第八話「教師」
早めにとる予定だた昼食は授業に乱入して時間を忘れてたことで
逆に遅めの昼食となった。
午後はまた図書館。
午前中で世界の違いはある程度分かっていたので
調理とか食材の知識を集める。
ホントは実際に料理するのが一番いいんだけど
知識だけでも有ると無いではずいぶん違う。
とりあえず図書館の中の料理関係の本、片っ端から読み漁る。
それにしてもすごい蔵書数、とても半日では読み切れない。
「ハートを射止める魔術系スパイス」
「呪術応用虜料理集」
「彼氏もいちころ!黒魔術料理」
なんてのもあった。
いちころって・・・
「そう言えば、授業に参加したんだってねぇ?」
夕食時に萩原さんが思い出したかのように言い出した。
「えぇ、参加というか、乱入というか・・・すみません、見てられなかったもので。」
余計な事しちゃったかな?とは思う。
実際、手を切りそうで見てられなかったのもあるんだけど
なんか面白そうで気が付いたら飛び込んでた。
「いやいや、生徒の評判も良かったみたいだし。向いてるのかもしれないね。」
食後の紅茶を飲みながら・・・楽しそうだな、なんか。
「今度はワタシの授業の時にもお願いします♪」
いや、マナもそんな期待しないで・・・
「いやいや、そう度々じゃ迷惑になるでしょ。」
なんか出しゃばった感じだったもんなぁ、教えてる先生にも悪いし。
「いっそのこと、先生になってみないかい?」
「え?」
「丁度ね、家庭科の先生が今、いないんだよ。」
「え?でも・・・」
「今日、教えてたのは実は食堂の職員、それもやっと見習いを卒業した程度なんだ。ホントはもっと実力のある職員を回したかったんだけどね、それだと食堂が回らなくなる。」
そんな事情があったのか・・・
「幸い、こっちの世界は向こうのように教師の資格とかそれほど厳しくない。子供たちに教えるってのも楽しいと思うよ?」
「と言うわけで、新しい先生をご紹介します。」
なんか、流されてるな・・・俺・・・
今は臨時の朝礼。講堂に全生徒が集められている。
学院長の萩原に紹介され、俺がこれから挨拶するところだ。
「飯島 拓人です。家庭科の・・・調理実習担当となります。」
生徒たちの列、奥のほうから拍手があがる。あれは昨日の・・・
「どうやらすでにファンがいるようですね。」
満足そうな萩原が話しかけてくる。
まったく・・・
「期待を裏切らないように頑張りますよ。」