど噂話でしか聞いたことがない。それも、たまたま酒場で客待ちしている間に後ろに座った人の噂話が聞こえてきただけだ。


それと同じことをボクと話している間もしていて、あちこちに聞き耳を立てているのだろう。2つ以上の会話を聞き分けられるなんて器用なヤツだ。


(そういう『ギフト』だと言っただろ、便利だって。)


「ああ、待たせたね。ありがとう、お陰ですぐに見つかったよ。掘り出すのにはちょっと苦労したけどね。」


ジルと話している内にソーデスカが戻ってきた。それにしても掘り起こすって…棚の下だよね。どんな場所に有ったんだろう。


「どういたしまして。見つかって良かったよ。それじゃボクはこれで。」


ジルとお礼の話はしていたけど、期待もしていなかったし厚かましく催促(さいそく)する気もない。


それに今のボクには、続けてだと少しクドいベスターメンをもう1皿かじる気も無い。特にエールが無い今はね。


「まあ、待ちなってば。少し話をしようよ。おーい!ハイデスネ、エールをヒョーリにお願いね!」


「お、ヒョーリ。モテモテじゃん!美人2人目からの奢りだって?」


ソーデスカに言われたエールを運んできたハイデスネに茶化される。自分で美人って言うなよ。


「さっきのブルガムの資料を見つけたのってキミの『ギフト』の力なの?」


「そうですけど。以前の依頼でもペットを見つけていましたよね。どちらかと言うと動かないものの方が得意ですよ。」


ペットの依頼を冒険者ギルドで受けた事は、いつもカウンターにいるソーデスカも知っているはずだ。なにせ受付伝票を処理したのは彼女だし、見つけたペットを可愛がっていたのも覚えている。


「ああ、そう言う事か。『失くした物を探します』って、ペットとか街で失くした物だけかと思っていたよ。それならね、このリストを見てほしいんだけど。」


ソーデスカが渡してきた紙には、いろんな人が書き込んだらしく大きな字や小さな字、きれいな字に汚い字が並んでいた。


「これは…全部資料の名前ですか?」


ブルガムの資料みたいに冒険者ギルドで扱っている品物の資料や何年か前の報告書みたいな名前が並んでいる。何かのリストみたいだ。


「そうよ。資料庫の中で行方不明になっているモノの一覧表よ。特に重要なモノだけ、だけどね。」


それにしても、ずいぶんと多い。4ページほどある。これだけの資料をどうやったら無くせるんだ?


「これが、どうしたんですか?」


「仕事が無いって言っていたじゃない。このリストの資料を見つける事はできる?」


失くした物なら『失せ物問い』で探せるだろう。


(試してみようぜ。ああああの書?なんだこれ。ああああの書はどこに消えた?)


ボクが返事をするより早く届いたジルの声に『失せ物問い』の妖精が答えて、ああああの書の位置が判る。


「探せそうですね。」


「良かった。見付からなくて困っていたのよ。今までは、いちいち隣町まで問い合わせたりしていたの。明日で良いから探して貰えないかな?」


ボクの言葉にソーデスカが満面の笑みになる。



明日の仕事が見つかった。



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次回:入れない『第1資料室』



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