第二話 異世界でも学生をする様です
二話目です
一話で変更があります。
投稿していたその1と書いていたその2を合わせて第一話としました。
王とフローラの見た目の説明を微妙に追加しました。
窓一つない部屋。今そこには老若男女問わず十人ほどの杖の様なものを持った集団が円形に並んでいる。その円の中には石で出来た祭壇の様なものがある。祭壇には魔法陣が書いてある様だ。
「それでは、やりますっ‼︎」
その集団の中から派手ではないが他の人達とは明らかに身分が違うとわかるドレスを着た少女が声を上げる。
少女は青っぽい白の髪をボブにしていて、目は透き通る様な青色をしていて、胸が小さいもののウエストは引き締まっていてスタイル抜群である。
その少女は祭壇の縁の一部についた台に近づいて持っていた針で自分の人差し指の先を刺し、血を台にある穴に落とす。すると祭壇に描かれた魔法陣が輝きだす。
「来ますっ‼︎」
少女が叫ぶと魔法陣光が激しく上がり部屋を埋め尽くす。
そしてやがて光が収まる。魔法陣からは煙が上がり魔法陣の上がよく見えない。
「な、なんなんだよ、一体⁉︎」
煙の中からイラついたような、けれどどこか怯えを含んだ声が響く。
暫くして煙が晴れるとそこには少年と少女––真琴と桜––が立っていた。
「え、えっと、は、初めまして、英雄様。よくぞ、おいでくださいました」
「「は、はい?」」
少女の発言に対して何を言っているのか分からないという様な反応をする真琴と桜。
「と、とりあえず説明をしますので、私達についてきて頂けますか?」
そんな二人の反応を当然のものとして、話を進めた少女は言うと直ぐに部屋の入り口の方に歩いていく、その後ろを部屋に居た人達ごついて行く。
その様子を真琴と桜が呆然としていると、後ろから声がかかる。
「とりあえずついて行っとけ。どうせここにいても何も話は進まねぇぞ」
二人が声のした方を振り向くとそこには黒髪黒眼の少年が立っていた。少年は黒色を基調とした法衣の様な服を着ており、髪は無造作に切られており、少し逆立っている。
「え、えっと……」
真琴が口籠りながらどうしたものかと迷っていると、少年は鋭い少し吊り上がった目を向けてくる。
「俺の名はマギラだ。お前らの名は?」
少年––マギラは自分の名を名乗った後真琴と桜に名乗る様に言う。
「ま、真琴」
「桜、です」
「そうか、マコトにサクラか。じゃあ自己紹介したところでそろそろ行こうか?早くしないと追いつけなくなるぞ?」
マギラは二人のなまえを聞くと、早く追いかける様に急かす。
それにより、状況を少しだが確認した真琴と桜は急いで追いかけようとする。しかし、入り口まで行ったとこでマギラが付いてきてないことに振り向く。
「え、えっと……マギラ、さん?は行かないんですか?」
「ん?俺か?俺は少し事情があってな、参加しないほうがいいんだよ。あと、俺のことは呼び捨てでいいし、タメ口でいいからな?」
マギラは自分は行かないと伝え、その上で自分に気を使わず接するようにと言う。それを聞いた真琴と桜は不安げな表情になるが、これ以上は本当にまずいと思いマギラにお辞儀してから少女達を追いかけて行った。
「気を使わなくていいって言ったのに、まったく……」
そんな二人を見てマギラが苦笑したのは余談である。
二人が追いついてから間もなく一同は豪勢な大きな扉の前にやって来ていた。どうやらここが目的地の様だ。
「フローラ・マキシム以下英雄様をお連れしました‼︎」
少女––フローラが扉の前で声を上げると、中から入室の許可が返ってきた。
すると、ひとりでに扉が内側へと開いていくではないか⁉︎
真琴と桜が唖然としているのを放置して、フローラ達は部屋に入っていく。真琴と桜も我に返り急いであとを追う。
そして部屋に入って周りを見てさらに唖然としたのだった。
部屋の中は煌びやかに装飾されており、天井にはシャンデリアの様なものがあったのだ。さらには、扉から見て部屋の両端に、これまた豪奢な服を着た男女が並んでいたのである。
「英雄召喚に成功したのだな、大儀であるぞ、フローラ」
そんな部屋の威容に呆気にとられていると部屋の奥、今まで気づかなかったがそこにある玉座の様な所から少年の様なしかし王様然とした声が響く。見るとそこには一際豪華な服を着た14歳ほどの金髪金眼の少年が座っている。
「はい‼︎お褒め頂き、ありがたき幸せ‼︎」
声が響くとほぼ同時に跪き、感謝を述べるフローラ。それに追随する様に他の人も跪く。
「え、え?な、何?どういうこと?」
状況についていけない真琴と桜はどうすればいいのか分からずその場で棒立ちになる。
「とりあえず、王の御前だ。姫さん達と同じ様に跪いとけ」
「「‼︎‼︎‼︎‼︎」」
不意に後ろから声がして真琴と桜は驚き、後ろに勢い良く振り向く。
そこにはいつの間にいたのか全身黒色の服で包み、顔はフードで隠し口元は布で覆われていて、よく見えない、正直見るからに怪しい人物が壁にもたれ掛かって立っていた。
「なっ⁉︎き、貴様誰だ⁉︎いつの間にいた⁉︎」
並んでいた人々のうち、一番扉に近い位置にいた男性が叫ぶ。
「俺か?俺は……影王とか呼ばれてるものだよ」
謎の人物––影王は落ち着いた様子で答える。しかしその名が言われた瞬間部屋の中は騒がしくなる。
「な、なに⁉︎実在したのか⁉︎」
「そんな馬鹿な⁉︎あれは唯の噂ではないのか⁉︎」
などなど部屋の中の人々は驚きを隠せない様だ。その中で落ち着いているのは玉座の近くに並んでいる数人と玉座の両横に控える男女、跪いているフローラ、そして玉座に座る少年だけである。
「ほら、早く跪いとけ、一応王の前だからよ。あ、因みに王ってのはあそこに座ってる偉そうな少年のことだぞ」
影王は周りの反応など知らぬという様に真琴と桜に跪くようにすすめる。
「「は、はい。」」
二人はそんな影王の雰囲気により不思議と落ち着きを取り戻し、言われた様にする。
しかし、影王は跪く様子がない。
「影王……その二人に跪くよう言うならお前もそうしろよ……」
少年––王がそんな影王の様子に呆れたように呟く。
「え?俺しなきゃいけないか?」
影王は心底不思議そうな空気を漂わせると王に対して咎められそうなほど気安く答える。
「き、貴様‼︎たとえ本物であったとしても、王の御前だぞ‼︎無礼だろ‼︎」
案の定咎める声が飛ぶ。
それに対し影王は肩をすくめる動きをすると、指を鳴らす。
すると影王の影が伸びて影王を包むと暫くして霧散する。
霧散した後には誰もいなくなっていた。
「「「「「なっ……⁉︎」」」」」
影王が現れた時と同様にまた部屋の中が騒がしくなる。
「静まれ‼︎敵でない奴が急に現れたり、消えたりしたくらいで騒ぐでないわ‼︎」
王がそこに怒声を一つ入れると場は静かになった。
「うむっ‼︎一声で静かになれるあたり、流石我が国の者達だな‼︎」
その様子を見て王は満足した様である。
「では、落ち着いたところで、英雄に細かい説明をしなくてはな。ティム、説明は任せるぞ。あとフローラ並びに魔術隊の者たち、それに英雄よ、顔を上げて、部屋の中央まで参れ」
王がそう言うと玉座の横にいた薄い緑色の髪に黒目の男性––ティムが進み出て、フローラ達は顔を上げ中央へと進んでいく。真琴と桜もフローラ達を追って中央へと向かう。
「では、まずは私から説明させて頂きます。私の名前はティム・マッカルと言います。この国、マキシム王国で宰相を務めさせてもらっています」
ティムはこの国––マキシム王国というらしい––の宰相らしい。
「まずは英雄様を召喚した理由ですが……」
「あ、あのちょっといいですか⁉︎」
ティムが説明を始めようとしたところで真琴が待ったをかける。
「何でしょうか、英雄様?」
ティムは顔色一つ変えずに待ったの理由を問う。
「あ、あの先ず、その『英雄』ってどういうことですか?出来れば俺たちは名前で呼んでもらいたいのですが……」
「そ、そうです‼︎私達は名前で呼んでもらう事を願います‼︎」
真琴が答え、それに桜が同意する。
「そうですか、では名前で呼ばせて頂くことにしましょう。お名前をお教え頂けますかな?」
真琴と桜の要望を直ぐに受け入れるティム。後ろの王もティムの判断に満足そうな表情を浮かべている。
「あ、雨宮 真琴です‼︎」
「か、神田 桜です‼︎」
噛みながらも自分の名前を伝える真琴と桜。その様子に頷くとティムは口を開く。
「マコト様にサクラ様ですね。では、お名前をお聞きしたところで話を戻します。先ずお二人をこの世界に召喚した理由、並びに経緯をお話しいたします」
ティムの話を要約すると以下の様である。
曰く、過去に何度か『大戦』と呼ばれる大きな戦いがあった。
曰く、その戦いの相手は決まって化け物の様な生き物『ビースト』だった。
曰く、それがこれから四年以内に起きるという予言があった。
曰く、その戦いを乗り越えるにはこの世界の戦力は少ない。
曰く、それを乗り越えるためになされたのが、真琴と桜をこの世界に呼んだ『英雄召喚』と言うものらしい。
「つ、つまり俺達はこの世界でその化け物と戦うために呼ばれたと……⁉︎」
「その通りでございます」
真琴の問いに対し、その通りだと肯定の意を返すティム。
「そ、そんなの無理に決まってるでしょ‼︎俺達は向こうの世界では戦うなんて事とは無縁の生活をしてたんですよ⁉︎」
そんなのは無理だと真琴は反論する。
「えぇ、その様なこともあるだろうと予想しておりました。その為にこの様に余裕をもって召喚したのです」
その真琴の訴えに対してティムはそれは予想していたと返事する。
「お二人にはセントレア学園に入って、この国、この世界について学んで頂き、同時に、戦う術を身につけて頂きます」
「「え?」」
こうして、召喚された真琴と桜はこちらの世界でも学校に通う事となったのであった。