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超魔法少女グレンオー  作者: 窓井来足
第四章
12/19

「アバレハートはギンギン中 その3」

さて、虹華夢幻郷での怪人とのバトル!!

ですが、二人の様子がいつもと何か違うようで……

「伸びちまっているじゃねーかッ!」


 虹華夢幻郷に到着したグレンオーとストームの前で、カップ麺やポットを意識していると思われる外見の怪人が暴れている。

 その姿や、先の発言から、おそらくは「カップ麺にお湯を入れっぱなしにして、うっかり忘れてしまった悲しみ」辺りから誕生したのだろう。

 その怪人に。


「そこまでだっ!」


 と、いきなり待ったをかけるグレンオー。

 まだ、怪人が何をしているか、確認したわけではないのだが。

 ヒーローもののお約束として、グレンオーはとりあえず叫んでいるのだ。

 気にしてはならない。


「なんだ? お前等は?」


 これに対して、怪人がいちいち反応したが。

 彼ら、ネガティヴハートの場合は、いつもストレス発散、憂さ晴らしの相手を探しているような状況なので、反応したのであって。

 決してヒーローものの怪人のお約束として、ヒーローに構っているわけではないのだ。

 さて、カップ麺怪人に尋ねられた二人は、昨日の深夜に決めた内容を思い出し。


「我々は天から舞い降りた――」

「地獄の断罪者!!」

「「超魔法少女!!」」

「グレンオー!!」

「ストーム!!」


 と、どう考えても矛盾した名乗りを挙げた。

 これはグレンオーは「天から舞い降りた光の戦士」という名乗りを。

 ストームは「闇より生まれし地獄の断罪者」という名乗りを考案していたのだが。

 それぞれ「自分のが正式採用された……はず」と思っていたため、そのまま名乗ったらこうなったのである。

 まあ、考え方次第では「この二人の世界観では地獄は天にある」とか「何らかの理由で地獄の断罪者が天に行っていた」あるいは「地獄の断罪者とは〈地獄を断罪する者〉という意味である」など色々言える――が。

 彼女たちはそんなことを二人は冷静に考えている暇はなかった。

 何故なら――


「――あれ? ねえ。ストームってそんな鎌みたいなの、腕や脚についていたっけ?」

「そういう君こそ、何だい? その腕や脚のギザギザしたのは? なんかの恐竜もののヒーロー……とか、そんなのかい?」

「……………………」

「……………………」

「「な、何だ、こりゃあ!?」」


 ようやく、互いの身に起こっている異変に気がついた二人。

 二人の解説通り、グレンオーは腕や脚にギザギザしたものが。

 ストームは腕や脚に鎌状のかぎ爪が。

 それぞれ生えていたのだ。


「む、この状態は――」

「知っているのか、フーコ!?」

「いや、知っているというわけではないが……おそらく、ベルトのバックルのせいか、と」

「ベルトの……バックル?」


 言われて、ベルトのバックルを確認するグレンオーとストーム。

 その目に映ったものは、いつもと違うバックルだった。

 中央の部品はいつもと同じ色なのだが、左右の部品が、別のものに入れ替わっているのだ。

 どうやら、慌ててバックルを組み直し、変身したために、相手のパーツと自分のパーツがごちゃ混ぜになってしまったらしい。


「以前、説明したかもしれないが」


 オウリュウがそう、言ったことをすぐに忘れそうなグレンオー向けとも、この回から読む読者向けともとれる前置きをしてから。


「グレンオーとストームのベルトは、初めての変身のときに、持ち主を認識するようになっている。それによって、変身後の姿は持ち主が思う『戦士の姿』に近くなるようになっているんだ」


 と述べる。それにフーコも。


「だが、今回、相手のベルトの部品が混じっているであろう? おそらくはそれによりお互いが思っている相手のイメージが混じってしまい、結果、暴走形態になっている――のだろう」


 続ける。


「とりあえず、この形態をマックスハー……いや、マキシマムハートと名付けよう」


 名前の提案をしたのは、オウリュウ。

 確かに、その名前は何故か、女の子が変身するヒーローとしてはいささか迫力のありすぎるアクションシーンが多い感じを連想させる気がするが。

 そんな名前でいいのだろうか?

 なんて、疑問をもっている暇はグレンオーにもストームにもなかった。


「俺のこと、無視してんじゃねー!!」


 話から置いてきぼりにされた怪人の怒りがついに爆発し、カップ麺を触手のように伸ばして攻撃してきたのだ。

 咄嗟にそれをかわした、グレンオーとストームにフーコが。


「あの怪人は、外見からしておそらく、麺をイメージした触手や、ポットからの熱湯で攻撃してくるはず。気をつけよ」


 と注意をしたのだが。


「グレンオー、あいつ、倒す!」


 とどういう訳か、大自然の中で育った、野生なヒーローっぽい感じに暴走しているグレンオーと。


「愚かな怪人よ、永久(とこしえ)の深淵より生まれし、魔皇(まおう)の血族たる我が呪い、我が魔力の力を受け、虚無に還るが良い! ヴェハハハハハハ!」


 なんか、非常に暗黒面に墜ちたように暴走しているストームは、その注意をあまり聞いていなかった。

 どうやら、暴走が進んでしまい、外見だけではなく、内面にも影響が出ているようだ。

 とはいえ、それでも自我を保っているのは、実のところ前回のエピソードで特訓した魔力コントロールによる影響なのだが。こんな状態なので二人はそれに全く気が付いていないのだった。


「ふん! 暴走してまともな判断ができないようだな! これなら楽勝だぜ!」


 怪人は調子に乗り、グレンオーに熱湯を浴びせようとするが。

 これをグレンオーは、暴走したために研ぎ澄まされた五感によって、シュバ! シュバ! と回避。


「くっ! ならこっちだ!」


 今度は、ストームを狙い、麺を意識させる見た目の触手による攻撃をする怪人。

 だったが。


「伸びた麺でこのストームを縛ったりできるかッ!」


 と言いながら、ストームは触手をかぎ爪で切断してしまったのだった。


「――な、何ぃ!? き、貴様らァ! 美少女ものなんだから、水とか触手とかで、お色気シーンがあるんじゃないのか!?」


 怪人は、自身の攻撃があまりにあっけなく敗れ去ったためか、何故か読者の気持ちを代弁するかのような苦情を二人に投げかける。

 これにグレンオーは、


「超魔法少女、色気、ない!」


 という、女の子キャラが胸を張って、堂々と言っていいのかわからない台詞を吐く。

 ただ、彼女のいう台詞が「あたし達に色気はない」という意味ではなく、「この作品にそういう描写はない」という意味なら、その発言は、かなり正しい。

 何故ならこの作品は、場合によっては、男性ファンからの人気を得るための水着シーンや温泉シーンも。

「行けたらよかったのに」という、登場人物達の妄想あたりで誤魔化されるような作品になりつつあるので。

 お色気はほとんど期待できないのだ。

 また、この時ストームは怪人の質問に、


「まあ、我々はナイスバディかもしれないが、貴様の望みには応えられないという事だ」


 と付け足した。

 ちなみに、この〈ナイスバディ〉とは〈ナイスな相棒(バディ)〉の意味であり。

 本来ならこの言い方は男性同士で使うのだが。

 ストームは「我々はヒーローである。ヒロインではない。英語圏でも〈女傑〉はヒーローであるから、ヒーロー二人組が〈ナイスバディ〉でも構うまい」と前から考えており。

 それが暴走により無意識的に世間でいう〈ナイスバディ〉とごっちゃになったので口にしているのである。

 まあ、実際に英語圏でその用法が通じるかは筆者(わたし)も知らないが……中二病の者が良くわからない外国語を使う事はよくある事だ。

 むしろ、何故か中二病キャラがよく使うドイツ語を適当に使ったのではないだけマシだろう。

 で、このグレンオーとストームの答えに対して。


「いや、だって、前回の次回予告から考えると、今回はそういう回だったはずでは?」


 という、なんでお前がそんなこと知っているんだ? というか、次回予告なんてこの小説にないはずなのに何言ってんだ? とでもいいたくなるような疑問を口にする怪人。

 これに二人は。


「あれ、嘘予告」

「次回も観てもらうために、実際の内容とは違う内容を書いたり、本編では使わない映像を入れたりするというのは、漫画やアニメの次回予告ではよくあることなのだァ――ッ!!」


 と説明する。

 確かに、次回予告は「宣伝」とは扱いが違うためか、結構、嘘が入っている事もある。

 何せ世間には、原作小説の表現を再現することと、エイプリルフールを意識したことで、次回予告の映像がほぼ丸ごと嘘だったという例もあるぐらいだ。

 とはいえ、何故か視聴者視点でお色気シーンを期待していた怪人が、その説明に納得するわけもなく。


「し、しかし……お色気シーンがない美少女ものなど、売れるのか?」


 という疑問を挙げる。

 今度のこれは視聴者というより制作側としての疑問にも聞こえる。

 だが、制作側の事情に強く興味を持つファンもいるので、彼もそういう類のファンだったのだろう。

 何で怪人が、自身の登場している作品のファンになっているのかは、結局、謎ではあるが。

 それはさておき。

 この疑問に対してはストームが。


「さっき我が配下、フーコーによる、貴様の貧弱な技に対しての解説があったであろう? DVDやBDみたいな映像商品、あるいは公式動画サイトで動画配信された時に、ディレクターズカット版だとその部分にイメージ映像がつく。それでも見て楽しむがよいぞ!」


 と、映像作品化を意識した回答をする。

 これを、さっきも例としてあげた、水着回・温泉回で例えれば。

 何故か作中登場していないはずの水着や、浴衣姿のイラストが描かれたり、フィギュアが発売したりすることは、この手の作品ではよくあることなので。

 この作品でも、そっちの方は期待してもらいたい。というところになる。

 ――まあ、そもそもこの作品が現実世界(われわれのせかい)で映像作品や、フィギュアになるとは、到底思えないけど。


「そ、そんな商売……ひ、卑怯だぞ!」


 と、もし筆者(わたし)がプロなら「卑怯というなら買わなきゃいいじゃん。こっちは仕事でやっているんだぞ!」とツッコみたくなるような主張をする怪人に、二人はダッシュで接近。

 まず、ストームが。


「売れればよかろうなのだァァァァッ!!」


 といいながら、腕についた鎌状のかぎ爪で怪人を切り上げる。

 そして、その、宙に浮かんだ怪人に。


「ケケーーッ!!」


 と雄叫びを上げながら、跳ね上がって、空高く飛んだグレンオーが。


(すーぱー)☆だい・せっと・だぅん!」


 と叫びながら、必殺技を喰らわせる。

 これは、昨日の打ち合わせで「超魔法少女がやったら面白そうな必殺技」を話し合ったときに、桜が考案したアイディアなのだが。

 その時、実際に技名を叫びながら、飛びかかってきた、というより抱きついてきた桜の印象が、嵐にかなり強く残っていたため。

 嵐の中の桜のイメージが本人に反映されている今、こうして必殺技として実際に使われた――という事情がある。

 だが、そういう事情を知らない怪人は。

「今更、可愛く見せてどうするんだ。あんた」とツッコむべきか。

 それとも、「ひらがな表記で誤魔化しているが、ほとんど元ネタまんまじゃねえか」とツッコむべきか、などとちょっと迷った。

 しかし、とどめの一撃が入ってしまった以上、どっちでもいいやと、結局考えるのをやめ。

 とりあえず「ガァーン!」と叫びながら爆発した。

 こうして、今回も、超魔法少女の活躍により、虹華夢幻郷の平和は無事に守られたのだった。


 ☆ ☆ ☆


 だが、一方で課題も残った。

 それは、この先、「マキシマムハート」フォームをどうするか。ではなく。

 超魔法少女を続けている限り、桜と嵐は、海もプールも、温泉も行けないということだ。

 嵐的には「おそらく、今の自分たちがそういうところに行ったら、水着回とか温泉回が始まるのは確実。だって、これ、どう考えても深夜枠作品のノリだし」と考えており。

 その発想から「大勢の視聴者にそんな露出度の高い格好を見られるのは嫌だな」と思っているので。

 結果として行くことができなくなってしまったのだった。

一方、桜的には「だって女の子向けの変身して少女が戦うアニメって水着とかたしかできないじゃん」というのがあり、そういう場所に行っても水着が着られない、つまり水遊びできないのでは意味がないと思っている……のだが。

 メタな発言をすると、筆者(わたし)がこの部分を書いた後そういう女の子向けのアニメでも水着シーンが可能という方向性になり。

 しかもこの小説発表までに更にそれから数年経過してしまったのでので、ぶっちゃけ筆者(わたし)としては〈このネタどうしよう?〉と悩んだ部分だったりする。

 とはいえ、まあ。

 あくまで()()()()()()()()()という事でここは通そうかと思う。

 まあ、こんな感じで二人は映像作品化を考えて海やプール、温泉に行くのをためらっているのだが。

 映像作品化とか。こんな趣味丸出しの作品がする訳がないのだから気にしなければいいのに。

 というところである。

 また、自称・並のスタイルの桜と。

 自称・やや足りないという嵐は。

 そういう要素は、何故か無駄にスタイルがいい心先輩に任せたいな。

 とも思ったが。

 あの豪快な人は、下手をすると水着ではなく、サラシとフンドシで泳ぎかねないので。

 それはそれで、任せちゃヤバイか。

 とも考えたのだが。

 当然、心にそんな服装をする趣味はなく。

 あくまで、本人がいないことをいいことに、勝手に二人が考えたイメージであるとは、付け加えておこうと思う。

 (かのじょ)の名誉のために。


 しかし。

 そもそもこの作品は、アニメにして約半クール、つまり第六話までしか今のところ構想がなく。

 それ以降は、気が向いたら続行。向かなかったら打ち切りとなっているので。

 この心配は、今のままだと無意味なのだが――次回に続く!

ちなみに。著者自身はカッコいい女性ヒーローを描きたいだけなので。

あまりお色気シーンには興味がないのですが。


自分のキャラクターを使用して、誰かが描く分には別。

……らしいですよ。

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