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ポテトと塩〜愉快な仲間たち〜  作者: 少女遊 夏野(ギルドマスター)
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闇の力


 吹雪が眠りについてからしばらく。部屋には平穏が続いていた。ポテトサラダ・無双も吹雪の覚醒の時を静かに、心穏やかに待っていた。


「吹雪様……早くお目覚めになってくださいね」

 

 ポテトサラダ・無双は吹雪に静かに語りかけた。

 そんなある日、いつものように彼女が吹雪のそばに控えていると、部屋の中に黒と白の粉が吹き荒れた。


「何者!」

 

 ポテトサラダ・無双は粉で痛む目を覆いながら叫んだ。


「ふはははは!久しいな無双!」


 そこには魔術師ソルトが不敵な笑みを浮かべて立っていた。


「ソルトっ!何故……」

「なぜあの時倒された俺がここにいるのか。それが聞きたいのだろう?」


 ポテトサラダ・無双は思わず生唾を呑み込んだ。


「俺は確かにあの時貴様に倒された。しかし!俺はそれによりさらなる力を手にいれた!俺は体を塩にすることができる!」


 ソルトは自身の片腕を引きちぎった。しかし、その腕は瞬時に塩と化し、元あった場所へと再生していき元の形へと戻った。


「俺も腐ったもんだぜ。闇の力に目覚めてしまった俺の塩にはゴマが混じってしまった。だがそれがなんだ?不死身には変わらん!」


 ソルトは高らかに笑った。


「俺は吹雪様の寝息を直に浴びることによりさらなる力を手に入れ、この世界の統治者となる!」


 この闇に染まった魔術師が世界を統治する。そのようなことになればこの世界は闇に包まれた悪の世になってしまう。


「そのようなことはさせない!私が吹雪様も、この世界も守ってみせる!くらえソルト!アテナ様の加護を受けた我が力を受けよ!」


 ポテトサラダ・無双はアテナの加護により手に入れた光の力を発動した。全身が光に包まれた後神々しい甲冑に包まれたポテトサラダ・無双が現れた。


「いくぞ!うおおおおおおお!」


 ポテトサラダ・無双は勢い良くソルトに切りかかった。ソルトはそれに動じることなくそのまま攻撃を受けた。しかし、体がゴマ塩になり物理攻撃が全く効かない。


「くそっ!どうすれば……」


 今までの相手とは明らかに違う。どう戦えばいいのか無双にはわからなかった。


「ふっ。もうお前の攻撃は終わりか?ならば今度は俺の番だ。くらえ!マッシュ・ド・ポテトォォ!」

「うわぁぁあ!」


 無双は四方から押しつぶしてくる魔力に抗うことができなかった。それは以前に感じた魔力より、格段に強くなっていた。


「ふぐうううう……っ!」

「ふはははは!どうだ!苦しいだろう?これが闇の力だ!」


 ソルトは闇の力の侵食により弱った無双を解放した。それとともに今まで纏っていたアテナの加護を受けた鎧が消失しいつもの装備に戻った。

 無双は魔力を解除されてもなお、立ち上がることができなかった。


「ふんっ。弱いやつめ。貴様はそこで俺が力を得るところを見ているがいい」


 ソルトは禍々しい気配を放つ芋づるを召喚し、無双を絡めとっていった。


「あぁ。ついにこの時が。吹雪姫の寝息を浴びることが……」


 ソルトは吹雪が眠るベッドに腰掛けると、そっとその輪郭を指でなぞった。


「ふふ。ふふふふふ。ふははははは!さぁ、我はこれより最強となる!お前の愛しの姫の寝息、浴びかせてもらうぞ」

「やめろ!やめてくれえええええ!」


 吹雪の柔らかく艷やかな唇を親指でイヤらしく撫で、健やかに眠る吹雪の顔に自らの顔を近づけていった。

 

「うわぁぁぁぁぁあ!」


 無双は叫んだ。すると、無双から禍々しい気配が放たれた。その異変に気づいたソルトは無双を見た。

 ソルトは白目を剥き、闇の力に包まれている無双を見た。


「なんだ……この力は」

「あぁ、吹雪様。どうかこの愚かな私をお許しください。吹雪様に怒りの念を抱いてはいけないと言われていたにもかかわらず、この念に身を委ねる私をお許しください」


 無双は敬愛する吹雪に詫びた。しかし、闇の力の勢いは収まらない。


「ソルト。私は吹雪様との約束にそむいた。しかし、貴様のことを許すわけにはいかぬ!地獄まで私とともに来てもらうぞ、ソルト!」


 無双は闇の芋づるを引きちぎった。


「我、今こそその力を望まん!闇アテナよ、今こそ我に加護を授け給う!」


(んふふ。汝の願い、聞き給うな)


 無双は天に向かって叫んだ。すると雲を切り裂き、天井を突き抜け、無双に向かって禍々しい光の柱が降ってきた。ポテトサラダ・無双はその光を一身に浴びた。光を受けた体は黒き鎧を纏った。その顔は怒りに満ちていた。


「喰らえ、ソルト!ポテトサラダ・マカロニアエエエエエ!」

「くっ……」

「オイシソウ」

「えっ?」


 ソルトの後ろから声がした。思わず二人の動きが止まった。ソルトが振り返ると、そこには寝起きの顔をした吹雪が上体を起こして座っていた。


「吹雪様!」

「チッ」


 目覚めた吹雪の姿を見て、ポテトサラダ・無双の動きが止まった。

 しかし、またすぐに


「ここで止まることはできない。私は吹雪様の命にそむいてしまった。ソルト、貴様は私の道連れだ!」


 ポテトサラダ・無双は再びソルトに向かって行った。


「ふん。貴様を倒して俺は吹雪様を手に入れる!」


 ソルトも再び戦闘態勢に入った。


「ダメ!」


 部屋の中に吹雪の叫びが響きわたった。その声により場が凍ったように静止した。


「吹雪様!」

「なん……だとっ!?」

「ダメです、ポテトサラダ・無双様。私がやります」

「し、しかし!」

「私も戦えるんです!」

「……っ!」

「私も戦えるんです。私にも、大切なあなたを守らせてくださいませ」


 吹雪は優しくポテトサラダ・無双に微笑んだ。そして、鋭くソルトを睨んだ。


「闇の力に堕ちた魔術師ソルト。貴方を私がこの光の力で浄化します」

「なにっ!?」


 吹雪は胸の前で手を組み、目をそっと閉じて天に向かって祈った。


「アテナ!母なる女神よ!今ここに、闇に染められし魔術師ソルトを浄化したまえ!」


 その声とともにソルトの頭上に魔法陣が展開され、光の結界が展開された。ソルトはそこから逃れようとするが、出ることができない。


「光の力で浄化されなさい!」

「や、やめろおおおおお!」


 吹雪の言葉で巨大な光の剣がソルトを貫いた。ソルトは光の剣に貫かれながら徐々に砕けていった。

 そこに残ったのは純白の岩塩と化したソルトだった。

 

「おわっ……た?」


 おもわずその場に座り込んでしまった無双。その無双に吹雪は歩み寄った。


「えぇ、終わりました」


 無双の前にしゃがんで、いつもの微笑みをこぼす。


「すみません、吹雪様。吹雪様との約束を破ってしまいました」

「気にしないで、無双様。貴女はその時できることをしようとしただけなのですから」

「吹雪様」


 吹雪の手を取り2人で立ち上がろうとした時、無双が闇をまとった芋づるに捕らわれた。


「無双様!」

「吹雪様!!」


 吹雪は無双に駆け寄ろうとした。しかし、吹雪の足にも芋づるが絡みついて動けない。


「どうもこんにちは、吹雪姫」


 ポテトサラダ・無双を捕らえている芋づるの後ろから、冥府の女神ニュクスの鎧を纏った巫女がいた。


「あなたはっ!」

「わたしはエルザ。ニュクスの神殿にお仕えする巫女です。どうぞお見知りおきを。さて、この闇に堕ちたポテトサラダは私がいただいていきますね。ニュクス様がご所望なの。うふふふふ」


 エルザはポテトサラダ・無双を芋づるで絡めとったまま床の中へと吸い込まれていった。


「無双様ぁぁあ!」


 吹雪様はあらん限りの声で叫んだが、無双は虚しくもさらわれて行った。

 その部屋に残ったのは、呆然とする吹雪と岩塩になったソルトだけだった。

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