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溺愛王子の許嫁  作者: まくのゆうき


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寄宿舎での出会い

父の友人である商家の家に一泊し、無事に王都に辿り着いたアリシアたちは、都の街の大きさに圧倒されていた。


「すごく整った街並み。建物の数も、人の数も桁違いだわ」

「国の中心ですから、仕事もたくさんありますし、お店の数も比べ物にならないですね」


アリシアは父とともに何度も来ているという御者に説明を受ける。

街の門をくぐってから、大きな通りを学校に向けて馬車で進んでいた。

人が多いので郊外を走るのとは違い、人が多いためスピードはかなり落としている。


「お嬢様、この道は王宮に向かうにも学校に向かうにも便利なように、わざと街の中心にあるんですよ。もし道に迷ったら、この通りに出てから考えることをおすすめします。昼間なら人も多くて比較的安全なんで。間違っても裏道は入らないでくださいね。学校は人通りの多い広い道だけで行けるように整備されてますから」


大きい通り沿いの建物と建物の隙間に確かに通れそうな空間がある。

裏道とはこれだろうか……?

などと考えながら、まずは門から学校までの道を覚えることに専念した。



中心の通りから一度、広い通りを曲がってまっすぐ行った先に学校の門はあった。

門の前にはすでにいくつかの馬車が見える。

おそらく今日、寄宿舎に荷物を運びこむ予定の人の馬車だろう。

警備の人が積み荷などを確認すると、馬車ごと中に入っていく。


「学校には馬車ごと入れるのね」

「ここから寄宿舎に家具を運び込むのは大変ですからね」

「家具を運ぶ方もいらっしゃるの?」


寄宿舎の案内では最低限の机やベッドなどが揃っていると書かれていたため、アリシアは自分のものを持ち込むことは考えていなかった。

それに基本、寄宿舎は関係者以外立ち入り禁止で、立ち入る際には身元を証明する必要があるとされていた。


「そりゃ、まあ、王都上級学校に通っているのは皆さま貴族ですからね。こだわりのある方もいますし。比べるならお嬢様はかなり荷物が少ないように思います」

「私一人で運ぶつもりだったから。関係者以外は寄宿舎の中には入れないでしょう?」

「基本的にはそうですが、その日のうちに荷物を運びこまないといけないんで、運び込みの日は許可を取って業者や従者が総出で頑張らないといけないですよ。たいてい入学予定の生徒はその日からそこに宿泊しますからね」

「そうなの。じゃあ、一緒に運んでもらっていいかしら?」

「もちろんですよ」

「私も運べば一往復で終わりそうね」


そんな雑談をしていると、順番が回ってきた。

前の人たちと同じように、身元を確認され、荷物の説明を求められる。

積み荷が少なかったこともあり、すぐに問題ないと判断されたアリシアたちの馬車は、警備の人に寄宿舎の前まで誘導された。



上級学校の構内は森の辺境にも劣らない広さがあるようだった。

門からは整備された道が続いていて、道に沿って馬車を走らせることができるようになっている。

校舎を横目に見ながら進んでいくと、その奥にお屋敷のような建物が二棟見えてきた。

お屋敷にしては窓が多いところを見ると、窓の数が部屋の数なのだろう。


「こちらが寄宿舎です」


歩いて馬をひいて案内をしてくれた警備の人が言った。

建物が二棟あるのは、男性と女性で建物を分けているからだが、近くに建てられているのは生徒を警備する都合らしい。

森の辺境の寮は、中の構造で部屋が分かれているので異性の生徒が居室に入ることはないが、食堂などは一緒に利用するし、交流するための場所も設けられている。

森の辺境にある寮の構造を知っていたアリシアは、寄宿舎も同じような構造だと思っていたため建物が違うということを意外に感じていた。


御者が寄宿舎の受付で再度身元の確認を受け、その流れで運び込みの許可を取ってくると、馬車に戻って早速荷物を下ろし始めた。

アリシアが手伝うために馬車を降りようとすると、それに気がついた警備の人がそれとなく手を差し伸べた。


「あ、ありがとうございます」


そのまま飛び降りてしまおうと思っていたことが分からないように、アリシアはエスコートを受けて馬車を降りた。


「お嬢様のお部屋は二階だそうですよ」


すでに荷物を抱えている御者が荷物越しにアリシアを見て言った。


「そうなのね。私はこの鞄だけでいいのかしら?」


御者の足元に置かれた旅行用の大きめな鞄を手に取る。


「それだけどうしても持てなかったんでお願いします」

「わかったわ。むしろもう一つくらい私が持ってもいいのだけれど……」

「いやいや、それはだめですよ。じゃあ行きましょうか」


御者が荷物を抱えて歩き始めたので、アリシアは後に続いて寄宿舎の中に入っていった。



アリシアの部屋は二階の角部屋だった。

中はシンプルにベッド、机、椅子が二脚ほどついた小さなテーブル、クローゼットがあり、窓は出窓になっている。

そして質何に簡易キッチンとトワレがついているので夜中でも外に出る必要がなさそうだった。


「生活するには充分すぎるお部屋だわ」


荷物を持った御者より先に扉を開けて中に入ったアリシアは、感嘆の声を上げた。


「お嬢様、荷物どこに置きましょうか?」


ふらふらと続いて入ってきた御者が荷物を持ったまま部屋の中をさまよっていた。


「とりあえず、ベッドの横に置いてもらえるかしら?」


やっと位置を決めてもらった男は、所定の位置に荷物を下ろす。


「じゃあ、私は戻りますね。何か伝言とかありますか?」


彼は休むこともなく王都を出発し、出発した町まで戻るという。


「無事に着いたってことだけ伝えてもらえれば充分だわ。少し休んでいってと言いたかったのだけれど……」


荷物を運んだだけで、おもてなしの準備などは何もできていない。

お茶をするにも荷物を解かなければならないのだ。


「大丈夫ですよ。こうなることはわかってましたから。せっかく早く着いたんですから荷物は今日中に梱包を解いて整理してしまうといいですよ。それだって夕食までに終わるかどうかわからないですからね」


腕や肩をまわして体を慣らしながら御者は言った。


「詳しいんですね。とてもスムーズにここまで来たことに驚いています」


アリシアは疑問に思っていたことを口にした。


「ああ、私もここに通ってましたからね。お嬢様の先輩になるんですよ?私はクレメンテ様と同じ騎士コースにいましたけど、騎士という仕事は私には合わなくて。しばらくは王都で騎士をしてましたが、彼が辺境領に戻る時に騎士をやめてついていくことにしたんですよ。と言っても、女性の寄宿舎に入ったのは初めてですけどね」


クレメンテが御者一人しかつけずアリシアを出したのは、クレメンテが彼の人柄だけではなく、腕に関しても信頼を置いているということを改めて理解した。


「その節は父がお世話になりました。何かとご迷惑をおかけしたのでは……」

「昔話はお嬢様が領地に戻られた際にゆっくりお話しできればと思いますがいかがでしょう?」

「ぜひお願いします」


これ以上遅くなってからの馬車の長距離移動は危険だからと話を打ち切って御者は部屋を出ていく。

アリシアは彼の後を追って部屋を出て入口までついていき、お礼を言って見送った。



見送りを終えたアリシアは部屋に戻るため二階の自分の部屋に向かって行った。

すると、先ほどは開いていなかった隣の部屋のドアが開いていた。

荷物を運びこむために開けているのだろうが、中をのぞくのはよくないと考えたアリシアは、静かにその部屋の前を通り過ぎようとした。


「あら、お隣の方かしら?」


部屋の中から声がして、外に駆けてくる音が聞こえた。

アリシアは思わず足を止めて部屋の方に体を向けた。


「初めまして。私はマリー。今日からこの部屋に入ることになったの」

「初めましてマリー様。アリシアと申します。私も今日来たばかりで、先ほど荷物の運び込みを終えたところです」

「アリシア様ですね。私のことはマリーって呼び捨てでいいわ。よろしかったら今日の夕食、ご一緒できないかしら?初めてのところだから不安なの」

「私のこともアリシアと呼び捨てで構いません。せっかくですからぜひご一緒させてください」

「ありがとう。楽しみだわ。アリシアはそのまま夕食に向かえそうなのよね。すぐに準備して、アリシアのお部屋を訪ねていくから待っててもらっていいかしら?」

「わかりました。私も荷物の整理がまだなので、お部屋でお待ちしています」


二人は一度別れ、それぞれの準備を整えると、食堂に向かって行ったのだった。

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