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溺愛王子の許嫁  作者: まくのゆうき


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実力の立証

生徒と関わらず、学校では講師としかしゃべらない上、あまりにも授業成績が良いアリシアは生徒たちの妬みの対象となっていた。

そしてどこからともなく、講師陣に贔屓されているという噂を流されるようになり、アリシアは完全に孤立するようになっていた。


「あいつ、先生たちと仲がいいからテスト問題事前に教えてもらってんだよ」

「そうだよな。じゃなきゃあんなのが常に全講義でトップとかありえないよな」


在校期間が長くなり、レベルの高い授業に進んでいくにつれ、女生徒の人数は大幅に減っていった。

男性の大半はよい職を得るためにしっかりと勉強するが、女性は結婚してから男性の伴侶としてつつましく暮らしていくことが多いため、学は最低限でよいと考えられる傾向が強い。

家のならわしは家ごとに違うので、嫁いでから覚えなければならず、学校で学べることは少ない。

そのため、特定の専門分野を極める必要がないので、最低限のことが身に着いたら女生徒はどんどん退学していくのだ。


女性で残っているのは、商家を自分で継がなければならない子や、上級学校に進学して侍女などの職を得て、あわよくば貴族に仕えて見染められたいと考えているような子で、多くは仕方なく勉強を続けている人たちである。

その中で女性であるアリシアの成績が良いというのは、男性の目線から見て考えられないことであり、また屈辱的なことであった。

その話を耳にしたアリシアは、最初こそやましいことはしていないのだからと気にしなかったが、わざわざ聞こえるように話題にされることが多く、いつまでも言われ続けるため、教室の居心地が悪く、ギリギリまで教室に入るのを控えるようになっていた。



「おはようございます」


教室のドアの前に立っているアリシアは先生の姿を見つけると、挨拶をして教室に入っていく。

先生よりも先に教室内に入っていれば遅刻にはならないため、先生を目視できる位置で待機し、入口近くの空いている席に着いて授業を受け、授業が終わると先生が退出するのを追いかけるように教室を出るためだ。

この行為も実は彼らの噂を助長することになった。


「あいつ、また先生と一緒に来た」

「今日も先生を追いかけて教室から出て行った」


授業に興味のない生徒からはそのように見えており、毎回誰かしらがこのような発言をしていたのだ。

もちろん、先生を追いかけているわけではないので、質問がない限りアリシアと先生が廊下で話しているような光景を見ることはできないのだが、生徒たちが、見えないところで彼女だけ特別待遇を受けていると思い込むには充分な要素だった。



ある日、たまたま早く教室に到着した先生にアリシアは声をかけられた。


「いつもドアの前にいるようだけど、どうしましたか?」

「いいえ、何でもありません」


頭を下げて教室に入ろうとするアリシアを咄嗟に先生は引きとめた。

ちょうどいつもの噂話が廊下まで聞こえてきたのである。


「ずっとこのようなことが続いているのですか?」


眉間にしわを寄せた先生がアリシアに聞いた。


「……そうですね」


アリシアはうつむいたまま小さな声でそう答えた。


「相談してくれればよかったのに。君はそういうのが苦手なんだね。先に入って座っていなさい」


教室に入るよう促されてアリシアは席に着いた。

先生は中に入らず教室の中から自分が見えないようにドアを閉める。

特に廊下に聞こえるくらい大きな声で話している生徒のテンションは高く、先生が廊下に待機していることを知らないため話は止まない。



外でしばらく様子をうかがっている先生がいることなど知らず、彼らは珍しくアリシアに直接怒りをぶつけていた。


「おまえさー、テスト問題とか教えてもらってるんだったら俺たちにも提供しろよ」

「自分ばっかり贔屓されやがって」


早く教室に入ったため取り囲まれることになってしまったが、アリシアは自分に投げつけられる言葉の暴力に無言で耐えていた。

言い訳をしても火に油を注ぐようなものだと、そして彼らには何を言っても無駄だとあきらめにも似た感情を持っていたのである。


「それはどういう意味ですか?」


ドアの外に待機していた先生がドアを開けて生徒に問う。

まさか先生に聞かれているとは思っていなかった生徒たちは動揺を隠せない。


「私が不正をしていると、君たちはそう言っているのかな?」


先生はそう言いながら中に入りドアを閉めると、閉めたドアによりかかった状態で生徒を見下ろした。


「あ……、いや……」


言葉にならない否定交じりの声を出しながら、絡んでいた生徒たちが後ずさりしながらアリシアから離れていく。


「とりあえず席に着きなさい」


そう言って先生は教壇の前に移動した。


「まず、今の件ですが、あなた方が私を信用できないというのであれば、今すぐこの教室から出て行っていただいて結構です。この授業は選択科目ですから勉強をする意思のある人が残ればいいですから」


席を立つ者のため、そこで言葉を切った。

誰も動かないことを確認すると再び話が続く。


「特定の生徒を贔屓していると。みなさんに、我々がそのように見られていたことが私には残念でなりません」


この発言を聞いて、生徒たちは黙って下を向いていた。

顔をあげて先生を見ることができないものが多かったのである。


「また、一人の名誉を著しく傷つける行為を黙って見ているわけにいきません。ですが、それだけを私が言うと、あなた方は私が彼女を贔屓していると言いだすのでしょう。ですから、私の名誉と彼女の名誉のために、これから彼女の実力を証明していきましょう」


教室は静まり返っていた。


「あなたがたが選んだ問題を彼女に解いてもらいます。私が信用できないのなら、みなさんが問題を出しなさい」


先生が生徒に対して威圧する言葉を放った。


「わかりました。頑張ります」


こんな目立つ形での問題解決は望んでいなかったが、どこかで濡れ衣を晴らしたいという気持ちがあった。

選択制であっても、同じ教科の上位クラスを選択してきているということは、これからも同じ道を進むということである。

彼らも基準さえ満たせば同じようにステップアップしてくるため、在学中は同じ授業を受ける可能性が高かった。

居心地が悪い教室を生み出す彼らと何年も顔を合わせるのは正直苦痛だったのだ。

早く悪い噂を終息させるためには公開の場で対応するのがよいということは理解していたので、この機会を自ら蹴る理由はなかった。


アリシアが同意したため、先生は早速、生徒の一人を名指しして問題を出すよう指示した。

同じ生徒ばかり問題を出すのは不公平だということで、一問ずつ違う生徒が問題を出していく形式が取られた。

その結果、授業の間アリシアは先生の指名する生徒の選んだ問題にひたすら答え続けることになった。

そしてこの授業でアリシアは全問正解をたたき出し、自分の成績が教師陣による贔屓ではないということを実力で立証することに成功したのだった。

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