二人の小説
「うわ、ヤバイ時間がねぇ。二度寝するんじゃなかったな」
朝めが覚めるといつも起きる時間を既に過ぎており、言ってしまえば遅刻寸前だった。
制服に着替え鞄を持ち、階段凄まじい勢いで降り洗面所に向かい、直ぐさま顔を洗い玄関に向かう。
その途中で母が「奏多、朝御飯食べてかないの?」と悠長に朝のニュースを見ながら話しかけられたがそれを無視して玄関を飛び出した。
学校はほんの数分で着く場所にある。
昔は陸上部にいたのだが訳あって今や、文芸部にる自分には重たい鞄を持って走ることすら辛いことである。
ましてや、朝から本気で走るなんてもっての他である、
(朝から必死に走るなんて…やれやれだぜ)
ジョ○ョの、あのキャラみたいな口調で、そんなことを考えながら必死に走り続けた。
ついた頃には「ああ、死にそう」
唾液が血の味になりつつ呟いていたのは周知の事実である。
「おお、おはよう港。お前がギリギリなんて珍しいな。昨日の夜なんかあったのか?」いつも朝、門の前にいる中村先生はニヤニヤしながら俺の顔をマジマジと見て呟く。
「ちょっと夜に新作のプロットを考えてたら寝ちゃって。起きたのが今の惨状です」
「なるほどな。ああ、そうだ。昨日の放課後、あいつがお前を探してたぞ。さっさとかけバカって言いながらな」
(ほんとこの人はニヤニヤしながら要らない情報ばかり寄越してくるんだよなぁ)
「また話しときますよ。あいつの俺に対する罵倒は余計ですけどね」
苦笑いしつつ逃げるように校舎に歩きだした。
そのとき不意にぶつかってきたやつが─
「あ、バカ」
「げっ!俺よりギリギリに来てるやつに言われたくねぇわ」
話をすれば現れるとはよく言うもので、俺の天敵兼相方の宮川美里はその長い黒髪を揺らしながら彼女は相変わらず口が悪い。
(そんなんだからモテないんだよ。顔はいいのに…)
そう思ってたのも束の間、
「あんた昨日何してたの。私がどれだけ探してたと思ってるのよバカ。あんた影薄いんだからさっさと現れないよね」
「影薄いは悪口か!?悪口だな!?もう知らねぇぞお前なんて」
二人して睨みあっていると
「お前らまたイチャイチャして。もう始業のチャイムなるぞ」
「「イチャイチャしてないわ!」」
仲良いのか悪いのかハモってしまって二人して気まずくなったのは言うまでもない
「もう行きますからそのニヤニヤ止めてください。」
「ほんと先生は青春脳ですね。頭大丈夫ですか。もう一度子宮からやり直してきてください。てか、そんな頭してるから結婚できないんですよ」
(ほんとにやめてあげて。先生のライフ)
ニヤニヤした中村先生は青ざめていた。
ほんとにご愁傷さまですと思いつつ二人をおいて俺は校舎に向かった。