-序章末期-
平民は一つ、妙な提案をしていた。
義が行われる前日の皆が寝静まった頃に妖術師のいる隣村まで赴き義の準備をしていた妖術師にこう話した。
「この義が始まる時に我が生涯最期の頼みを聞いてもらえまいか?勿論礼は用意してある」
「いや、なんてことはない。簡単な事を一つだけ聞いてくれるだけで良いんだ、苦無どころか空無の石と改まっちゃいるが姫君がもし自分の最期を見るまでもないと判断し義の行われる場から離れようとした場合は…」
「まやかしと、気味が悪い様なものを見るのは好きだろう?」
…
そして姫君は側近に小声でこう話した
もう良い。と。
愛した人が傷つく姿は見るに耐えない。
と、”心にも思っていない様なこと”を言った後、だから、屋敷に戻ります。
と軽く言い放った、それは平民にとって合図だった。
妖術師は何かを呟いた。
瞬間空無の石に姫君は縛り付けられる。刹那周りの何もかもが黒い炎で焼かれている、身を焦がれ骨が見えた時にその骨は真っ黒だったという。
平民は恐ろしい顔をしながら痙攣を起こしている目の前の物を見つめながら、
その痛みに悶えることもなく目を閉じた
「儚くせつなくむなしい…そんな義だった。」
最期なのにそんな達観をしながら
…
「と、言うのがこの地のあの『空無の石』の伝説じゃて」
「無理もないよ、初めてこの伝説を聞いた人は大抵そーんな顔をする」
旅人は一つの疑問を恐る恐る口に出してみた
「妖術師はどうしたかと?、一説には黒い炎に自らも巻き込まれたとか、今でも生きているだとか。」