雄打チート会長、戦うの巻
25.潜入会長はいかが?
「それにしても変な気分だ…何で自分が行ってる学校でコソコソしなきゃいけないんだ…」
「仕方ないだろ。俺たちがやってることは実質空き巣みたいなもんだろうが。まぁ、見つかったら研究施設行きだろうな。」
俺と先祖である刃は鉛筆の出所を探るために学校に潜入していた。
「とりあえず教室行ったらいいのか?」
「そうするか。この時間帯に鉛筆は?」
「まだ配られてない。」
「そうか。なら教室で待ち伏せするのが一番だな。」
3F【3年生教室】
俺たちは待ち伏せすることにした。
・
・
・
10分後
「なぁ、本当に今日なのか?」
「まだ10分しか経ってねえよ…」
「10分って…来たな。」
「ああ。」
そこに来たのはやや小柄な人間だった。服装から見てこの学校の生徒だろう。仮にその人物をxとしたら
xは一人一人の机に鉛筆を置いている。当然、俺の机にも。
「どうする。今特攻をかけるか?判断はお前に任せる。雄。」
「当然、今から特攻かけるぞ。」
「ラジャ。」
そう言うと俺と刃でxを囲んだ。
「そこまでだ。正体を明かしてもらうぞ。散々俺の生徒を利用しようとしやがって…」
「熱血教師かよお前。」
先祖…覚えとけ
するとxは軽く舌打ちしてから走り出した。
だが、刃の同位変換で氷と化していた廊下に足を取られて見事にコケる。
その隙に…
「「ウォッ!!」」
見事に先祖とその子孫はコケた。
…なんとか捕まえたが。
「さて、正体を見してもらうぞ…x!!」
正体は…
「いや、お前誰だよw」
とはいかなかった。
なぜならxの正体は…
「さ、彩月…?」
そう、正真正銘、波田中生徒会副会長の幹屋彩月だったのだから…
「なぜ貴方がここにいるのでしょうか?生徒会長。」
「そ…それはこっちのセリフだ…」
「私は先生に頼まれて鉛筆を置いていただけですよ?」
「そ、そうだよな。じ、じゃあその鉛筆俺が配っとくよ」
すると、いきなり刃は同位変換を使って変換した剣を彩月に向ける。
「な、何やってんだよ先祖…」
「なあ、一つだけ聞いていいか。女。」
「なんでしょうか?」
「お前は何故それに直接触れても平気なんだ。」
「チッ。」
「さ、彩月?」
「勘のいいお方ですね。私、そういうの…
ウザくてキモいんで死んでください(笑)」
そう告げると彩月は刃に向かって走り出した。
「先祖!!逃げろ!!」
「外野は黙ってなっ!!」
そう言うと彩月は俺にクナイを投げて来た。
「ウォッ!!」
しかし、間一髪で避ける
「雄!!こいつは危険だっ!!撤退するぞっ!」
「あぁ!!」
「させませんよ!!」
「ウッ!!」
刃の背中にはクナイが深々と刺さっていた。
「先祖っ!!」
「マズイな…こりゃ…おまえ…が…元…の…」
「いいから喋んな!!」
妖艶な笑みを浮かべながら彩月は近づいて来る。
「これが先祖と子孫の絆というやつですか。いいですねぇ…美しいですねぇ…
滑稽ですねぇ…(笑)」
「ゆ…う…にげ……ろ……」
そして刃は動かなくなった…
「先祖ーーっ!!おいっ!!返事しろよっ!!」
「無駄ですよ(笑)さて、貴方はどう始末しましょう。ひき肉にでもしましょうかね…?」
「許さねぇぞ…このクソ野郎。」
「野郎?私は女ですが(笑)」
そして俺は決意した。
こいつを倒すと。
26.苦戦会長はいかが?
こいつを倒すと決意したが問題点があった。それは相手の能力を掴めないことだ。
そもそもコケてた時にクナイなんて無かった。としたら同位変換とかそこら辺なのだろうか。
しかしそれにしてもおかしい。そもそも持ってたのは鉛筆だけだった。そしてコケた時に全て遠くへ行ってそのままだ。
「考え事は後にしてください。【抹殺対象】」
またクナイが飛んでくる。
「ウォッ!!ウォッ!!ウォッ!!ウォッ!!」
そして一つが俺の右脚にヒットした。
「ウアッ!!」
なんだよこれ。クッソ痛え!!痛くて泣きそうになるなんていつぶりだ!
「外しましたね…次は取ります。」
そう言うと彩月はまた投げる。当然俺は避けられるはずがなく…
「ウガァッ!グフッ!!!!ガァァァァァッ!!」
どんどん体に刺さっていった。
復讐を誓っていた俺に下された現実は仇によってただ自らの肉が裂かれる痛み、音、血の匂いを感じさせられるという惨めな現実だった。
ついに俺の体の運動神経は断たれ、もはや血液が流れてるだけの人形に過ぎなかった。
マズイ…俺のから…だ…が……
「フゥ…邪魔が入りましたが何とかなりましたね。」
彩月は清々しそうに教室へ歩を進める。
「警告、歩行を停止せよ。警告、歩行を停止せよ。警告、歩行を停止せよ。警告、」
一人の声が彩月の歩を再び止めた。
27.無意識会長はいかが?
「何ですか?うるさいですね。」
「警告、殺気の放出を停止せよ。」
そこに立っていたのはクナイだらけの体になった雄だった…ただ、どこかおかしい。
目は虚になり、ロクに歩けていない。その上、痛みというものを感じていないようだった。
「な、何であんたが生きてるのっ!!」
「警告、殺気の放出を停止せよ。」
「クッ!!消えろっ!!」
彩月はクナイを投げつけ続ける。それらは全て雄へ刺さっていった。
「敵対行動を確認しました。自己修復を開始します。」
すると体に刺さっていたクナイがいくつか溶け、その他のクナイも皮膚と結合して傷を縫ってゆく。
「ま、まさか、同位変換で血液と皮膚を作ってるというの!?」
「肯定します。同時に警告します。敵対行動を停止してください。」
「うるさいわねっ!!」
そう言うと彩月はクナイを雄の心臓に投げる。
しかし、そのクナイは直前で紙くずに変換された。
「な、何でよ…」
「敵対行動を確認しました。モードh/powに移行します。」
「h/pow?」
するといきなり彩月へ槍が飛ぶ。
「チッ。このクソ根暗がっ!!とっとと死ねよっ!!」
彩月は槍の軌道を変え、槍は雄に飛ぶ。
「殺意を確認。モードd/powに移行します。」
すると雄の体が消えた。
「な、何なのっ!!」
すると次の瞬間には
彩月は生き絶えていた。
「目標の死亡を確認。手段は緊急気化からの血液をマグマへ変換。接続者の死亡も確認。
能力を一時的に後継。時間流操作を使用します。
Il mio stimato tempo e spazio God Cronos.
(我が尊敬する時空の神クロノスよ。)
Prima di riportarci allo spazio-tempo originale
(我々を元の時空に戻したまえ。)
そして雄と刃の亡骸は元の時間へ戻った…
28.以後会長はいかが?
俺が目を覚ましたのはベッドの上だった。床には刃が寝て…
「先祖っ!!」
「なんだよ…雄…疲れてんだ…寝かせてくれ。」
「なんで生きてんだよ!!」
「こっちが知りてえよ…」
時間は7:00
本来なら今頃サバイワルに向けて…
「って校門挨拶遅刻するっ!!」
「行ってらー…スヤァ…」
「ったくこの能天気先祖はっ!!」
俺はダッシュで学校へ行く。
「すまんっ!!遅れたっ!!」
「ったく遅えな遅刻オタクが。」
「頼むから美久莉さんっ!!違う種類のオタクになってるからその呼び方やめてっ!!」
「うーい。」
「なぁ。」
「ん?」
「今日…お前にエアガンを撃つとしたら?」
「こ○す」
「よかった正常だ…」
「ぁあん!?」
結局俺は校門の前でお子様体型に説教され…
「心に出とるぞっ!!」
あー…
時間になり、俺と美久莉はそれぞれの教室へ向かった。
あれ?
何かおかしくね?
何か忘れているような…
サツキハドコ?
俺はその疑問に一日中考えさせられ、放課後を迎えることになった。
とりあえず情報収集も兼ねて生徒会室へ行く。
生徒会室の前に来た瞬間、
「大駒!しばらく生徒会の活動はできないって言ったろ!!とっとと帰れ!」
廊下に顧問の声が響いた。
生徒会の活動はでき…ない!?
俺はその言葉に従うしかなかった。
ここで頼れる情報持ちとしたら…政か。
俺は家に帰り、ゲーム機のチャットを開く。
幸いにも彼はオンラインだった。
よし、聞いてみよう。
雄【なぁ、彩月ってどうなった?】
政【どうしたんすか。雄ニキ。 】
雄【(事情説明) 】
政【そういうことっすか。副さんならつい最近死んじゃったではないですか。】
え?
政【あっアニキ、飯落ちです。】
雄 【了解 】
「なあ、先祖。」
「なんだ?雄。」
「彩月…死んでたみたいだ。」
「殺ったのか?お前…」
「俺にも記憶がない…」
そこから続くのは沈黙の時間だった。
調べてみて分かったのが
・彩月は廊下で倒れてた
・内臓が溶けていた
・硫酸などの激薬を飲んで自殺と処理されてる。
たったこれだけだった。
一体俺が覚えていない空白の時間に何があった!!
犯人は誰なんだっ!!
そして…
彩月はなぜあんなことをっ!!
俺は考えるのがバカバカしくなり、さっさと寝ることにした。
29.苦悩会長はいかが?
朝だ。今日は土曜日の朝。休みの朝だというのにこんなにスッキリしないのは久々だった。
まぁ当然といえば当然だが。
とりあえず出た謎は
・彩月はなぜ死んだのか
・彩月はなぜサバイワルを起こそうとしたか
・なぜ死んだはずの俺たちが生きてるのか
・なぜ彩月の内臓は溶けていたのか
・なぜ鉛筆を配る以前から教師の闘争心は掻き立てられていたのか
ダメだ。謎が多すぎる。
おそらく1番相談して頼りになるのは美久莉だろう。
だが、俺は怖い。
もし仮に俺が彩月を殺してたら
もしそれを美久莉に読まれたら
もし彩月が美久莉に伝えてたら
恐らく俺と美久莉の間にこの上ない溝ができるだろう。
それが嫌だ。
だから相談したくない。
何より、
今回の事件で真相を知らない生徒会メンバーは美久莉だけなのだから。
よって1番真相を知って傷つくのも美久莉だから。
たしかに能力者と言ったって所詮は普通の中学校3年生の女子なのだ。
あまりにも真相が重すぎる。
でも同時に思う。
仮に俺が隠しててもそれを読まれたら?
明らかに見える。
美久莉との溝ができる。
そう考えるとある意味話しても黙ってても溝はできるのかもしれない。
仮に俺が意識を失ってから今に至る空白の時間に目撃者がいればもっと楽にわかっただろうに。
神というのは非情だ。
能力を人間に与えるだけ与えてあとは頑張れって。
もし神が見えるのなら思いっきりぶん殴りたい。
そして…
真相さえも分からない俺を殴りたい。
番外編.先祖なのに
クッソ。俺にはわかる。自分の遠い子孫が今、部屋の中で選択に苦しんでいることを。
本来なら先祖にあたる人間が人生の経験を活かして子孫に教えるべきなのだろう。
でもそれができない。何しろ俺もアイツも同じくらいしか生きてないのだから。
もし俺がたすけてやれたら…アイツは迷わずにっ!!苦しまずにっ!!済んだのに…
俺は風呂の中で情けない自分に対する涙を流すことしかできなかった。
なんて言うんだろ…こう…書いててブルーになりました。
でも、これが正解に辿り着けるのなら…
いっそ次回は何事もなかったかのように彩月蘇らせようか(殴