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溺愛王子の許嫁  作者: まくのゆうき


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お茶会への招待

夜会を終え、課題に追われていた日々が過ぎた頃。

アリシアとマリーのもとに招待状が届いた。

授業から部屋に戻る際、寄宿舎宛に届いた手紙を一緒に受け取った二人は、一度部屋に戻り、それぞれ封筒の中身を確認してから食堂で夕食を取ることにした。


「アリシア、私のはお茶会の招待状だったわ」

「マリー、私もよ」


席について注文を終えると早速内容について確認を行った。

人の目があるため、誰からということは言わずに会話を続ける。


「お断りできないかしら……こんなに気をまわしていただいても、どうしていいのか。本当に連絡が来るなんて……」


ため息交じりにアリシアが言った。


「そんなに気負わなくてもいいんじゃない?私的なお茶会みたいだし」

「マリーはアレク様がご一緒だからいいかもしれないけど」

「アリシアはもしかしてお相手が不満なの?」

「いいえ、そうではないのよ。本当ならパートナーを伴って行くようなお席ということなら、やはり遠慮するべきかと……」


アリシアの言葉を聞いてマリーはクスクスと笑いだした。


「そんなことないわ。アリシア一人を誘うと来てくれないと思ったんじゃないかしら。私が一緒なら私が連れてきてくれると思っているのよ、きっと」

「そんなことは……」

「じゃあ、アリシアは私とアレク様が欠席するって言っても一人で参加するの?」

「……しないと思うわ」


食事がテーブルに並び始めたため二人は食べながら続けた。


「そういえば、アリシアって浮いた話を聞かないわよね。お相手がいてもおかしくないのに」

「それは、ちょっと説明が難しいのよ」


自分でもわからないことを相手に説明するのは難しい。

アリシアは自分に仮の婚約者がいることを話すかどうか悩んで口ごもった。


「家同士のことだから色々あるというのはわかるわ。正直今は言えなくても、そういうお話があるみたいだから安心した」


マリーはそう言ったきり、それ以上この話題に触れることはなかった。

しかし、現実から目を離してはくれなかった。


「で、お茶会なんだけど、アリシア、まずは早く出席のお返事を出しましょう?私も出すから一緒に。ね」


マリーのかなり前のめりな発言にアリシアは困惑しながら聞いた。


「ねぇ、マリー、アレク様には確認しなくていいの?」

「ん?大丈夫よ?フラ……じゃなくて、主がアレク様も一緒にって誘っているお茶会だもの。彼らは私たちの返事を待っているだけよ。予定は間違いなく空けてあるわ」


満面の笑みを浮かべたマリーに、アリシアは逃げられないことを悟ってため息をついた。


「仕方がないわね。私も出席の返事を出すことにするわ」


最後のお茶を飲み終えると、アリシアは部屋に戻ると言って食堂を後にした。



一方フランツの執務室では、手紙の返事を今か今かと待ちながらそわそわしているフランツがいた。

一見、いつも通り机の上の書類をにらみながら作業をしており、受け取るしぐさも変わらないが、周囲から見えていない足元に落ち着きはなく、人が出入りするたびに勢いよく立ちあがってしまうのではないかというくらい気を張っていた。

その様子をアレクは楽しそうに眺めていたが、人の出入りが落ち着き、部屋に二人だけになったところで口を開いた。


「何をそんなに焦っているんですか?」


予想外の言葉だったのかフランツは驚いたようにアレクの方を見た。


「焦って……いるのか?」

「森の辺境を訪ねてから五年はじっとしていたじゃないですか」

「そう……だな……」


アリシアが王都上級学校に通い始めてから、フランツが急速にアリシアに接近しようとしていることがアレクの悩みの種だった。

渡り廊下で一連の嫌がらせを見たあの時ですら、自分の立場をわきまえて飛び出していかなかったフランツが、今回彼女を目の前にして起こした行動は冷静さを保ったものではなかったように感じたのだ。


「あなたにとってはずっと焦がれていた相手かもしれませんが、彼女からすれば先日の夜会が初対面なんですから、あまり接近すると委縮されてしまいますよ?」

「ああ、まあ、そうなんだが……やっと、動けるのかと思うとな。本当ならもっと早く進められるはずだったんだ」

「確かに、あれだけ招待を送ったのに参加しないとはこちらも想定外でしたが、かえってよかったのではありませんか?」


アレクはフランツの心の内を読み取ったかのようにニヤリと笑みを浮かべて続けた。


「見えないところで彼女に他の男が言い寄って手を出していたら……」


途中まで聞いて想像したのだろう。

フランツはその言葉を遮るかのように、書類の束を机に叩きつけた。


「幸いあなたにチャンスがあるということです。それを活かして穏やかにアプローチしてください」


アレクはそうなることが分かっていたかのように、大きな音にひるむことなく冷静に諭した。


「お前は本当に同じ年なのか……。そうだな、この件に関しては先を行くお前の忠告をしっかり胸に刻んでおく方がいいのかもしれないな」


フランツはアレクを睨みつけてから、再び書類に取り掛かるのだった。



カラッと晴れて雲ひとつない晴天となったお茶会当日。

アリシアは先日の夜会の際に手伝ってくれたマリーの侍女たちに囲まれて準備を進めていた。

マリーはアレクが迎えに来ることになっているため、準備を早々に終わらせており、その足で侍女と共にアリシアの部屋に押し掛けていた。


「マリー、少し落ち着いて?」

「だって、嬉しいんだもの。アリシアと一緒にお茶会に行けるのが」


マリーは踊りだしそうなステップで部屋の中をうろうろしながら興奮気味に言った。


「私は楽しむ余裕がないわ。緊張しすぎて」

「私的なお茶会だって言われているし、そんなに難しく考えなくていいんじゃないかしら?」

「そう言われても、私はマリーと違って社交には不慣れだもの」

「じゃあ、私を頼りにしてちょうだい」



結局マリーはアリシアの準備が整い、アレクの迎えが来るまでそわそわしていた。

寄宿舎の前に用意された迎えの馬車が到着したと受付から連絡が入ると、二人は部屋を出ることにした。

マリーがアリシアの手を引っ張ってせかしている。


「お待たせいたしました」


二人はアレクに軽く挨拶を済ませると、手を借りて馬車に乗り込んだ。

マリーがアレクと楽しそうに会話をしているのを聞きながら、どうにか自分を落ち着かせようとアリシアは無言で外を眺めているのだった。

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