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転生したら武器が恵方巻きで山  作者: 鼻ふぇち
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第6章

ダミナートの遥か東に位置するミリテスラン最大の砂漠地帯ズンドレラ、そこに龍人たちが築いた都市があった。

本来農作物も育たない砂漠において、その領内にある『龍水脈』の加護を受け発展してきた『ドラグドラド』である。


レーヌ一行がこの地ですることは、まずドラグドラドを治める男『龍尾ルビ』と会うことだった。


「今、ドラグドラドでは龍尾が推し進めている政策に対して、民衆の不満が高まっているそうです。」


レーヌは形の良い眉を寄せると、眼前に巨大な門と外壁を構えている都市を見つめた。


聞けば、龍尾は長く賢王として名を馳せた人物だったらしいのだが、ある時期突然に龍人の血脈を護る為と称しドラグドラドに住む人々の交流に制限を設けたらしい。


「その真意については不明瞭な部分も多いのですが。。最近ではそれを苦に他の都市への移住を求めてくる者が多いのは事実。」


ミリテスランに存在する全ての都市、町、村は統一国家に属しており、その最高位が中央都市ダミナートの現当主レーヌ・リネサキだが、基本的に各地方都市や町村の政はそれぞれのトップの手に委ねられている。よほどのことがない限り、レーヌといえども地方都市の政に干渉したりはしないのが原則だ。


「とはいえ聞いた話がもし真実なら、私も龍尾には一言言わねばならないでしょう・・」


この日、一行がドラグドラドを訪れることを、龍尾には事前に伝えてあった。

というより、ずっとレーヌの方から面会の要請はしていたが、龍尾側の都合が合わずようやくこの日に会える運びとなっていた。


ここの祠がドラグドラドの領内にあることも既に分かっていたのだが、とにかく龍尾が良いというまでは正面から都市へ入ることもままならず、下手に侵入して騒ぎになれば面倒なことになる為後回しになっていたのだ。


「交流の制限って・・具体的にはどんな風にしてるんだろ?」


ウッキー?


「龍人には純血と人間との混血がいるのですが・・純血と混血同士、または純血と人間同士の交際、婚姻を禁じたとか・・」


それだけでもう随分と酷い話である。


「・・まぁ、龍人には純血の血筋に拘るのもけっこういるんだがな。」


龍人の血が濃いほど成長は早いし、体力的にも魔力的にも人間の血が混ざるのとではかなりの差があるらしく、彩奈の言う通りその優位性にご執心な者も多いらしい。


「でも、それだけです。太古の昔より龍人たちが人間との交流・交易をきっかけにその血を受け入れながら作り上げられてきたのが、今のドラグドラドですから・・」


確かに職業などの面では、基礎能力の高い純血の龍人が要職に恵まれ易いといった問題もあるが、生まれつきの能力差を努力で埋める道はいくらでもあり、そこは公平でこそあれ差別されているとは言い切れなかった。


事実、ドラグドラドで長年経験を積んだ者は混血の龍人であろうと人間であろうとスキルが高く、他の都市の者より頭一つ抜きん出ていることも珍しくない。


「しかし、今龍尾が進めているのは明らかな差別政策です。純血の者にのみ有利な体制作りを目指しているとの見方もあります。」


話を聞く限り、龍尾という男がドラグドラドを純血の龍人が支配する都市へ作り変えようとしている野望が見え隠れする。


「酷いヤツだな。なんでそんなヤツがトップに収まってるんだろ!?」


ウッキー ウッキー!?


「龍尾が王の座にあるのは、世襲ということもありますが・・以前はそんなことを考えるような男ではなかったんです・・」


「言ったろ? 変わってしまったんだよ龍尾の奴・・前は、血筋や種族の別なく助け合うことが大切と謳っていたんだがな・・」


「ふうん・・突然の心変わりか・・政治家なんてどこもみんな勝手なもんだよな・・振り回されるのはいつも一般大衆でさ。」


ウッキー ウッキー


この時、カッキーはあんな首相、こんな委員長、プレジデントどんなルドらを思い浮かべながら龍尾に対しての軽い怒りを述べたつもりだったのだが、これを聞いたレーヌや彩奈は肩を落としてしまった。


「精一杯尽くしていてはいますが・・そういう声、必ずありますよね、彩奈・・」


「ああ・・そういうの直に聞くのが一番かったるいよな・・」


!?


しまった。言い方がザックリ過ぎて、2人の心にまでザックリいってしまった。完全に失言である。こうして毎日一緒に旅をしていると忘れそうになるが、レーヌも彩奈も政治家であり、しかも事実上の都市のトップ。カッキーにはこぼさないところで常に気にしていることなどがたくさんあるのだろう。


ムッキャー! ムッキャー!


タカ・・おまえ、さっきから便乗してウキウキ言ってただけなのに、ここで責める側に回るのかよ・・


『まぁまぁ、彩奈。レーヌさんも。』


カッキーがあたふたしているところへ、爽やかな声で割って入ったのは烏丸さんだ。ありがたい! 敏腕政治家でもある彼はどんな素晴らしいフォローをしてくれるんだ!?


『あとで、2人にパフェでも奢りますから。元気出して行きましょう。ね?』


え? 嘘!? そういうのなの!?


どぎまぎしながら2人の顔を盗み見たカッキーだったが、なんとどちらも口がムニュっとにゃんこみたいになっていた←ω


「悟浄、おかげでなんかヤル気出てきた! ありがとな!」


「そういえば、しばらくパフェなんて口にしていませんね・・楽しみです!」


すっかり元気・・これでいいのか・・


『まず分かりやすいメリットがないと人の心ってなかなか動かせませんからね。魚心あれば水心ってやつですよ。』


ふたりとも、責任感強いですし・・ああ見えて色々悩んで疲れてるんですよ、それにしても他にも色々かける言葉は考えていたんですが。。ハハ、安上がりな方でしたね。


カッキーにだけ聞こえる爽やかなヒソヒソ声で屈託なく笑う烏丸さん。ああ、烏丸さんだ・・


「そいや、彩奈さんが烏丸さんに話すカンジ変わりましたよね・・なんかこう自然体っていうか・・呼び方も・・」


『あれから、ボクたちも色々と進みましたからね。彼女、明るくなったでしょ? 柿崎くんもガンバってくださいね。』


ほんとイケメンだなぁ・・このキュウリ・・


なんとか収まったところで開門の約束をしていた時間となり、一行は門へ向かう。


「大変お待たせして申し訳ございませんでした! ただ今通用門を開きます!」


門番の衛兵が櫓の見張りを経由して、内側に合図を送った。


「確かに。レーヌさま御一行、どうぞ中へお入りください。」


手形の証文を確認してから、扉の奥の人物が一行を中へ招き入れる。


「ほえ〜!!」


カッキーは扉をくぐってすぐに感嘆の声をもらした。龍人の都市ドラグドラド、それは砂漠地帯ズンドレラ唯一のオアシス。

整理された街並みの至るところに水路が引かれ、綺麗な水がサラサラと流れている。

立ち並んだ白っぽい石造りの家々には、豪華な彫刻が施され、まるでその一棟一棟が素晴らしい芸術作品のように水の都に映えていた。


そして、壁の外からでも見えていた一際高くて豪華絢爛な建造物、アレがこのドラグドラドの統治者である龍尾の住まう宮廷だ。


ウッキー! ウッキー!


タカにもこの素晴らしさが分かるのか、興奮気味に叫びながらノンモーションのバク転を繰り返している。


「ふふ、すごいだろ。ウナートラも雅な街並みには自信があるが・・勇壮な建築と水廻りの美しさならやっぱりこのドラグドラドだな。ここは運河もすごいぞ。」


砂漠の真ん中に水路や運河を走らせるなんて驚きだ。これも、話に聞く『龍水脈』のチカラなのだろうか。

これだけの豊富な水が使い放題であれば、きっとこの都市の領内だけでかなりの農産物の収穫が望めるだろう。


「はい・・今はまだ何も起こってはおりませんが、民衆の不満はつのるばかりで・・」


見ると、一行を迎えた位の高そうな服装の初老の龍人が、なにやら深刻な面持ちでレーヌと話している。

なるほど、間近で見ると少し人間とは違う見た目をしているな・・先の尖った耳、やや縦長の瞳・・これが龍人か。。


「最近では宮廷内でも・・いえ・・」


男は言いかけて思い直したらしく、そこで口を紡いでしまった。

近くにいた2人のお付きと思われる若い龍人の顔にも一瞬緊張が走ったのをカッキーは見逃さなかったが、彼がそこで止めたことによって安堵の表情を浮かべている。


「・・ときに龍尾のところへはこのまま向かうことになりますか?」


「それなのですが、龍尾様は夕方まで外せない急用が出来たらしく、夕食どきにお連れするようにとのことで・・お泊りの部屋も用意してあるとのことでしたが・・いや、私から代わってお詫び申し上げます・・」


「気になさらないでください。龍尾も多忙な身です。それでは時間まで久しぶりのドラグドラドを堪能させていただきますわ。」


レーヌは宮廷前での待ち合わせ時間の確認をした後、その初老の龍人に丁寧なお辞儀をして一行を向き直った。


「龍尾に会うのは夜になるそうなので。。これから少し街へ遊びに行きませんか?」


願ってもない。ちょうどカッキーも少し観光気分で街を歩きたいと思っていたところだ。


「レーヌさま。どうぞ、お気をつけて!」


3人が並んで敬礼をする。レーヌはニッコリと微笑みながら振り向きハイと返事をしてからまた踵を返すと、カッキーの腕に自分の腕を絡めてきた。


「さ、行きましょう。ユータ!」


後ろで2人の若い龍人が少なからずやっかんでいるであろうことに優越感を覚えながら、カッキーがその組まれた腕でもう少しだけレーヌを自分へ引き寄せる。そうして、2人は歩幅を合わせて歩き出した。


ウッキー! ウッキー!


「ん? なんだタカ、妬いてんのか? まぁ、諦めろ。サルとか人間とかじゃなく・・」


あの2人には今は誰も入り込めないもんが出来ちまってんだから。


いつのまにそんなことに?と思う方もいることとは思うが、それについては後々語ろう。


「んあ? ・・やだよ。お前の毛、服についたらなかなか取れないんだからな。」


物欲しげに腕を組めと絡んでくるタカを適当にあしらいながら、彩奈は先行する2人の少し後を付いて行く。さて、着いた場所は・・


『パーラードラゴン』


いや、パチンコ屋のような響きだがもちろん違う。ここはかなり人の出入りが活発で繁盛している様子のフルーツパーラーだ。


「このお店のドラゴンパフェ、私大好きなんです! 奢ってくださいねユータ!」


ありゃ。観光すんのかと思ったら、どうやらあれからレーヌはここのパフェのことばかり考えていたようだ。

しかも奢ると言ったのは烏丸さんだったはずだが、いつのまにやらカッキーに置き換わっている。


「当然、私の分も出してくれるよな?」


ウッキー! ウッキー!


タカここでも便乗! ・・まぁ、カッキーの失言が原因であるし、小さなことにはこだわりはしないのだが・・


ちなみにカッキーがお金など持っているのかだが、レーヌとの旅は彼の職業というワケではないものの旅先では何があるか分からない。現金はさまざまな場面で入り用となる為、きっちりと正式支給されている。


「あのさ、レーヌ・・」


「? なんですか、ユータ?」


「・・デカいよね・・?」


一行が着いたテーブルに運ばれてきたのは、工芸品のような美しい細工が施されたパフェグラス。。ではなく、なんとデッカい花瓶のような器に山と盛り上げられた超ビッグサイズスイーツだったのだ。


生クリーム、ホイップチョコ、シリアル、フルーツ・・

間口の下の部分だけでいったい何層あるのか?

もちろん、上の方にも重力に逆らえとばかりに大量のそれらが大迫力に乗せられている。


最初、もしかしたらレーヌが自分と一緒に食べようと2人分のビッグサイズを注文したのかと思ったが、そもそもこれは2人分ではきかない。


続いて同じものがドカドカとテーブルに置かれた時、レーヌが元気に『ドラゴンパフェ4つください!』と注文していたのを思い出したカッキーは覚悟した。


「これこれ、これです! では、ユータ、いただきますね!」


「おー。相変わらず食いでがありそうだ。柿崎ゆうた、ゴチになるぞ!」


言うが早いか、2人は異様に長いパフェスプーンを器用に操りながらパクつき始めた。


「んっふ〜っ! 最高です!」


「ああ、やっぱり人気1番店だけあるな!」


ホラ、お前らも早く食ったらどうだ。アイスが雪崩おこさんうちに!


ウッキャー・・ハッ!?


スプーンを手にしたまま呆気にとられていたタカとカッキーも、ようやく我に返って食べ始める。むむ!! 確かに美味い!


アイスは生クリームのようにふんわり軽く、フルーツはどれもジューシー! 量はアレだが、一度は食べておいて損はない味だ。


ハァ・・食った食った。


もっとも、レーヌと彩奈が花瓶の底を名残惜しそうに突いている頃、カッキーとタカはどうにか雪崩回避の間口あたりまで平らげてギブアップとなったのだが・・


その時である。


「ホラ、今日は私の奢りだから・・もう泣かないで何でも注文して?」


一行の耳に聞こえたのは、隣のテーブルに着いた若い女性2人の会話だった。

龍人は間近で見ると、顔や手に人間の肌と寸分違わぬ色ではあるが細かな鱗があるのが分かる・・それはそうと、声をかけられた方の女性は泣いていた。


「私たちもう結婚を考えていたのに・・」


カッキーは、一度置いたスプーンで花瓶の中をかき混ぜながらあとの面々に言った。


「あー・・もう入んないと思ったケド、もうちょっと食べようかな・・もう少しいい?」


「どうぞ。ゆっくり食べてていいですよ。」


素早くその意を察したレーヌが、あくまで自然な言葉を返す。


一行は軽い雑談をしているフリをしつつ聞き耳を立てた。


慰めていた女性は多少周りのことも気にしていたが、泣きながら言葉を吐き続ける相方の勢いを止めることは出来ない。

他の客も、その様子には少し目を止めていたようだったが、話の内容が『それ』と分かると、皆一様に聞こえていない体を決め込んだようだった。


話の内容は、やはり一行が睨んだ通り龍尾の政策に関係するものだった。

その女性は混血の龍人で、相手の男性は純血の龍人。今のドラグドラドではこの組み合わせでは結婚が許されていない。ここまでは事前に得ていた情報通りだ。

だが、話はそれだけに留まるものではなかった。


「もう少し早くにこの都市を離れていれば、こんなことには・・」


2人の会話の内容を拾って繋げていくと、一つの新たな事実が浮かび上がってきた。


なんと、つい先日のことだが、龍尾は純血の龍人に対してドラグドラドから出ることを禁じたらしいのだ。純血の龍人が駆け落ち同然で都市を離れようとするのを、強制的に防ぐ為の策だろうということだった。


しかも。一番驚いたのが、都市外への脱出を計った純血の龍人や、それを手引きした者を死罪と定め、例え逃亡しようとも地の果てまで追っ手を差し向けることに決まったというのである。


もう、これは異常だ。龍尾の目的が、龍人の血脈を厳重に管理することなら、確かにその目的に邁進することだけを考えれば有効なのかも知れないが・・あまりに人道に反している。


少なくとも、一つの都市の最高権力者が考え、しかも実行していいことではない。


「ん、やっぱりもう満足。出ようか。支払いしてくからみんな先に外で待ってて?」


女性の愚痴が堂々巡りに入ってしまったので、カッキーはここいらで退散を決め込むことにした。


店を出て、とぼとぼと歩き出す。先ほどの女性が気の毒過ぎて、カッキーとレーヌは今は腕を組む気にもなれない。


「せっかくだ、運河でも見に行かないか?」


彩奈がその様子に気を遣ってか後ろから2人に声をかける。


「・・いいかも知れないですね。ここの運河なら、橋から眺めているだけで気も晴れるでしょうから。」


レーヌや彩奈には民衆のああいった苦しみの他に、既知である龍尾への想いというのもあるのだろう。

本人と顔を合わせるにしても、確かに一度気分転換をしておいた方がいいと感じ、カッキーも頷く。


運河は宮殿をグルリと囲むような円形のものを中心として、都市の8方へ延びていた。更に同心円状のものが外側にいくつかあるらしいので、全体的には蜘蛛の巣か雪の結晶に近いデザインとなっているようだ。

ドラグドラド全域は広い。この運河がこの都市における物流の要なのは、その行き交う貨物船の数を見ただけでも分かる。


一行が水気を含んだ涼しい風を頬に受けながら運河沿いの散歩を楽しんでいた時、レーヌがある光景に気が付いた。


「あそこの区画・・何でしょうか?」


円形の運河の途中1区画だけが閉鎖されているようである。

近くへ寄ってみると、見るからに急ごしらえと分かる土嚢と金属製の仕切りによって、完全にその区画は他と隔てられていた。


遠くに目を凝らすと、向こうの方にも同様の処置が施されているのが分かる。


「あの、お尋ねしますが・・ここの運河は何故このように閉鎖されているのでしょう?」


通りすがりの龍人に質問するレーヌ。


「ああ、ドラグドラドの外から来られたのですか? 原因は不明なのですが、ある時この区画の水質が突然悪くなりましてね。」


この運河も街の隅々まで網の目のように走っている水路も、どこかでは繋がっていますので・・全体の水質保全の為今のところ応急措置としてこのようにしているワケですな。


確かに、閉鎖された区画の運河に溜まっている水は、濁って表面に粘着質のあぶくがたくさん浮かんでいるのが見える。


「ここの閉鎖で運河の通行に制限がかかり、物の運搬には不便なようですが・・」


まぁ、水が汚れては致命的ですからな。緊急対策としては致し方なかったのでしょう。


「それはいつぐらいのことなのですか?」


「・・もう三月ほど前になりますか。」


みんなでお礼を言うと、龍人のオッサンも軽く会釈して去っていった。


「三月前というと・・龍尾が無茶を始めた時期と被りますね・・」


宮殿を囲む造りと言ったが、宮殿そのものから運河までには距離もあるので一周するだけでも結構な時間がかかる。


道すがらには色々と物珍しい民芸品を扱う店なども立ち並んでいたので、物見遊山で時間を潰すには事欠かなかったが、4分の3を歩き終わった頃には既に日は沈みかけていた。


いい運動にもなり、先ほど食べたパフェのカロリーも尽きたのか、そろそろ小腹も空いてくる。


初めて訪れたカッキーにとって、一周出来なかったのは心残りではあったが、そろそろ宮殿へ向かわなくては遅れてしまいそうだ。


「タカを連れて行っても平気でしょうか?」


レーヌは龍尾とは既知の間柄とはいえ、一応畏まった会合であることを心配しているのだろう。


「あいつは、サル好きだろ? なんでかは知らないが・・大丈夫じゃないのか?」


晩飯用意してくれるって言ってんだ。タカだけ外しちゃかわいそうってもんだ。な?


ウッキー! ウッキー!


「まぁ、どうしてもダメって言われたらどっかに預けるからな。分かっとけよ?」


ムッキャー! ムッキャー!


「んなこと言ったってお前、生まれつきのサルはなおらんだろうが。私からもちゃんと頼んでやるから。大人しくしてろ!」


差別するなと抗議するタカを適当になだめながら、宮殿へ向かって歩き出す彩奈。

まぁ、カッキーは当初からそう思わないでもなかったが、置いて来たりするとそれはそれでうるさいからな。


宮廷は間近で見上げると腰が後ろに折れそうなほどの高さだった。

中庭などの全体的な規模で言えばダミナートの宮殿の方が大きいが、建物の・・言ってはなんだが無駄な高さだけはこちらが圧倒している。


「レーヌ様、お待ちしておりました。龍尾様もお待ちでございますので、すぐにご案内いたしましょう。」


門で会った初老の龍人が宮廷の入り口前で待っていた。衛兵かと思っていたがもしかすると宮廷勤めの龍尾の側近なのかも知れない。


通されたのは、謁見の間。レーヌは立場的には龍尾よりも上ではあるが、今日は来賓である。普段は数段高い位置から椅子にかけたまま客を見下ろすのであろう龍尾が、段を降り立って一行を迎える形となった。


「お久しぶりです、龍尾。」


「ああ、久しいなレーヌ。それから彩奈も、よく来てくれた。」


龍尾は非常に背が高く、肩幅も広い男だった。胸板も厚く印象的には武人肌といったカンジの精悍な顔つきをしている。顔や手に生えている鱗は、これまで会ったどの龍人よりも輪郭がくっきりとしていた。


龍尾は純血だというから、血の濃さが見た目の違いに現れるのかも知れない。

彼の年齢はレーヌや彩奈の倍近くはあるらしいのだが龍人は外見に老いが出にくいのだという。人間で言えばせいぜい20代半ばくらいにしか見えない。


一見、両耳の後ろあたりから二本の短い角が生えているようにも見えたが、どうやらそれは装飾品のようだった。


「・・久しぶりだな龍尾。挨拶が短くて済むのは変わらなくて助かるぞ。」


「お前も変わらぬな、彩奈よ。まぁ、堅苦しい挨拶などいらぬさ。」


龍尾は口元の端を少し持ち上げで軽く笑うと、カッキーの方に目を向けた。その様子を捉えてレーヌが紹介する。


「龍尾。私の騎士兼パートナー、柿崎ゆうたです。」


レーヌが半歩下がるのを見て、カッキーは一歩前へ進み出た。龍尾が頷くのを待って本心からではないものの膝をついて頭を降ろす。


「お初にお目にかかります。柿崎ゆうたです。」


「頭を上げ楽な姿勢でいてくれ、柿崎ゆうた。そうか、お前がレーヌを護る騎士なのか・・余からもよろしく頼みたい。」


イメージなどというものは所詮そういうものかも知れないが、カッキーは龍尾という男の印象を心の内で修正しつつあった。


ここで実際に対峙してみるまで、カッキーは龍尾のことを話しも通じないような鼻持ちならない人物だと思っていたが、予想に反して随分と人当たりの良い男である。


「はい、レーヌのことは全身全霊をかけて必ず護ります。」


「うむ。頼もしいぞ、柿崎ゆうた。それでこそ安心して任せられるというものだ。」


目を細めて微笑う龍尾に、すっかり毒気を抜かれてしまうのだ。


続いてタカのことを旅の大切な仲間として紹介された時も、龍尾は嫌な顔ひとつしない。同じようにレーヌをよろしく頼むと言って今度は豪快に笑った。


「さて、それではもてなしながらゆっくり話すとするか。別室にテーブルを用意させている。そちらへ行こう。」


「龍尾・・ですがその前にちょっと・・」


「ふむ・・だいたいは察しがつく。それもこれも含めて話そうじゃないか。腹を満たしながらの方が会話も円滑にゆくというものだ。」


案内されてみると、だだっ広い部屋の中央にテーブルが設えてあった。四方の壁まではけっこうな距離のある構えである。

一同が席に着いた時には既に豪華な料理や酒が並べられており、更に追加がどんどんと運ばれて来る。


護衛が部屋の入り口や窓付近を立ち固める、最初こそいささか食事を楽しむには重苦しい雰囲気の部屋ではあったが、乾杯後に酒が進むと周りは次第に背景の一部となった。


「なんと・・それでは、各地の霊獣を解放し、仲間に加えつつ旅をしているのか?」


ドリガロンの反逆から現在の状況となったのはどこの都市のトップにも知れていることだが、久しくレーヌや彩奈、それからキケルとも音信を取り合っていなかった龍尾は一行の動向については初耳の様子である。


「ええ、彼が霊獣たちの力を宿すことの出来る異世界の武器で、彼らの呪縛を断ち切ってくれますので・・一度彼の勇姿をお見せしたいですわ。」


レーヌも少々酔いが回ってきたのか、いつもより惚気気味だ。


「そうか・・霊獣の祠は市街地からは少し離れた場所にあるが・・」


闘いが発生するとなれば、人民に被害が出ぬよう配慮する必要があろうな。


「一応、民のことには頭が回ってはいるんだな・・」


龍尾に対して思うところがある故か、はたまたレーヌの惚気に当てられたのかは分からないが、チビチビと酒を舐めていた彩奈が突然切り出す。


「彩奈・・」


「まぁ、言わせろレーヌ。なあ、龍尾。分かってると思うがこの都市に住む住人たちは今、お前の政策にかなりの不満を抱いているぞ・・」


あ、言っちゃった。まぁ、話が早くて助かるけど・・


「やはり、それを言われてしまうか。レーヌも先ほど謁見の間で言いかけたのは、そのことではないか?」


躊躇うそぶりを見せながら頷くレーヌ。


「すみません、龍尾。私とて各地方都市の政にまで直接口を挟むようなことはしたくないのですが・・」


あなたの今進めている政策は、このドラグドラドに住む龍人、人間、その多くの者にとっては過酷なことでしょう。


「しかも、この国を捨ててまで幸せを掴もうとする人々に対しても、まるで暴君のような仕打ちを決めたようじゃないか。」


ゆくゆくは・・既に結婚している者同士も、血や種族の違いを理由に仲を引き裂こうと考えてたりしないか?


彩奈が、らしいといえばらしい遠慮なしの飛躍した推察まで入れながら畳み掛ける。


龍尾は、レーヌと彩奈の追求にしばし目を瞑り思案していたが、不意にカッキーへ言葉を投げかけた。


「2人はこう言っているが、お前はどう思う柿崎ゆうた。同行しているなら、大体の理由や事情も聞いてはいるのであろう?」


「・・龍尾さん。俺、正直に言うと、あなたと実際に会うまではまったく人の話に耳を貸さない冷血な人物なのかと思っていました・・」


でも、そうでもない。あなた根はいい人そうだ。だから、俺の意見も聞いてくれるっていうなら言います。

このままいけば、人間はもとよりあなたが護りたいという龍人たちも、それからあなた自身も不幸になっちまう。俺政治家じゃないから突っ込んだことよく分からないけど・・


「人ってのは、分かりやすいメリットと同じように、いや目に見えるデメリットってやつにはより敏感じゃないですか?」


不利益ばかりでがんじがらめにされちまったら龍人も人間も同じく不満が爆発する。奪うばかりじゃ人心ってのは掴めやしないし都市も長く治めることは出来ない。俺はそう思います。


「・・そうか、いや、誠に余もそう思う。柿崎ゆうたよ、お前は立派に政に携わるべき者の根っこを持っているではないか。」


!?


「龍尾。それが分かっているのなら、何故こんな悪政を押し進めるのです!?」


「それは・・これが龍神様の意思だからだ。龍の神と書く方のな・・」


「龍神・・様?」


「ああ、お前たちが霊獣と呼ぶこの都市の守り神。祠を起点に走る龍水脈。。それを司る龍神カンピオーネ様だ。」


ここまで話すつもりはなかった。。先程は少し警戒した故に知らぬフリをして済まぬ。

何を隠そう龍神カンピオーネ様は、今やこの龍尾と一心同体なのだ。


「どういうことですか? 龍尾、詳しく説明してください!」


「我々龍人の起源は、龍神様であるという古くからの言い伝えがある。人間の娘に恋をした龍神様が、ひと時人間の青年に姿を変え交わり生まれた子らが龍人の祖であると。」


「・・しかし、それは・・」


「そうだ。どこにでもあるような神話の類の物語・・余も幼少の頃よりそう思っていた。」


だがあの日、龍水脈が永遠に豊かな恵みを与えてくれるよう祈るべく、余が恒例の祠参拝に赴いた時のことだ・・


突然の光が天の雲より駆け降りてきたかと思うと、目の前の祠を直撃しこれを粉々に粉砕した。そこから巨大な龍の形をした陽炎のようなものが立ち上り、余に向かってこう言ったのだ。


『我が人に与えし龍の血は、このままではいずれ絶える。龍人の王よ、由緒正しき龍の血を受け継ぐ者よ。滅びの道を逃れたくば我を受け入れよ。』


ひれ伏して許諾すると、余の身体は抗えぬ力で宙へと浮かび上がり龍神様に引き寄せられていった。そして、2つの姿が重なった時、どこからともなくこれが飛来し・・


龍尾は、グイと着物の前をはだけると、その腹に巻かれた簀巻きを見せた。


「締めつけられるような衝撃とともに我らは1つの存在となっていたのだ。これは、あの時同行していた側近たちしか未だ知らぬ。」


・・この簀巻きはどう見てもアレだろう・・ということは龍尾が霊獣カンピオーネの憑代、いわば魔獣体として利用されたということなのだろうか?


「・・話は分かりました・・じゃあ龍尾さん・・今このドラグドラドで出されてる政策ってのは、あなたの意思じゃなくて、そのカンピオーネって霊獣・・龍神様の意思によって進められているってことなんですね?」


「左様・・だが、余は龍神カンピオーネ様にこの身を差し出したのだ。一心同体故にその意思もまた余のものであるも同然だ。」


ゆくゆくは、このドラグドラドは純血の龍人のみが住む都となろう。我ら純血の龍人は成長が早い。幼子から生殖可能な青年期に逹するまでの期間が非常に短いのだ。

少人数からでも、人口を増やすにはそれほどの年月はかかるまい。


「今ある民衆ひとりひとりの都合や関係はおかまいなしってことですか? それを考えられないようなあなたではないでしょう?」


「柿崎ゆうた・・先ほどお前に言った政に携わるべき者の根っこがあるというのは世辞ではないが・・やはり、実際のところは分からぬか・・いや、致し方ないことよな。」


政は、すべての民の幸せを祈り行うのは理想だが、現実ではそうもいかん。

龍神カンピオーネ様は、その意思を代行し純血龍人種の都市造りを目指さぬのなら、やがてくる滅びを今与えんとおっしゃっている。

たちどころに龍水脈を堰き止め、この都市を砂漠地帯において人の生きれぬ死の場所に変えるとな。

ここへ来て、見聞きはしなかったか? あの穢れた運河の一角を、あれは龍神様の見せしめなのだ。


「毒食らわば皿まで。余は龍人の王として、この地に・・例えグラス一杯ほどの雫になろうとも龍の血を守らねばならぬ。」


「なら、せめてドラグドラドの外で生きる選択を認めてもいい・・なぜ、人が生きる場所を選ぶ自由さえ奪うんですか!?」


「・・言わんとすることは分かる。だが、そこを何も分かっておらぬのはお前の方なのだ、柿崎ゆうたよ・・今それを許せば、未来どころではない。たちまちこの都市は崩壊するぞ。」


よいか、柿崎ゆうたよ。今のこの状況が、例え余の本心から生まれ出でたものではなくともだ。目の前にいくつもの滅びの道があるのならば、それらをすべて避けた残りの道を行かねばならぬ時もある。


お前の言うそれが、この先々このドラグドラドにとりどれだけ危険な分子を野に放つことになるのか? 純血の龍人たちもまた、余と同じ考えの者ばかりではないということも分かっておる。

それがな・・政の綺麗事だけでは済まぬ部分よ・・


「まぁいい、あとは牢の中でじっくり考えてみることだ・・」


!?


「龍尾!? まさか私たちを牢へ!?」


「すまぬな、レーヌ。。余も、旧知の顔を見てつい閉ざしたはずの心を見せてしまった・・余の不覚だ。だが、龍神様はこのことを知ったお前たちを外へ出すなと、今内より強く語りかけてきている・・」


先ほども言った通り、龍神カンピオーネ様の意思は余の意思も同然。龍人のたった一縷の未来を守るためだ・・


「柿崎ゆうたよ。本気で言ってくれたことには例を言う。これは余の本心からの言葉だ。」


ウッキー! ウッキー!


気がつくと、一行の席の後ろには側近の衛兵が音もなく忍び寄っていた。


少し酒は回っていたが、それでもカッキーは素早く立ち上がると腰の恵方巻きを抜いて雷の剣を構える。


彩奈も一瞬で河童化し、取り押さえに来た兵をその剛力で逆関節に決めた。


タカも既に数人を殴り飛ばし、大暴れ待った無しである。しかし・・


「んー! んー!」


レーヌが1人捕まってしまった。彼女だけは呪文の詠唱が終わるまでの間無防備な隙をつかれた形である。

兵も前もって龍尾に知らされていたのか、レーヌのことを知っている者がほとんどなのか、彼女は真っ先に口を塞がれていた。


間髪入れずにレーヌは喉元に剣を当てられてしまう。こうなると、どうにも手が出せない。


どうせ言われるならと、カッキーは恵方巻きの刀身を消して投げ出し、彩奈は変身を解いた。タカも諸手を上げて降伏の意を示す。


「物分かりが良くて助かる・・さあ、連れて行け・・」


側近の兵たちが、一行を地下牢へと連行するのを見届けて、龍尾は深くため息をつきながらカッキーが床に落とした恵方巻きを拾い上げると、自室へ戻って椅子へ腰掛けた。


椅子の手すりで頬杖をつき、それから目を閉じて再びため息を吐き出す。


やはり、レーヌたちには会わない方が良かったかも知れない。

龍人カンピオーネと意識を共有している彼には、その意思に逆らう勇気はなかった。

とはいえ、ダミナートの当主とウナートラの総督を監禁など、これは取り返しのつくようなことではない。あくまでも内密に処理しなければ・・


あるいは・・と龍尾は今更ながらにして思う。


当初、自分は何をおいても、先祖代々受け継いできたこのドラグドラドの維持を第一に考え過ぎていたのではないか?


龍神カンピオーネは、龍水脈とは龍の血脈の力により地の底から引き上げられているものであり、この都市全体の龍の血が薄まったことによってその力が弱まっていると言った。


数千年もの間、弱まった龍の血の力を補い続けてきたカンピオーネでも、もはや抑えきれぬところまで来ており、早急に龍の正当な血を増やさぬとじきにこうなる、そう言って運河の一角の水をたちまち腐らせてみせたのだった。


龍尾はもう一度考えてみる。他に道はなかったのか?

都市の者にありのままを知ってもらえたならば、余の政策に賛同してもらえただろうか?

もしくは、この土地を捨て、長いドラグドラドの歴史に終止符を打つ覚悟があれば・・


そこまで考えて、龍尾はかぶりを振る。


それこそ理想に過ぎない。都市の総人口を考えればどこにそれだけの移民を受け入れられる土地があろうか。

ありのままの理由を知ったところで、都市の存続の為に我を捨てて協力しようという者が、果たしてこのドラグドラド全体にどれだけいるというのか・・


亡命、人手、税金、生産、叛逆、維持、滅亡、血脈、幸福・・


取り留めのない言葉の羅列が、先ほど旧友たちと飲んだ酒に絡まって龍尾の頭の中をグルグルと回る。


『何を迷う、龍人の王よ?』


その時、身体の奥底から龍尾の心に語りかけてくる声があった。


「いえ・・迷いはありません。賽は投げられたのですから・・」


『・・そうであろうな。それ以外にこの土地を救う道などないのだから・・くれぐれもその事は胸に留めておくのだ。』


「は・・心得ております。」


政に携わる者は孤独だ・・己の血を分けた子とさえも・・今宵・・


そんなことを思い、壁にかけられた龍時計の針を見ながら龍尾は長い疲れの果てに襲った強力な睡魔に誘われていった・・


暗く肌寒い地下牢で、カッキーは1人の龍人の青年と出会った。

男女分けられて収監され、この房には彼とタカ、そして青年の3人が閉じ込められている。


「じゃあ、あんたはあの龍尾の息子、ドラグドラドの王子だというのか?」


確かに言われてみれば、青年には龍尾の面影があった。龍尾が若く見える為、息子と言うよりは弟くらいには見えるが・・


「ええ。父の考え方にはついて行けず・・王子の立場を捨てて恋人とこの都市を出ると言ってしまったのがよくなかった。」


やはり、若さには行動力が伴うのか、身分よりも愛するたった1人の女性との幸せを何より優先させようとしたとは。思慮深さなどはともかくその男気には同じ男として素直に共感が持てる。


「彼女は龍人ではなく人間でして。。2人でダミナートへ移り住み、平凡でいいから幸せに暮らすつもりだったんです。」


それからもう、ここへ入れられてひと月にもなるが、この生活も今夜で終わりですよ。


!?


「これからひと騒動起こすことになっていまして・・ついでにあなた方も逃がします。」


牢番が全て味方のシフトになるこの日を待っていたんです。これから宮廷内で私に味方する一派がここへ来ますから・・

あなた方は、その指示に従ってここを脱出してください。


「もしかしてクーデター? あんた父親に叛逆するつもりなのか・・?」


「・・かつての父であれば、身内から叛意を向ける者などいなかったでしょうが・・息子の私の目にも今の父にはドラグドラドの王たる資格はありません。」


もう私だけの問題ではありません。牢中の身の私を立ててまで父に刃向かおうとする者がこの宮廷内だけでもほとんどです。


「もっとも、可能ならば父の命までは奪いたくはないのです・・」


あくまで、可能ならばですが・・父は武術の腕前も相当なので、数で力押ししなければならないかも。こちらにも相応の犠牲が出ますので混戦になるとどうなることか・・


カッキーは思案する。恵方巻きはあの部屋へ投げ出してきたが、霊獣たちの宿るスティックは懐の中だ。


「霊獣のみなさん。これから大変なことが起こりそうなのですが・・龍尾は憑代にされて正気を失っているだけなのでは?」


『あの龍尾という者から霊獣の波動を感じるのは確かじゃが・・』


『うむ。どうも、あの者と同化しているのとはどこか違う。』


『魔獣の気配も確かに龍尾殿から発せられていたのではござるが・・』


『そうじゃの、龍尾はあくまで人。2つの気配はその内に感じたでおじゃるよ。』


『・・・』


ヴォグムーアは言いたいことないの?


『カッキー殿。ヴォグりんは、魔獣体と融合したカンピオーネが龍尾の体に入り込み、その上から縛り付けれているんじゃないでちゅか? と言ってござるよ。』


うっそ!? キノコそんなこと言ってたの?


『・・・』


あー・・確かにヒソヒソなんか聞こえるな。

無口なんじゃなくて声が小さいだけか?


『それなら、あちきもひと肌脱ぎまちゅ。と言っておじゃるな・・』


通訳必要か、ヴォグムーア・・


「あの・・どなたとお話されているのですか? 何か賑やかな声もしますが一体・・」


知らない人から見たら非常に心配になる光景なので、カッキーは霊獣のことから今話していた内容までを龍人の王子に説明する。


「父はそんなこと一言も・・それでは、父は龍神様に操られているというのですか?」


『操られておるというより、何か弱みを握られ脅されていると言った印象じゃのう・・』


『確かに・・人の気は弱いのではっきりしたことは言えないが・・あの者からは霊獣、魔獣とはまた別の迷いの気が感じられた・・』


「王子、だとすれば君のお父さんを救う方法はあるかも知れない。俺も一緒に連れて行ってくれないか?」


「王子・・参りましたぞ・・!」


そんな折、叛乱部隊の先導者が王子を救い出しに地下牢へ現れた。


「柿崎様、大変な無礼を働きましてお許しください。あの場ではああするのか一番安全だったのです・・」


ウッキー! ウッキー!


「すまんな、サル。だが、あまり騒がないでもらいたい。気づかれたら困るのでな。」


ウッキャ〜


この声、聞き覚えがある。門で出迎え、この宮廷で案内をしてくれたあの初老の龍人だ。


「じい! 待ちかねたぞ。」


「準備万端整でございますぞ王子。柿崎様、レーヌ様と彩奈様もこの後救出に参りますのでご安心を!」


「・・王子、これは俺の一存じゃ決められない。あんたらのお膳立てしたこの計画はそれだけでも成功すれば成果は挙がるだろう。」


大掛かりなクーデターの決行が決まっているのならば、大きな流れにそう差はあるまい。

王子のいう通り、多くの犠牲を出したとしても、あくまで人の身の龍尾はいずれ倒される。それならば、あとは利用されているだけかも知れない龍尾を救ってやれるかどうかの違いだ。


王子は少し迷っていたが、カッキーの目を真正面から捉えると深く頷いた。


「柿崎と言うのか。では、どのようにすればいい。これから、味方の手勢は父の部屋までの警備を排除する為先行して突破口を開くことになっているんだが・・?」


「王子はその後に続き、道が開けたら龍尾の部屋へ乗り込む、という算段か・・」


なら、概ね計画通りに進めてくれても大丈夫。俺は王子と一緒に先行部隊に着いて行く。タカはリネサキたちを連れて後から来てくれ。


ウッキー! ウッキー!


さて、それでは行くか・・龍尾を救いに・・


なにやら遠くのようでもあり、近くのようでもある喧騒が聴こえてくる。

気だるさが抜けないまま、龍尾は重い瞼を開いた。しばしの間眠りに落ちていたようだ。

時計に目をやって、その騒がしさのワケを知る。もうその時が来たか・・


部屋の扉をバンと開け、側近の兵が部屋へ入ってきた。途端、喧騒は一段と強さを増す。


「申し上げます、龍尾様! 宮廷内に謀反が発生しました! ただいま、側近一堂総出で鎮圧にあたっております!」


「何、謀反だと!? 決してこの部屋まで逆賊らを通してはならぬ! 全力で食い止めよ!」


側近の兵はハッと一礼すると、再び扉を閉めて元の任へと戻って行った。


1人となった龍尾は、わざとその額に浮かべて側近に示した険を消すと、前々から用意しておいた龍人王家に伝わる2本の剣を鞘から順に引き抜いて刀身を改める。


大勢がひしめき合って激しく戦う声がすぐそこまで迫った時、龍尾は扉に向き直るとじきにそこへ現れるであろう者を待ち構えた。


果たして次に部屋の扉が開かれた時、彼は予想通りの人物の登場を冷静に受け止めたが、その奥で繰り広げられている異様な光景には唖然となってしまった。


今宵、息子がここの扉を開くことは予想がついていた。それに、その隣に控えている人物も概ねは龍尾の考えていた通りであった。


だが、その後ろで奮闘している兵たちのあれはなんだ? いや、あれは戦いと言えるのか?


扉を挟んだ向こうの部屋では、宮廷内の兵たちが2軍に分かれ、戦っているのではなく。。1人1人がてんでバラバラに、互いの武器をぶつけ合うこともなくまるで踊っているかのように暴れているだけである。

その結果、1人も傷ついたり倒れたりしている者の姿はない。


「・・よく来た、我が息子よ。そして・・外のその様子はお前の仕業か、柿崎ゆうた。」


「ちょっと、まとめて幻影見てもらってますよ。みんな大活躍の夢を見て1人も傷つかない。無駄な血は流す必要もないでしょう?」


ヴォグムーアのイリュージョンガス。吸い込むとこちらも同じ目に合うが、スタグホーンに空気を直接肺に送り込んでもらえばここまで来るのはワケない。


「ふむ・・流されるべきは必要な血だけ・・ということか。」


龍尾は王子に目を向けると、携えていた剣のうちの一本を差し出した。


「一度は王子の座を捨てようとしたお前が、叛乱を起こして尚再び余の前に立つということは・・余を倒してでも護りたいものが、まだここにある・・そう解釈していいのか?」


「父上・・つい先刻までは、その覚悟は出来ておりました。私はひと月前・・王子としての責など考えず、愛する人と自由を得ることばかり考えていた・・」


ですが、冷たい地下牢の中にあっても、私を立てあなたに翻意を向けてでも民の幸せを護りたいという者たちの声に心打たれ・・

今日ここへ来る前に、この柿崎と出会えたことによって、父上あなたもいまだその志潰えてはいないのだということも悟りました。


「父上、あなたは龍神様の名を語る者の策謀によってその傀儡とされてきたのです。私は、この決戦を柿崎に託したい。」


「代理を立てると? それにどんな意味がある。この大詰めとなり臆したというのか?」


王子が被りを振る。次の言葉にはそれまで以上の感情が込められていた。


「違います! 柿崎は父上あなたを救う為に闘うと言ってくれた。。その想いは同じでも、残念ながら私にはその力はない・・故に私は彼に全てを託します! もし彼が倒れ願い届かぬその時には、私も自らこの命断つ覚悟!」


その決意を聞き届け、龍尾は一方の剣を王子の足元へ放った。

そして、カッキーには恵方巻きを投げ渡す。


「よかろう・・そこまでの覚悟ならば、柿崎ゆうたの剣をお前の剣と思い相手をしようではないか・・双方、それで良いのだな?」


2人は同じく頷きで応え、王子は放られた剣を素早く拾い数歩後ずさると、スラリと刀身を抜いて床に突き立てる。


「・・龍尾の身体に巣食うカンピオーネはどの位置にいる?」


カッキーの問いかけに、5体の守護霊獣が感覚を研ぎ澄まして龍尾の内部を探る。

出された答えは全員同じ左胸。

身体の造りに違いはあれど、そこに埋まっている臓器は龍も人間も等しく心臓である。


「やっぱりな。一番厄介な処に巣食ってやがった・・龍尾本人もまた人質ってワケか。」


カッキーは気合いこそ入れ直したが、冷静な態度を崩さないまま恵方巻きに刻み紫蘇スティックをセットする。

念を込めると、針のように細身な漆黒の刃が飛び出した。


「龍人族に伝わるこの剣に、その華奢な武器で挑むというのか・・」


「ああ・・これじゃないとダメなんだ。行くぞ! 龍尾・・カンピオーネ!」


打突に構えて龍尾目掛け駆け出すカッキー!


龍尾は斜めに剣を構え、縦横無尽にその軌跡を変化させられる態勢である。

直線的な動きに対しては圧倒的に有利だ。しかも、龍尾の剣はカッキーの剣を一撃で叩き折るほどの重さがある。


カッキーが勝るのは、武器の軽さによるスピードと手数だが、龍尾の鍛えあげられた膂力は重量において何倍もあるはずの大剣を同等の速さで操った。


果敢に攻める突きを左右後方に躱すと同時に、カッキーの剣の半ばほどを狙い鋭い振りを合わせてくる。


カッキーには龍尾を救う為の策こそあったが、その実力は初めて目にする。

持てる限りの力を駆使すれば決して勝てない相手ではないと感じたが、その狙いを追うには少々、いやかなり手強い相手だった。


カッキーは、時に刀身を護るために薄皮1枚犠牲にするほどの見切りを重ね、貼りつくように龍尾との距離を至近に保っていた。

距離を置いては何度攻めても同じだ。打突ならば一度下がらなければならないのだが、そんな単純な動きだと龍尾の目には全て読まれてしまう。


「思っていたよりずっと使えるな。さすがはレーヌが選んだ騎士だ。」


「あんたもね。さすが都市1つ護ってきた腕だ。政にかまけて鈍ってることをちょっとでも期待した俺が甘かったよ。」


「ふふ、何かを護りたい一心で身につけた技は・・そう簡単には錆びつかんよ!」


「ああ、俺も・・そう思う!」


一瞬の油断が死に繋がるやりとりの中、カッキーも龍尾も技の応酬を楽しんでいるようにも見えた。


「武器を変えてはどうだ? 先ほど見せてもらった光の刃の方が良いのではないのか?」


「言ったろ。これじゃなければダメなんだって・・」


俺は俺の護りたいものに胸を張るため・・


「絶対にあんたを救うと決めたんだからな!」


その言葉に、龍尾の剣が一瞬尻込む。攻めが止まると同時にその左胸がガラ空きになった!


千載一遇! ここしかない!


龍尾の視界からカッキーの剣が一瞬その姿を消した。


当身? いや、軽い!?


横向きに身を屈めたカッキーは、そのまま背中を預けるように龍尾へともたれかかった。


「ゴーバック恵方巻きデスフルーレ!」


「何!?」


龍尾は驚愕した。カッキーの腹を貫いてその背中に抜けた漆黒の剣先が、鳩尾からまっすぐに彼の心臓を刺し貫いている。

焼き鳥かバーベQのような状態だ。


カッキーは身をよじる勢いで、龍尾の背中まで突き抜けたその剣を一息に抜き去った。


「父上!・・柿崎!」


2人の闘いを固唾を飲んで見守っていた王子の叫びが、部屋に響き渡る。


フンッ!


カッキーはその声を背に、自らの身体からも勢いよく剣をいた。


ボトリと床に落ちた何かが、ガサガサと逃げ場を探して這いずり始める。


「王子! そいつはあんたが倒せ! この都市を混乱に巻き込んだ元凶みたいなもんだ。逃すなよ!」


そう叫ぶと、カッキーは龍尾の腹部に標準を合わせて着物ごと簀巻きを両断した。鱗に覆われた龍尾の肌からは血も滲まない。


「こ、これが、父上の身体に巣食っていた魔獣カンピオーネの正体か・・」


王子もまた逃げ回る小さな影の動きを見極めると、伝家の宝刀の剣先にそれを見事突き刺し捕らえていた。

その姿は蛇とも蜥蜴とも、また百足ともつかない多足で胴の長い爬虫類である。龍のミニチュア版というにはあまりにもおぞましい。


「し、しかし、父上は・・」


よろよろとした足取りで龍尾の方へ歩み寄る王子だったが、そんな彼に龍尾本人が声をかける。


「案ずるな。。お前の信じたこの男が、絶対に余を救うとあれほどの目をして言ったのだ・・」


無事でないワケがなかろう・・


まぁ、カッキーは最初から龍尾と差し違える気などなく、あれは刺し貫いた部分の時間を逆行させる霊獣ペリノニムの技である。

本来なら、そのまま貫き続けることで最終的には無に還すことや、逆に時間を進めて老いから死へと追いやることも出来るが、あくまで接触し続ける必要があるので使い所を考えていた技でもあった。

範囲を絞るとそのスピードも増すので、過去に変な病気などしていないのなら、カッキーも龍尾も少し身体が若返ったくらいだ。


龍尾の身体から、龍の姿をした陽炎が浮かび上がる。


『俺様ともあろう者がとんだ不覚だった・・苦労をかけたな龍人の王、そして王子よ。だがもう安心せい。悪しき意思はたった今この都市から消え失せた。』


お前もな、龍が如く勇ましい人間の少年。おかげでいくつもの龍の血が救われた。


「・・霊獣カンピオーネ、龍水脈の話は本当のことなんですか?」


『龍水脈が龍人の血脈によって維持されたものであることは本当のことだ。だが、それは何も純血のとは限らないがな。』


血脈というものは、その誇りによって受け継がれるものだからな。ここに住む者に、誇りと自覚がある限り、龍水脈はこれからも弛まぬ恵みを与えてくれよう。


「そうか・・それで分かった。あの魔獣が、腐敗した龍人の心を利用して水を汚したのだということが・・あの水は余の龍人としての誇りの穢れを象徴していたのだな・・」


『龍人の王、龍尾。あれは、魔獣と一体化させられていた俺様の魔力が成したことだ。だが、その解釈や良し。今頃運河の水も元の清らかさを取り戻していることだろう。』


「しかし、そうとはいえ余はドラグドラドの民たちには酷いことをしてしまった。。この機会にお前に家督を継いでもらうのも良いかも知れぬな・・」


もちろん、陰ながら余もお前を鍛え盛り立てていこうと思うがどうだ?


「そうですね。でも父上、まずはみんなとも相談してみましょう。いずれは私も王位は継ぎますが。。政なら、1人や2人より、みんなで決めていくのもきっと素晴らしいものになると思いますよ!」


ワア!と拍手と歓声が湧き上がる。


扉の内外でレーヌ、彩奈、タカ、それからあの初老の龍人を始めとする宮廷の兵たちが晴れやかな顔で惜しみない応援を2人の親子に送り、カッキーの活躍を称えていた。みんな、どのあたりから見てたんだろ?

夢中になってて、気が回らなかった・・あ・・レーヌの口の周りにガムテープの跡・・可愛いが許せん。許せんが可愛い・・


「龍尾。あなたはもう1人で悩み苦しむことはありませんよ。あなたの誇りは、この都市全ての人々の誇りと、これから1つになってゆくのです。私も、出来る限りの協力を惜しみませんので。」


「ああ、今は先に解決しなくちゃならないことがまだあるが・・ゲートが回復したらまたウナートラともお隣さん同士みたいなもんだろ。これからもよろしく頼むぞ。」


ウッキー! ウッキー!


「・・これまで、余はお前に抜かれたと感じたことはなかったが・・今1つ大きく越えられた気がするな・・」


「試練があれば、一緒に越えて行きましょう父上。」


美しい水の都に、再び一本の平和への道が開けた。その道は、この先いくつにも枝分かれしながらいつか1つの未来へと繋がっていくだろう。

そう、このドラグドラドに廻らされた運河、水路のように。

誇りという名の血脈が途絶えない限り、それはどこまでも永遠に続いていくのだ。


ー後日談ー 王子の名は輝龍と書いてキリュウ


その後、事件の真相は都市中に知らされた。

王子や、宮廷の上層部に加えて、レーヌや彩奈も壇上から演説をしてくれたので、心に傷を追っていた人々にも次第に理解の輪が広がりつつある。


既にドラグドラドを出て行ってしまった人や、結婚の機会を逃してしまった人など、容易に取り戻せない問題は残るが、今後の解決に向けては可能な限りのフォロー体制も発表された。


今後は、試験的に民間から選出された議員と龍尾や王子を含む宮廷上層部を合わせ、統合評議会による政を試みていく流れとなりそうである。



霊獣カンピオーネは、俺様も力を貸してやってもいいとは言ってくれたものの、卑怯でみみっちい百足蛇の身体になど二度と宿たくないというので、代わりに龍尾の角を模した装飾品に宿ることになった。

なんと、これが干瓢で出来ていたというのだから世の中わからない。


彼の性格は、基本偉そうに上から目線で接してくるらしいが、意外と精神的に若いようでたまにウザキャラと化すこともあるという。


司っているのは『薬効』であり、粉々になってしまった彼の祠には、かつて『傷病滅する 息吹の螺旋』と彫られていたらしい。

まぁ、回復系ってことだな。



数日間滞在している間、レーヌと彩奈は毎日あのドラゴンパフェを食べに『パーラードラゴン』へ足しげく通っていた。

なんでも人前で演説をするには多大なカロリーを消費するのだとか・・ホントかよ?

まぁ、頭を使うと糖分の消費量は多くなるというのはそうらしいが、どう考えても1日花瓶3杯はヤバい。

案の定、ドラグドラドを後にする日には2人の頬っぺたはテカプルンとふくよかになってしまっていた。

これはこれでめちゃくちゃカワイイし、人によってはこのくらいの方が好み、という男性も多いだろう。


しかし、それはあくまで男子目線でのこと。美味しいスイーツは好きなだけ食べたいが体脂肪とはお友達になりたくないのが女の子の常である。

ダイエットの為ゲートロールは使わずに歩くと言い出した時は冗談かと思ったのだが・・


今もこうして、一行は西のカブン湖目指してヅンドレラの広大な砂漠をえっちらおっちらと歩いているのである。

まともに付き合う気はないので、スタグホーンに涼しい風を送ってもらい1人ズルをしていたカッキーではあったが・・振り返るたびにまだまだあの名残惜しかったドラグドラドの外壁が見えることには何度も絶望感を味わうのだった。


さて、次の目的地にたどり着けるのはいつの日になりますことやら・・それではまた、次回の講釈で。

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