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超魔法少女グレンオー  作者: 窓井来足
第二章
4/19

「あいつがライバルか? その1」

この回から、二号ポジションである超魔法少女ストームが登場します。


さて、このストーム。

果たしてグレンオーの敵なのか、味方なのか……。

『超魔法少女グレンオー』とは。

 虹華夢幻郷(こうかむげんきょう)で放送されている〈事実を元に作られた〉特撮番組である。

 この『超魔法少女グレンオー』が属する『スーパー魔法少女』シリーズは第一作目が制作された五年前から「虹華夢幻郷で怪人と戦う魔法少女の活躍のエピソードを元にした特撮番組」というコンセプトで制作されているのだ。

 ちなみに、この作品のDVDや玩具の売り上げの一部は、虹華夢幻郷に出現した怪人によって被害を受けた方々の支援や、魔法少女の新たな装備の開発、および実際に魔法少女として活躍している少女達への報酬として利用されているのだった。

 で、このシリーズ。

 五年前まで「ヒーロー番組」という概念が存在しなかった虹華夢幻郷では男女問わず、子ども達に大人気シリーズであり、また大人のファンいわゆる「大きいお友達」も多数存在する作品なのである。

 こんな、虹華夢幻郷における超有名作品であるので。

 特撮版で魔法少女を演じている女優だけではなく、実際に戦っている方の少女にもまたファンがいたりするほどなのであった。

 なので。


「ここの公園でもあたしと握手!」


 暮無桜(くれないさくら)もまたファンを相手に握手をしたりとサービスをしていた。

 ちなみに、ここにいるのは子どものファンばかりである。

 これは本物の魔法少女(この場合は桜)の活動は公式イベントではなく日時を決めずに行われており、今日は平日の昼間に単なる公園で活動しているから――というのもあるが。

 彼女の無茶苦茶な活躍に大人のファンは「フィクションならともかくリアルであんな、弟にコブラツイストかけたりするような女の子と関わるのはちょっと」と思ってごく一部の特異で珍奇な好みを持っている人――この小説の筆者みたいな人――以外はいなくなってしまったからというのもあるのであった。

 で、このファンの反応に。

 桜本人は「あたしが弟にかけるのはフジヤマ・タイガー・ブリーカーとかアラバマオトシ、あるいはウルティモ・トペ・パターダなのに」と呟いていたが。

 そんな現実離れした技が果たしてかけられるのだろうか?

 いや、桜の能力なら可能だったりするかもしれないから怖いのだが……まあ、気にしないことにしよう。

 さて、子どもたちを相手にした非公式握手会も一段落ついたところで、桜の相棒であり、イベントの時はマネージャーも兼ねているオウリュウは。


「しかし、桜君も子どもばかり相手にして大変だろう」


 と、買ってきた缶ジュースを渡しながら桜に声をかける。


「いや、あたしこういうの結構好きだから」


 そう返した桜にオウリュウは、前回のこともあってか「何だかんだ言って正義感が強く、しかも子ども好きなんて、やっぱり彼女を魔法少女に選んで良かった」と改めて思ったのだが。

 数日前に彼女が家でアニメを見ているときに呟いていた。


「……おねショタってのも悪くない……」


 という言葉を思い出し、「いや、駄目なのかも。というか危ないかも」と少し思った。

 そんな時に。


「うわあぁぁぁぁん!」


 子どもの泣く声が聞こえたので、オウリュウは一瞬「ついに桜が子供たちの前で本性を露わにしたか」と勘違いしたが。

 すぐに「いくら桜でもそれは無いか」と気持ちを切り替え、悲鳴の方に顔を向ける。

 それは、丁度さっきオウリュウがジュースを買った自販機の方だった。

 そこにいたのは怪人、ネガティヴハートである。

 その容姿は自動販売機を中心として、排水溝やマンホールなど道路にあるものを足して、それらを人型に組み合わせたような見た目である。

 ちなみに、悲鳴を聞いて同じように怪人を発見した桜は「今度のも、この前のとは別の人だけれど長年特撮で怪人を描いている有名なデザイナーさんが手がけた怪人に似ている。特に本体が自販機だからか、機械がウイルスに感染して誕生した怪人っぽい」と感想を持ち、その容姿を結構気にしていたのだが。

 最終的には前回と同じようにまさか怪人が有名デザイナーさんの真似をして容姿を決めている訳がないので、やはり偶然なのだろうという結論に至った。

 それはともかく。話を怪人に戻すと。

 その怪人は。何と不届き千万なことに。

 子ども達から無理矢理、財布を取り上げていた。

 これは誰がどう見ても完全にカツアゲというものであり、しかも力のない子ども達を狙っている。

 つまりこの怪人はゲロ以下のにおいがプンプンする、生まれついての悪に違いない。

 そう思った桜は変身するのも忘れて、怪人に跳び蹴りを食らわせようとした。

 のだが。


「俺だけ小銭を排水溝に落としちまうなんて最悪だ! テメェらの小銭も同じ目に合わせてやる!」


 といって怪人は、子ども達から取り上げた財布から小銭だけを巻き上げ。

 お札の入った財布の方はわざわざ子ども達に返却してから、自身の身体の一部になっている排水溝の中に奪い取った小銭をつっこんでいるのを目にしたため。

 桜はその行動の馬鹿馬鹿しさに思わず跳躍を失敗してずっこけた。

 いや、小銭だけとはいえお金を奪っているのだからどう考えてもこの怪人は悪だし。

 彼らネガティヴハートは(コア)になっているマイナス思考に則った悪事を働くのだからこの怪人の行動は怪人としては正しいのだろうけれど。

 だからといって小銭だけ奪うカツアゲというものをアホらしいとも思わないでいられるような方向には、桜の頭脳は非常識にできていないのだった。

 まあ、とりあえず気を取り直して。


「やめなさい!」


 と、桜は怪人に待ったをかける。


「誰だ? お前は?」


 尋ねる怪人。

 どうやらこの怪人は「桜が超魔法少女」ということを知らないらしい。

 これはまだ本物のグレンオーが怪人と戦ったのは前回の怪人一人だけなので、本物の怪人には桜についての噂が伝わっていなかったからである。

 ちなみに、虹華夢幻郷においてのテレビ番組『超魔法少女グレンオー』は現在第十二話まで進行しており、作中のグレンオーは怪人を二話に一人ペースで六人倒しているが、最初の一人以外は全て作品オリジナルのエピソードで、元となった実際の事件はない。

 それでいいのかと思われるかもしれないが、そうでもしないとテレビ放送できる数のエピソードである約五十話が作れないのだから仕方がないだろう。


「あんた、あたしを知らないなんてそれでも怪人なわけ?」

「何ぃ?」


 自分は虹華夢幻郷においてテレビ番組の元ネタになっていることで知名度が上がっている有名人だと思っている桜は自分のことを知らなかった怪人に呆れる。

 おそらくはつい最近誕生したばかりの怪人が、テレビを見ているはずもないのだが。

 そんなことを桜が気にするはずもない。

 そのため相手を怪人なのにヒーローとして有名な自分を知らない無礼なヤツと認識した桜は。


「冥土の土産に教えてやる。極悪非道(ごくあくひどう)邪知暴虐(じゃちぼうぎゃく)無法千万(ぶれいせんばん)魑魅魍魎(ちみもうりょう)跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)するこの末法末世(まっぽうまっせ)において、勧善懲悪(かんぜんちょうあく)破邪顕正(はじゃけんせい)を貫く、天下無敵(てんかむてき)一騎当千(いっきとうせん)完全無欠(かんぜんむけつ)百戦錬磨(ひゃくせんれんま)国士無双(こくしむそう)永久不滅(えいきゅうふめつ)の伝説の戦士! 超魔法少女! グレンオーとはあたしのことだっ! 覚えておけっ!」


 などと四字熟語を並べた名乗りで威圧しようとした。

 ちなみに、あまり勉強ができる方ではなかった桜が四字熟語をすらすらと並べることができたのは、とある特撮の宇宙警察の刑事(デカ)の影響である。

 ちなみに、このハッタリに対してオウリュウは。


「前半部分の内容が〈虹華夢幻郷〉の名前の由来にまったくふさわしくないんだけど……」


 と、冷静にツッコミを入れながら「テレビ版の方では王道変身ヒロインもの路線を狙いたいから、あの部分は『夢と希望に溢れる世界を壊そうとする不当な輩と日々戦う』とかそういう表現にしよう」と決めた。

 そして、この名乗りを聞いた怪人は。


「お前、とりあえず適当に四字熟語並べてハッタリかましていい気になるなよ!」


 と、鋭い指摘をした。してしまった。

 前回からの流れを理解している人は分かると思うが、この手の言葉に桜が反応しないわけがない。

 なので当然のことながら。


「あ! お前、よくもあたしが言われたくないことを言ったな!」


 と怒り、そして。


「絶対に許さない! ――魔導填身(まどうてんしん)ッ!」


 と、変身したのだった。

 さて今回のこの変身。

 前回と違い桜たちの世界から虹華夢幻郷への移動はないため、異空間に移動してのものではない。

 公園の風景の中に魔法陣が登場するというような感じでの変身となっている。

 余談だが、グレンオーも含めたオウリュウたちの開発した魔法少女変身システムの変身が、世間の魔法少女ものでよくある「身体のラインがわかる状態の上に徐々にコスチュームを纏っていくもの」とは違って、特撮ヒーローに多い「服の上に鎧や特殊なスーツを纏うイメージのもの」なのは「風景の中での違和感のない変身」というのを考慮しての結果である。

 まあ、それはともかく。


「超魔法少女グレンオーがグレンオーアーマーを身に纏うタイムはわずか0.05秒に過ぎない。そのプロセスが見たい人はテレビでの放送を見るか、DVDやBDを買ってね」


 変身し終えたグレンオーは、さりげなくというには、いささかわざとらしい商品の宣伝を行なった。

 ちなみに、虹華夢幻郷における映像作品中でのグレンオーの変身シーンはどう考えても三秒以上、場合によっては十五秒程度はあるのだが。

 あくまでこれは視聴者にわかりやすいように演出上そうなっているのである。

 実際の変身では、変身時に時間感覚が通常とは切り替わっている桜本人などを除いては映像作品みたいな変身を見ることはできない。

 まあ、あれこれ細々と変身シーンについて文章で書いてもイマイチ伝わりにくい部分があるとは思うので、グレンオーではないが、これについて気になる人は是非、どこかで特撮版『超魔法少女グレンオー』の映像を入手して確認していただきたい。

 ……現実世界(われわれのせかい)でこの作品が実写化される可能性は限りなくゼロに近いけど。

 さて、変身の説明から話を戻すと。グレンオーは。


「だぁーだだだ、だだだっだだっアァァァ!!」


 と叫びながら、問答無用で怪人を殴りまくっていた。

 ちなみに、殴る前にさりげなく〈ラッシュジュエル〉という連続攻撃をすればするほど威力と速度が上がるという宝石をベルトに差し込み使用していたりもする。

 勿論、宝石使用時には「Rush Jewel!!」という音声がベルトから出ていたのだが。

 その音声は先の変身に関するグレンオーの台詞と同時に出ていたので、あまり周りに意識されていなかったのだった。

 この連続攻撃をもろに受けた怪人はその威力が最高潮に高まる最後の一発を受けて、軽く約八メートルはぶっ飛んだ。前回より大体三メートルも余計に吹っ飛んでいる。

 そしてグレンオーは怪人が吹っ飛ばされて空中にいる間に、ソード・グレンマルを召喚。

 魔法陣から登場し宙に浮かんでいるそれの柄を掴むと、すぐに〈ガンジュエル〉をグレンマルに取り付け、ガンモードに変形させる。今回も近距離戦で吹き飛ばし、遠距離攻撃に繋げるつもりである。

 だが。


「くっ! これでも喰らえ!!」


 ぶっ飛ばされた怪人が立ち上がりながら、ジュースの缶……によく似た形の弾をグレンオーに向けて発射してきたため、グレンオーは攻撃態勢からそれらを避けたり、あるいは撃ち落としたりすることとなり、当初の予定通りにはいかなくなってしまった。

 しかし、そこは天才的な戦闘能力を誇るグレンオーである。

 直ぐさまソードグレンマルをソードモードに切り替え、それを使いジュース缶の弾をはじき飛ばしながら怪人に駆け寄った。

 無論、常識的に考えれば敵の弾を剣で叩き落とし、その上相手との距離を詰めるなんていうのはありえない戦術なのだが。

 グレンオーは自身の戦闘スタイルを基本的に特撮かアニメ、あるいは漫画などを参考にして戦っており、変身ベルトであるグレンオードライバーに内蔵されている戦闘サポート用のシステムもそれを可能とするだけの性能を備えているので、こういうこともできるのである。

 とまあ、こうして距離を詰めたグレンオーは、ソード・グレンマルに〈チャージジュエル〉をセット。するとグレンマルから「Full Charge!! Crimson Slash!!」という音声が流れると同時にグレンオーの(アーマー)のピンクの部分とグレンマルの刀身が赤く変色し、発光!そして。


「うおぉぉぉぉぉ! 喰らえ!! 必殺・ぶった斬り!!」


 グレンオーは今回もグレンマルが発した技名とまったく違う技名を叫びながら、蓄積(チャージ)されたエネルギーを纏って剣を構えて突撃(チャージ)する!!

 のだが、その技は空を切るだけで終わった。

 それは敵怪人が素早く回避したから――ではなく、グレンオーが剣を振るう前に、どこからか飛んできた(やじり)のような二つの物体が怪人を貫き、その事で致命傷を受けた怪人が。


「な、な、何だあァァァァァ!?」


 という断末魔を挙げながら爆発四散してしまったからであった。

 さて、この攻撃だが。

 グレンオーは瞬時に魔法少女による攻撃だと見抜いた。

 その理由は攻撃が炸裂し、敵が爆発四散した際にグレンオーのものと同じ、魔法少女のシンボルマークが浮かび上がったからである。

 だが、自分の他にもまだ魔法少女がいるのか?

 いるとして、そいつは何者なのか?

 そんな疑問を抱いたグレンオーは攻撃に使われた鏃のような物体がまるで空中にある見えない糸に引かれるかのように飛んできた方向に戻っていくのを目撃。

 それを追えばこの攻撃を放った相手の正体がわかるかもと思ったグレンオーは鏃を目で追う。

 すると予想通り、鏃の戻っていく先。公園の電灯の上に(たたず)む人影が。

 それはどう見てもグレンオーと同じタイプの魔法少女。

 つまり、特撮ヒーローっぽいけどおそらくは魔法少女と思われる人物の姿。鎧のようなものを身に纏い、頭部にはフルフェイスのメットを被っているという姿であった。


「おい! お前、何者だ?」


 グレンオーはとりあえずは相手に声をかける。すると相手は。


「僕かい?」


 と、反応。

 一人称は僕だが、その声は女性である。

 まあ、この手の世界(さくひん)ではそういう人物はよくいるものなので気にしてはならない。


「僕は――敵か味方か、謎の超魔法少女!! ストーム!!」


 そう名乗りながらポーズを決めたその超魔法少女。

 彼女は名乗り終えた後に「とうっ」と叫びながら電灯の上からジャンプし。

 グレンオーの目の前に右膝、左足、右の拳を使っての三点着地――通称、スーパーヒーロー着地。膝に悪いとされる――で降り立った。

 それに対して、グレンオーは攻撃を警戒して身構える――なんてことはせず。ストームの方に手を伸ばし。


「と、いうことは。つまり仲間か。よろしく、ストーム」


 握手を求めた。ストームもそれに応じ。


「うん、よろしく」


 と握手をした。のだが、すぐに。


「……って、敵か味方かっていったじゃないか。君は聞いていなかったのかい!?」


 握手を振りほどいてしまった。

 このストームの発言にグレンオーは。


「だって、『敵か味方か』って言ったら基本味方じゃない」


 と返す。

「敵か味方か」という言葉が出たら大抵は味方という、フィクションでのお約束がここまで定着していると。

 逆に「自分でその言葉を言って味方のように登場したヤツが実は敵」という可能性もあるのだが。

 グレンオーはその点について「こちらから敵対心を持って対応すれば、かえって不利になるかもしれない」と判断して、握手を求めたりといった行動に出ているのだ。

 まあ、この考え方より先に「これから先の展開としてやっぱり二号ヒーローは必須でしょ。ちょっと出てくるのが早い気がするけど……最近は開始時点で二号三号が登場するのはよくあるし」という発想があったことは否めないのだが。

 それはさておき。


「まったく、そんなに簡単に人を信用するなんて、戦士としてはどうかと思うんだけどね」

「さっきから気になっていたんだけど。ストーム?」

「何だい?」

「あんたのその喋り方と、声、それから〈ストーム〉って名前からして……もしかしてあたしの後輩の永礼嵐(ながれらん)じゃない?」


 どうやらグレンオーにはストームの正体について心当たりがあったらしい。

 そして、グレンオーには特撮でよくある「声や喋り方が変身前と変わっているようには思えないのに、何故か周囲は正体に気がつかない」というタイプのお約束は通用しないようだ。

 いや一応、特撮作品中の登場人物たちをフォローしておくと。

 あれは視聴者にわかりやすいように映像作品の演出として変身後の声も変身前と同じになっているのであって、実際は声の質が変わっている可能性が高いのだけれど。

 特撮作品の中には「敵の怪人に変身している人間の正体が視聴者にもわからない状態の時には、視聴者が聞いている敵の声も正体の人とは別の声になっている」というタイプのものもあるし……

 と、そんな特撮についての考察はともかく、話を戻そう。

 グレンオーに名前を挙げられたストームは、まるでフィクションのキャラクターみたいに。


「ぎくっ」


 と言った。

 この言葉。

 本来なら実際に口にしている人間がいるというのは非常に違和感のある台詞なのだが。

 彼女たちの今の格好もまたフィクションのキャラクターみたいだったことや。

 フルフェイスのメットを被った状態で相手に感情を伝えるためにボディランゲージやオーバーリアクションを変身後は普段から多用していたこともあって、そんなに違和感を感じさせなかった。


「ほら、やっぱり嵐じゃない」


 しかし、「違和感がない」ことと「聞き逃してくれる」ことは違う。

 グレンオーはストームの反応から、彼女の正体を後輩の嵐だと確信した。


「……その通り、このものの正体は我輩が選んだ優れた戦士の素質を持つ高校生、永礼……」


 そう言いながらストームの背後から現われたのは、オウリュウと同じぐらいのサイズの白と青のカラーリングの虎型のロボットみたいなヤツだった。

 会話にいきなりロボットが割り込んできたわけだが。

 その事についてグレンオーは既にオウリュウの存在も知っている事もあって「あ、ストームにも似たような仲間がいるんだ」程度の感想しか持たなかった。

 むしろ慌てたのはストームの方であり、彼女は、


「フーコ、ちょっと黙りたまえ」


 無理矢理そのフーコと呼ばれた虎の口を押さえて黙らせる。

 その行動は「虎口を無理矢理ふさぐ」と表記すると危険を無理矢理押さえ込んだみたいにも読めるのだが。

 彼女にとっての現状における「危険」(と、言えるかは微妙だが)である「自身の正体がばれる」ことを回避するのは、もうどう考えても不可能な状態になっていた。


「なぁんだ、嵐も超魔法少女やっていたんなら、教えてくれれば良かったのに。じゃあこれからは二人で協力して――」

「……さ、さらばっ!!」

「あっ!!」


 こうして、ストームを名乗った自称・謎の超魔法少女は登場と同じように、唐突に去っていったのであった。


「何だったの? 今の?」


 後に残されたグレンオーは呆れたようにそう呟く。

 同じく呆れていたオウリュウは一応。


「ま、まあ本人がいうんだから〈謎の超魔法少女〉ということにしておこうじゃないか」

 

 とストームをフォローするような発言をしたが。

 言ってから「登場直後に何の謎も抱かせることなく正体がばれた彼女を〈謎の超魔法少女〉という通り名で呼び続けるのはかえって可哀想な気が」と気がついたのだった。

 とまあ、こんな感じで。

 新しい超魔法少女、ストームがグレンオーの前に姿を現した。

 彼女の正体が桜の後輩であることはもうほとんどバレバレだが、まだその目的は何なのか、何故正体を隠すのかはわかっていない。

 この辺りについて、グレンオーは疑問を抱いて――


「新しい超魔法少女との合体必殺技とか、二人して名乗るときの台詞とか考えなくちゃ」


 ――は、あまりいなかった。

 そんな細かい事は気にしないのがグレンオーである。

 実のところ、この性格こそストームが怪しい行動をしている理由だったりするのだが。それを桜が知るのは、この日の翌日のこととなる。


(続く)

という訳で。ストームが登場しましたが。

果たして彼女の正体は……まあ、ほぼ作中で描かれていましたが。

詳しくは(その2)で!!

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