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溺愛王子の許嫁  作者: まくのゆうき


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王宮からの招待状

春に入学した王都上級学校の生活に慣れた夏のある日。

いつも通り授業を終えたアリシアがマリーと一緒に寄宿舎へ戻ると、受付で声をかけられた。


「アリシアさん宛にお手紙をお預りしています」


そう言ってアリシアに一通の封筒を手渡した。


「ありがとうございます」


アリシアは封筒を受け取ると、すぐにカバンにしまってマリーと一緒に二階に向かった。

自室に戻ったアリシアはカバンから封筒を取り出して差出人を確認した。

……今度は王宮からのお誘いなのね。

蜜蝋の封の種類から察したアリシアは、念のため封を切って中身を確認した。

内容はアリシアが予想した通り、夜会への招待状であった。

アリシアは招待状を封筒に戻すと、引き出しの中にしまった。


アリシアには貴族コースに入学してからというもの、夏以降に行われるお茶会や夜会への招待状が頻繁に届くようになっていた。

アリシアがマリーにその話をすると、自分にも同じように招待状がたくさん届いている、王都上級学校の生徒は優秀だということで、どこの貴族も繋がりを求めてダメ元で招待状を送っていると教えてくれたので、気にしないことにしていた。

ちなみにマリーにはすでに婚約者がおり、必要に応じて彼と相談の上で夜会に参加しているという。

アリシアはパートナーとなる相手が王都にいない上、本人が社交にあまり興味がなかったことが重なり、進学してから一度も招待を受けたことがなかった。

もともと父親にも、夜会やお茶会は招待であって参加は義務ではないと言われていた。

さらに、親族以外の異性を伴って公式の場にも行かないようにと。

つまり、仮にパートナーを伴って夜会に参加することになると、父親か弟に森の辺境から王都へ来てもらわなければならないということになるが、弟はまだ成人前なこともあり、実質、父親に頼ることになるのである。

アリシアは念のため、どこから、どのようなお誘いが来たかだけはまとめていた。

いつか社交の場に参加した際にどこで彼らに出会い、話を振られるかわからないからである。



さらに時は過ぎ、王宮の夜会が開催される数日前になった。

季節は夏から秋に変わる頃である。


「そういえば、アリシアも招待されてたわよね」


寄宿舎の食堂で久々に食事が一緒になったマリーがアリシアに尋ねた。


「何かしら?特にお受けした招待はないけれど……?」

「……え?でも……」


いい淀んだマリーにアリシアは聞いた。


「どうしたの?」

「アリシア、王宮から夜会の招待状って来てなかった?一緒にいる時に受け取ってた気がしたんだけど。私が受け取ったのと同じ封筒だったし、タイミングが一緒だからてっきり……」

「ああ……招待状はいただいてるわ」


マリーは自分だけが招待されていたら、そのことが自慢に聞こえてしまうのではないかと不安だったが、そういうことではなかったことに安堵した。


「よかったわ。私の勘違いかと思って驚いちゃった」

「ごめんなさい。でも、夜会には参加するつもりないし、あまり気にしていないから大丈夫よ?」


アリシアは普通に答えた。


「ま、待って、アリシア!もしかして、王宮の夜会にも行かないつもりなの?」

「ええ。大きい夜会だけれど、パートナーがいないし、社交もまだ必要ではないし、異性との出会いを求めているわけでもないから行かないつもりよ。話しかけてくださったお相手の方にも申し訳ないし」


アリシアは自分のやる気のなさで参加するのは申し訳ないと思っていた。

王宮の夜会であれば、そこに出会いを求めている人は多いはずだが、自分と繋がることがメリットになる人は少ない。

領地は父親であるクレメンテが管理しており、将来家を継ぐのは弟である。

その娘、姉との繋がりはあまり必要ないだろうし、アリシアには仮であっても婚約者とされる相手がいるのでなおさらである。


「アリシア、もしかして、王宮のお茶会も招待されてた?」


マリーは春に行われた庭園のお茶会についても気になってアリシアに質問すると、


「そうね、確か入学式が終わって間もなく、いただいたと思うけれど、参加する予定はなかったわ」


という簡素な返事が返ってきた。

あまりにも潔く王族からのお誘いを断っているアリシアに、マリーは次の言葉を出せずにいた。

急に無言になってしまったマリーを気にかけてアリシアがマリーに声をかけた。


「マリー?」

「あのね、アリシア」

「なに?」

「今度の王宮のパーティなんだけど、一緒に行ってほしいの」


城下町にお出かけするのとは違い、準備の必要なパーティについてきてほしいと頼むのは勇気のいることだ。


「どうしたの?急に」

「アリシアに、紹介したい人がいるの」

「私に紹介?」

「そう。私の婚約者なんだけど……」


そこまで口にするとマリーは恥ずかしそうにうつむいた。


「婚約者が同じ会場に行くなら、婚約者がエスコートするでしょう?私が行ったらお邪魔だわ」

「一緒には行けないから……」

「どういうこと?」

「私の婚約者、実は王族の側近なの。だから王宮の夜会は彼も警備とか色々あって一緒に行くことはできないの。邪魔はしたくないけど、お仕事している姿を見たいなって……」


状況を理解したアリシアは言った。


「わかったわ。……でも、私、夜会とか参加経験ないけれど、一緒に行っても大丈夫かしら?」

「え?確かに王都の夜会で会ったことはないけど、アリシアって辺境領では夜会に出ていたんじゃないの?」

「いいえ。学校行事と一緒にデビュタントを行ってからは一度も参加していないわ」

「ウソでしょ……?学校でマナーもダンスもトップの成績を修めてるアリシアが?」

「学校は授業だもの。言われてことができればいいだけだわ。それに社交の場はちょっと……」


領地での社交は学校のことがあるため当然参加していなかった。

マリーも途中で気がついたのか少し口ごもったが、急に立ち上がると、


「やっぱりもったいないわ!場数は踏んだ方がいい!絶対!」


と、語気を強めて言った。


「ええ。マリーの婚約者様をご紹介してもらうために参加させていただくわ。当日はよろしくね」


勢いに押されそうになったものの、すぐに笑みを浮かべてアリシアは言った。


「ありがとうアリシア!」


口元に手を当てて目を輝かせながらマリーは叫びださないよう声にした。

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