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溺愛王子の許嫁  作者: まくのゆうき


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王都上級学校入学

エルからアリシアが王都上級学校に入学することが伝えられ、フランツがあれこれ考えを巡らせている頃、無事に寄宿舎に荷物を運び終えたアリシアとマリーは部屋を出ると食堂の場所を確認すべく、受付に立ち寄っていた。

新入生が二人できたということで、食堂の場所だけではなく、寄宿舎のルールについても簡単に説明を受けることができた。

一人ずつでは面倒だが、一緒にきてくれたので説明が一度で済んで嬉しいということだった。

二人が説明を聞き終えた足で食堂に向かうと、二人で使うサイズのテーブルとイスがたくさん並べられているところに出た。

椅子も机も自由に移動させることができるため、大人数の時はつなげて使うことができ、少人数の場合は話しておけば、他の人と距離がとれるようになっている。

寄宿舎を利用している生徒の数の数倍の席数があるが、許可があれば家族と一緒に食事をしたりお茶を楽しんだりするスペースとして利用することもできるという。

好きな席に座って注文をすると給仕が開始される仕組みである。


「注文するという仕組みは初めてで戸惑ってしまいます」


アリシアはメニューから夕食を選んでから言った。


「自分で選んでお皿に取っていくか、すでに決められたものが出てくるかが多いですものね」


マリーもメニューから注文するという仕組みで食事をすることはあまりないという。


「ですが、街のお店などはこのスタイルが多いそうですから、ここで練習しておけばスムーズに街で食事を楽しめるかもしれませんね」

「そうですね。それに、こちらで毎日お食事をいただくのですから、こちらのやり方に慣れた方がいいですよね」


その日、初対面の二人は不慣れなスタイルの食事をぎこちなくいただくことになったのだった。



寄宿舎への引越しを終えた三日後。

王都上級学校の入学式が行われた。

アリシアとマリーは初日に夕食を一緒に取ってから行動を共にするようになっていた。

王都上級学校は各コース1クラスずつしかない。

偶然にも、マリーとアリシアは貴族コースを選択していたため、コースごとに分かれて着席する入学式の席でも隣に座ることができた。

全校生徒が集まったところで、校長の挨拶、学校の規範などに関する説明など、入学式の内容は地味なものであったが、学校全体で入学を歓迎しているという華やかな空気が漂っていた。


その後、コースごとに分かれて担当者が学校の内部を案内し、最後に案内された教室でさらに今後二年間で行われるコース授業の内容について説明を受けて解散となった。

説明によると、一部の授業を除き、基本的には最後に案内された教室で授業が行われるということ、これから卒業するまでの二年間、クラスメイトの顔ぶれは変わらないということであった。



「アリシアと同じコースでよかったわ。改めて二年間よろしくね」

「こちらこそ」


解散後、アリシアとマリーは校舎から寄宿舎へ戻るため、構内の道を一緒に歩いていた。


「荷物を教室に置いておけるなんて楽でいいわね」

「そうなの?私は前の学校も同じようにしていたから、そんな風に考えたことなかったわ」


何気なくアリシアが言うとマリーは不思議そうにしていた。


「ええ、初等学校は授業ごとに教室を移動しなければならないし、クラスというものはなかったので、荷物は毎日必要な教科のものを家から持っていかなければならなかったの。授業も選択制だから同じ年に入った人とずっと同じ授業を受けるわけではなかったし」

「そうなのね」


違う制度に興味があったのか、マリーはその後もアリシアの学校や森の辺境について色々質問してきた。

アリシアは森の辺境領に興味を持てくれるマリーにわかりやすく説明していく。


「アリシアは自領が本当に好きなのね」


知らない土地の話を聞いてマリーは目を輝かせていた。


「私は王都から比較的近いところに住んでいるから、王都にもよく来ていたし、珍しいものがないの。アリシアの話を聞いていたら、すぐには無理だけど、ぜひ森の辺境領にもお邪魔したいと思ったわ。その時は案内してね」

「もちろん。喜んで案内させていただくわ」


その後もアリシアとマリーは寄宿舎の部屋に戻るまで、楽しく会話を続けたのだった。



入学した翌日から、早速授業が開始された。

森の辺境領の初等学校とは異なり、授業にまじめに取り組む生徒しかおらず、アリシアは初等学校との違いを強く感じていた。

休憩時間に教室に居ても、特に嫌がらせや不快な言葉が飛ぶこともない。

おかげで安心して授業に集中できる穏やかな日々を送ることができていた。

これが本来の学校生活であるべきだったが、アリシアの生活していた環境が特殊だったため、彼女にはこの平穏な学校生活が幸せであった。


隣の部屋になったマリーは持ち前の明るい性格で、クラスにスムーズに馴染んでいた。

王都から近い領地の貴族と言うこともあり、社交で何度か顔を合わせたことのある人がクラスメイトにいると、マリーがアリシアに伝えていた。

それでも比較的アリシアとマリーは行動をともにしていたため、アリシアにもマリーを通じた友人が増えていった。


授業開始から数日後、一緒に食堂で朝食をとっている時、アリシアはマリーにお礼を言った。


「マリー、本当にありがとう」

「え?」


何をしたかわからないマリーがきょとんとした顔をしたのを見て、理由を加えた。


「マリーのおかげでクラスで話せる人が増えたわ」

「そうなの?」


自分のおかげという認識がないマリーが不思議そうな顔のままアリシアを見つめていた。


「二年間顔を合わせる人たちと気まずい関係になったらって不安だったの」

「アリシアが他の人たちとトラブルになるとは思えないんだけど……?」


アリシアは少し考えて、初等学校当時の話をすることにした。

妖精と話ができるということは伝えず、成績が良かったことで濡れ衣を着せられたこと、暴力的ないじめを受けたこと、そして、いじめの対象になっていたため友達がいなかったことを話した。


「……それって、アリシアは悪くないんじゃ……。ほとんどアリシアに対する妬みのようにしか感じないわ」


マリーの言っていることは正論だが、アリシアにとっては複雑だった。

アリシアは嘘は言っていない。

ただ、彼女に隠していることはあるのだ。


「でも、小さいころからその生活だったら確かに学校生活は不安になるけど、話せる人が増えたのは私のおかげってことじゃないと思うの。もうちょっと自信もっていいんじゃないかしら?」


今度はアリシアがマリーを見つめる番だった。

でも、妖精の話から始まった嫌がらせの数々で、常におかしな発言をしているのは自分なのだと言い聞かせられてきた。

嘘ではないが、認められることはない、仕方がないのだとどこかで諦めていたのかもしれない。


「ありがとう。頑張ってみるわ」


アリシアがそう返すと、マリーは笑顔で答えたのだった。

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