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溺愛王子の許嫁  作者: まくのゆうき


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もう一つの作業場

翌日。

昨日と変わらず快晴で、視察日和となった。


「アリシア、病みあがりなんだから無理しちゃだめだよ?宿の中はいいけど、外には絶対に出ないでね?」


とても過保護な保護者のようになってしまったフランツにくすくすと笑いながらアリシアは答えた。


「フランツ様……わかりました。お部屋からはなるべく出ませんし、宿から外には出ませんから安心してください。……フランツ様の方が危険なのでは」


最後の言葉を聞き取れず、フランツが聞き返す。

アリシアはあまり不安を口にするのはよくないと、言葉を変えた。


「いえ、くれぐれも気をつけてください」

「うん。ありがとう。行ってくるね」

「はい、行ってらっしゃいませ」


出かける前にアリシアの部屋に立ち寄ったフランツは、迎えに来た領主と外出した。

アリシアはその様子を部屋の窓から見送るのだった。



馬車に揺られたフランツは、昨日と同じ場所に案内されていた。


「今日は昨日とは違う方を見せてもらえるのかな」

「いえ、実はどうしても、もう少し掘り進めたいという意見がありまして、お見せできるのは昨日ご案内した方になりますが……」


アリシアの話しの通り、ガスが発生し掘り進めていない穴の中に案内をしたいようで、いまいち歯切れがよくない。

おそらく交互に掘り進めているというのは虚偽なのだろう。


「そうか。私は掘った後より、採掘の様子を見たいのだが、それは可能だろうか?」

「……明日でしたらそのように手配します。本日はどうか作業を優先させてくださいますと……」

「わかった。では、本日は取り止めるとしよう。私は少し外を散歩したいのだがかまわないだろうか。穴の中には入らない。約束しよう」

「まあ、それでしたら……」


領主は渋々と言った様子で了承した。


「私は一人で大丈夫だ。そなたは仕事を続けてくれ」


フランツは領主に背を向けると、岸壁沿いを歩き始めた。



領主が見えなくなったところで、エルに声をかける。


「フランツ、大当たりだよ」

「残念だな」


フランツは昨晩、アリシアから聞いた話を元にエルに調査を依頼していたが、昨夜、国王陛下に報告をしていた内容に間違いはなかったようだ。

まず、現在の穴の奥からはガスが漏れていて、深層部ほど濃度の高いガスが充満している。

そして現在、この穴の中には誰もおらず、作業を行っている形跡はないという。

もう一つの方では作業員が何やら行っているが、採掘とは違う作業をしているようだということだ。


「仕方ないな」


そう呟くと、エルに更なる依頼をする。


「はいはい。わかりました。おつかいするよ。もう一つの方の罠の詳細だな」


エルはとりあえず中の様子を確認してくると言って、フランツの前から姿を消した。


「ところで……」


フランツは岩から見える小さな影に話しかける。


「君も私に伝えたいことがあるんじゃないのかな?」

「うん」


返事をして岩影から頭を出したのは妖精のようだ。

妖精はそこから動かずに話を進めた。


「あのね。たぶんね。もう少ししたらここ全体が崩れると思うんだ。でもその前に、あっちはガスがいっぱいで、そっちは岩が落ちるやつをこれから取り付けるって言ってた」

「そうなんだな」

「だから中に入ると危ないんだよ」


ちょうどエルに確認を頼んだ内容である。

この妖精が嘘を言っているとは思わないが、エルが見てきた内容と合わせれば内部の情報を詳細に兵士に伝えることができるだろう。


「何でそれを教えにきてくれたんだ?」


アリシアがいればこの妖精も彼女のところへ先に行ったのではないだろうか、そんな疑問を持ちながらも、フランツはこの妖精が自分のところに来た理由を知りたかった。


「なんかフィリウスさんと同じっぽいから、もしかしたらお話できるかなって思って待ってたんだ」

「フィリウスか……彼は私の兄だよ。似ているか?」

「うーん。オーラが近い。あと、妖精王と契約してるみたいだし、怒られたくない」


妖精は人間をオーラで判別しているようだが、フランツにフィリウスと似ているという自覚はない。

指輪で契約できる者という意味では似ているのかもしれないが、血縁関係があるからなのか、育った環境なのか分からないが、彼らからすると近いものを感じるということのようだ。


「教えないと怒られるのか?」

「たぶん……昨日は言いそびれちゃって、一緒にいた子が倒れちゃったみたいだし、これ以上もたもたしてたら、もっと怒られちゃう」


そしてエルがいるときに出てこなかったのは、妖精王と近いものが苦手だからということらしい。


「じゃあ、もう少し知っていることを教えてくれないか?岩が落ちてくるやつというのは、人間が操作する仕掛けか?」

「たぶん。でも、あんまり重いのを取り付けたら、取り付けてる人が先に潰れるかも。あっちの穴の壁、特に奥の方が弱いんだ」

「わかった」

「じゃあ、そろそろ隠れるね。フィリウスさんによろしく」

「ああ、ありがとう」


おどおどとした妖精が身を隠すと、そこにエルが戻ってきた。


「どうだった?」

「ああ、あっちはなかなか大掛かりな仕掛けを作ってるみたいだ。中にいたら逃げ場がないね」

「どうすれば回避できそうだ?」

「中に入らないのが一番いいんじゃないか……?」


できるならそうしたいところだが、どうなるかは分からない。

フランツは他に分かったことがないのか聞くことにした。


「仕掛けが動いたらどうなるんだ?」

「岩盤が崩落して中に閉じ込められるか、落ちてきた岩の下敷きにされるかの二択だな」

「仕掛けを止める方法はありそうか?」

「いや、そこまではわからなかったけど、何かしらの方法で岩盤を崩すつもりで仕掛けを作っていることは間違いないと思う」


仕掛けは現在も作成中でできていないのか、どのように操作するのか分からないという。

これでは領主の動作に気をつけていても回避するのは難しそうだ。


「領主は明日ならもう一つの方に案内できると言っていた。おそらく仕掛けが今日中に完成するということだろうな。作業者は夕方には引き上げているようだから、彼らが引き揚げた後、暗くなる前なら完成したものを確認できるかもしれないな」


フランツは考えをまとめると、崖を見上げながら領主から見える位置まで戻った。

領主は作業員に指示を出していたが、姿を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。

彼はフランツが崖を見上げながら歩いているだけだと思ったらしい。


「いかがですか?ずっと崖が続いていて。変わったものは特にありませんでしたでしょう?」

「ああ、そうだな。とりあえず、アリシアの様子を見たいし、今日はもう一か所には行けないようだから、宿に戻って明日に備えようと思うのだが」


体調が悪いと公務を休んでいる婚約者が心配だということを言い訳に、自分はこの現場からいなくなると伝える。

おそらくその方が早く仕掛けが完成するだろう。


「では宿までお送りします」


領主は宿に迎えに来た馬車をすぐに呼び寄せて、フランツと共に馬車に乗り込んだ。

そして来た道を使って宿に着くとフランツを馬車から降ろして、自分は仕事があると領主はその馬車で現場に戻っていった。



アリシアと昼食を食べながら、フランツはアリシア明日も一日外に出ないようにと伝えた。


「あの……フランツ様は大丈夫ですか?」


さすがに足手まといにはなれないと、外に出ないことを快諾したアリシアだったが、さすがにこのような予定が続くと不安になる。


「明日か、明後日には落ち着くはずだから……」

「わかりました。……くれぐれも無理はなさらないでください」


アリシアは話せるようになるまで詳細を聞かないことにした。


「ごめん。ありがとう」


アリシアのやさしさに感謝をしながら昼食を済ませると、フランツは一度部屋に戻った。

そしてエルの話を元に、仕掛けられた罠の内容をまとめ、夕方前に一人で宿の抜け出すと、罠の仕掛けられている方の穴へと向かうのだった。

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