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溺愛王子の許嫁  作者: まくのゆうき


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丘の上の教会

教会に向かう途中の道でマリーが思い出したように言った。


「あのね、言い忘れていたんだけど……」

「なに?」

「教会がちょっと小高い丘みたいな場所になってるの。だから階段をたくさん登らないといけないのよ」


マリーはアリシアに靴や服のことは伝えたけど階段のことは伝えていなかったのである。


「大丈夫だと思うわ。マリーは上ったことがあるのでしょう?」

「ええ」

「とりあえず階段まで行ってみましょう。せっかくだもの。休憩もしたから大丈夫よ」


言いだした時、マリーは申し訳なさそうにしていたが、アリシアが大丈夫だと言ったことで安心したようだった。



階段の下までたどり着いて、マリーは立ち止まった。


「これなんだけど……」


マリーは一緒に立ち止まって階段を見上げたアリシアの顔を横目でチラチラと見ていた。


「大丈夫よ?行きましょう」


そう言うとアリシアは階段を上りはじめた。


アリシアのことを心配していたマリーだったが、アリシアは息を切らせることなく階段を上っていた。


「アリシア、体力あるのね……」

「そうかしら?でも、森に入ったら変なところで休憩できないから」

「えっ……?」


心配していたマリーの方が上るのが大変だったようである。



階段を上りきって振り返ると、王都の町並みが一望できた。

王都の城下町はたくさんのお店や家があるものの、高い建物があまりない。

二階以上に部屋がある建物は王宮くらいなのだろう。


「素敵な眺めね」

「そうなの!ここからなら王都の街が一望できるのよ!」


見下ろした先には先ほど立ち寄ったカフェのパラソルや、ガラス張りの大きなドーム状の建物、学校や王宮のようなわかりやすいものが目についた。

道をよく見ると人が動いているようすも見える。

見渡しても森の辺境領の塔のようなものは確認できなかったので、おそらくこの場所が周辺で高い位置にあるのだろう。


「教会の中も素晴らしいのよ」


マリーのおすすめということで、アリシアも教会の中に入ることにした。



外はまだ日が高く明るいにもかかわらず、中は荘厳で暗く静かだった。

扉を開けた正面とサイドにあるステンドグラスから入る光だけが中を照らしている。

通路の左右には長椅子が配置されており、中央の通路を進むと祭壇がある。

祭壇の左右は一段高くなっており、そこで聖歌の演奏と合唱が行われるようだ。

目が慣れてくると、祭壇にだけは白い光が差し込んでおり、天から光の導きがあるかのように工夫されているため、祭壇に当たる部分のガラスには色が付いていないということが分かる。


「どう?」


教会内部は音が響くのでかなり小声でマリーは話しかけた。


「とても幻想的で落ち着くわ」


アリシアは答えると、近くの椅子の通路側に腰をかけた。

マリーは通路の反対側に座る。


しばらく二人は黙って休憩しながらその光景を眺めていたが、遅くなってはいけないので程よい休憩をしたところで教会から静かに外に出た。



教会を出たアリシアは改めて外側から建物を見た。

さっきは教会を背にして王都の景色ばかり眺めてしまい、きちんと見ていなかったのである。

教会の外側は白壁で、少し離れて上部を見るとステンドグラスが見えた。

スデンドグラスの壁の部分は、少し斜めになっており、中に入る光がより美しくなるように考えられているようだった。


「お昼は中の方が幻想的なんだけど、夜は外から見ると教会の中の光が外に溢れていて教会が浮かび上がったように見えるの。新年のお祈りの時は特に素敵なのよ」


と、外側を眺めているアリシアにマリーが言った。

マリーは新年になると家族でこの教会へ足を運び、祈りを捧げているのだという。


「とても静かで落ち着く教会だったわ。外側から見た時は明るい神殿のような場所なのかと思ってしまっていたから、中があんなに神秘的な空間だと予想できなくて驚いてしまったわ」

「そのギャップもいいのよ」


自分のお気に入りの場所を案内できたことに満足したマリーは声を弾ませた。


「まだ明かるけれど、そろそろ戻った方がいいのかしら?」


教会の周囲を見て歩いて、再び街の景色を眺めながらアリシアが言った。


「そうね。暗くなってからは広い道でも治安が悪くなってしまうから、早めに戻りましょう」


女性二人で何かあってはと、マリーは早めに戻るという判断をした。



階段は若い二人には下りの方が楽に進むことができた。


「上りの時が嘘みたい」

「そうね」


マリーは上っている時とは違い足取りが嘘のように軽い。

アリシアは疲れを感じさせない足取りでマリーのスピードに合わせて下っていく。

階段の最後の一段を下りると、二人は振り返って教会の方を見上げた。


「この教会はしたからだと見えないのね。高い所にあるのに、街からも学校からも気がつかなかったわ」

「言われてみればそうかもしれないわ。あることを知っているから気にしたことがなかっただけかもしれないけど」

「この教会はわざと見えないように建てられたのかもしれないわね」

「今度来た時は、教会のことも気にしてみるわ。違うところからなら見えるかもしれないし」


二人は教会に背を向けると、学校に続く広い道まで戻っていった。



行く時にはよく見ていなかったが、帰りにゆっくり見ていると、この道にもたくさんのお店が並んでいた。

中央の通りほど大きい店はないが、小さいお店が身を寄せ合うかのように並んでいる。

予定より早くすべてを見て回ることができたため、まだ明るいということもあり、二人は広い通りの片側の道でウインドウショッピングを楽しむことにした。


「学校の近くでも充分に必要なものは揃うのね」


改めてお店を見ながらアリシアは言った。


「そうみたいね。小さいお店が多いけど、必要なものはこの通りでも揃えられそう」


案内役をしていたマリーも、この道は馬車で通っているだけで、どのお店にも入ったことがなかった。


「今度はこの道のお店をゆっくり見て回りたいわ。学校の近くで必要なものが買えるお店を覚えておいたら便利だもの」


アリシアたちは一軒一軒立ち止まりながら、お店の情報をできるだけ頭に入れながら戻ることにした。

城下町が離れるにつれ学校に近づいていく。


「今日は楽しかったわ」

「私も」


校門の前で二人はそんな会話をすると、一緒に構内に足を踏み入れた。

そして二人で寄宿舎に戻り、それぞれ荷物を部屋に置いて夕食までの時間を過ごすことになった。

こうしてアリシアは初めての城下町散策を楽しく終えたのだった。

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