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溺愛王子の許嫁  作者: まくのゆうき


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迷い人との再会

視察から館に戻ったアリシアとフランツは、別れてそれぞれの部屋に戻り、各々休憩を取ることにした。

炭鉱の時のような強制ではなく、二人に不参加の選択肢を与えたり、領主の自慢を目的としないところに好感を持てる。


「アリシア、疲れていないかい?砂漠は歩きにくいし、砂は熱いし、立っているだけでも体力を使ってしまうからね。ぎりぎりまで休んでいた方がいいよ」

「はい。ありがとうございます。先ほど、砂漠で意識が朦朧としてきましたので門まで戻りましたが、目印を見失ってしまっていたら戻れなくなるということを身をもって感じました」


意識が朦朧としたという言葉を聞いて、フランツは語気を強めた。


「それならなおさら、冷たい飲み物を取って少し休んで。もし夜会も難しいなら僕が一人でいけばいいんだから」

「いえ、そういうわけにはいきません。それに少し休めば大丈夫だと思います」


公務はきちんとこなすと決めているアリシアはフランツの申し出を断った。

炭鉱でのこともある。

フランツも同じ条件なのだ。

公務を休んで守られているだけの立場でいるわけにはいかない。


「わかった。じゃあ、飲み物を飲んでゆっくりしていて。時間になったら迎えに来るから。その時までによくなっていなかったら夜会に出ないで休んでいてもらうからね」

「わかりました」


アリシアは自室に戻ると、本人が感じていた以上に疲れが出たのか、一度ベッドに体を沈めるとなかなか起きることができなくなった。

アリシアはそのまま深い眠りに落ちていった。

それはフランツも同様で、二人は準備を始めるぎりぎりの時間までしっかりと睡眠を取ることになるのだった。



数時間後。

準備を整えると夜会の行われているホールへ向かうため、時間になるとフランツはアリシアの部屋を訪ねた。

アリシアもすでに準備を終えて部屋でフランツが来るまで待機していて、すぐに部屋を出ることができる状態だった。

そんなアリシアを見て、少し心配そうにフランツは苦笑いを浮かべた。


「アリシア、ゆっくり休めたかい?」

「はい、おかげさまで、戻ってからすぐに眠ってしまいました。フランツ様は大丈夫ですか?」

「僕も同じだよ。ぎりぎりまで休んでいたからすごく体が楽になった」


ゆっくりと休むよう早めに視察を切り上げてくれた領主は、外から来た人間が慣れない土地、歩きにくい砂漠で疲れやすいことを知っていたのだろう。

短時間とはいえしっかりと睡眠を取った二人の疲れは相当取れて楽になっている。


「領主のお気遣いに感謝しなければなりませんね」

「本当だな」


ホールの前に着いた二人は、一度顔を見合わせて気を引き締めるとホールの中に入っていくのだった。



ホール内で人々の挨拶を受け取っていたフランツとアリシアのところに、騎士が伝言を持ってきた。

アリシアと話がしたいという男性の客人がいるということである。

身なりなどを説明されるがアリシアには心当たりがない。


「知り合い?」

「分かりません……。どうしましょう」


アリシアは困惑しながらフランツの顔を見上げた。


「僕もいるから一緒に行ってみよう。ここの領主が変な人を会場に入れているとは思えないからね。会場内にいる人なら信用していいだろう」

「そうですね。よろしいですか?」

「もちろんだよ」


二人は伝達をしてくれた騎士についていくことにした。

騎士は柱の近くに立っている一人の男性を指して言った。


「あちらの方でございます」

「わかった。ありがとう」

「ありがとうございました」


二人がお礼を言うと騎士は仕事に戻るため二人の前を後にした。


「どう?」


目視したらわかるかもしれないと思ったが、やはり見覚えのない人物である。


「よくわからないですが、隣国の言葉を離されているようですね。お二人いらっしゃるのでしょうか?」

「そのようだね。そのうち左側の彼が呼んでいた人の身なりと一致するな」

「とりあえず、声をかけてみます」


アリシアは立ち止まって少し離れたところから隣国の言葉で声をかけてみることにした。


「あの……お呼びだと伺ったのですが……」


その声を聞いた男性はアリシアを見るなり駆け寄ってきた。

後ろから一緒に話をしていた男性が追いかけてくるのが見える。


「ああ、あなたです!お会いできて光栄です。先日は助けていただいてありがとうございました」

「いえ、私は何も……」

「この場所にあなたのような方がいてくれた。それだけで私には救いになりました」


突然のことで困惑しながらアリシアは聞いた。


「あの、どういう……」

「ああ、この格好では分からないですか。以前お会いした時はボロボロでしたからね」


砂漠で倒れていた時とは違い、しっかりとした身なりをしている。

それに加えてこの場に招待される、身元のしっかりした者だったようだ。

そして後から来たもう一人の男性は、どうやら通訳の人らしい。

二人の話している様子をフランツに分かるよう通訳してくれている。


「もしかして、砂漠の途中で倒れていた方ですか?」

「いや、あの時はお恥ずかしいことにあのような姿を見せてしまいまして」

「助けたのは私ではありません。私たちはたまたま見かけたので救出された後、面会に伺っただけなのです」


助けたのは見つけた門番で、たまたま街の様子を上から見ていたアリシアたちは、助け出された後に、このような者が砂漠を渡って現れるという説明を受け、その者たちを保護しているという小屋という理由で偶然に立ち寄っただけである。

アリシアが直接伝えたらけではなく、フランツが話した内容を聞いた通訳が、時折言葉を挟んで補足してくれたりしながら事情をできるだけ正確に伝えていくように努める。


「そうなのですか。では、その方はどちらにいらっしゃるのでしょう。是非直接お礼を言いたいのですが……」

「私もこの領地の者ではありませんのでお答えできませんが、聞いてくることは可能です」

「では是非ご一緒に。あなたに行ったり来たりさせるのは申し訳ないからね」

「では、こちらへ。おそらくこちらの領主がご存知かと思います。ですが安易に近づけるような方ではありませんので離れてお待ちいただくことになりますが……」

「構わないよ。その土地の有力者に知らない人間を近づけるわけにはいかないからね。賢明な方だ」


どうやら面会をするために待つのは慣れているらしい。

平民である商人は、貴族のところを訪ねた際、待たされることが多いということである。

アリシアとフランツが、領主のところに向かっても見える位置まで一緒に移動すると、二人もその後についてくる。


「ではこのあたりでお待ちください。私はあちらへ行ってまいりますので」

「よろしくおねがいします」


場所を決めて二人にそこで待つように言うと、アリシアとフランツは領主の元に向かうのだった。



アリシアとフランツは領主へ形式的な挨拶を済ませると、すぐに本題に入った。


「あの……、あちらの方が先ほど小屋で私たちが面会した商人の方なのだそうですが、自分を助けてくれた方に直接お礼を言いたいというのです。私ではどなたか分かりかねるのでお教えいただけないでしょうか?」

「彼らなら今はここにきております」


領主はアリシアの問いに答えると、次は騎士に命じた。


「悪いがそこの二人を呼んできてくれ」

「かしこまりました」


ほどなくして、門番をしていた二人が領主の前に現れた。


「お呼びでしょうか」


門番の時とは違い彼らもきちんと正装をしていた。


「どうも、君たちが助けた異国の者が君たちにお礼を直接言いたいと訪ねてきているのだ。ところで、今日助けた者はその後どうした?」

「はい、小屋で休息を取った後、やはり気が付いたら部屋にはいらっしゃいませんでした」

「そうか。わかった」


どうやら今日面会した彼も、他の人と同じように、隣国の通貨を置いて人のいない間に部屋から立ち去ったらしい。

そしてこうして通訳を伴いこの場所に現れたということになる。


「では、彼らの礼を受けてきなさい。彼は今回、夜会の客人として招待していた方なので礼を欠かないように」

「はっ!」


そう言って二人は敬礼した。

それから彼らの方に向かおうとする二人にフランツは言った。


「ああ、そうだ。彼には通訳が付いていますから、お二人だけで行っても言葉は通じると思いますよ」


フランツの助言に門番たちは顔を見合わせて安堵の表情を浮かべた。

言葉が分からなければお礼を言われているのか、他のことを言われているのか区別もつかないし、こちらの言葉も伝わらない。

そこに二人で行くのは不安だったのだろう。

少し足取りの軽くなった門番たちを見送ってから、アリシアは領主にお礼を言った。

そして、二人が領主の前から去ろうとすると、彼に引きとめられた。


「フランツ様、アリシア様、恐れながらこの場で我が愚息を紹介していのですが、よろしいでしょうか」


フランツは一瞬だけ視線を隣国の商人たちの方に向け、問題なく対応していることを確認すると了承した。


「わかった」


領主は再び騎士を伝令に出した。


「では息子をここへ来させますので少々お待ちください」


こうして二人は領主の息子が現れるのを待つことになるのだった。

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