第七話「突撃!となりの昼ご飯?」
とりあえず図書館でこの世界のことについて調べてみた。
ほぼ予想通りではあったが
電気、ガスなどの代わりに魔術が発展している様な感じだった。
まぁ、攻撃系とか回復系とかもあるんだがその手の魔法は
一般人の魔力では不可能で基本は生活に根付いた・・・といった感じ。
調べ物をしているうちにそろそろお昼、と言う時間になった。
生徒ばかりの中で食事というのも気が引ける・・・というか
女の子ばかりの中で・・・かなり居づらいのは目に見えて分かる。
少し早めに食事してしまおう。と言うことで食堂へと向かう。
廊下を歩きながら教室の中を眺める。
調理実習でもやっているのだろうか、たぶん家庭科室。
何かを切っている生徒、粉物を一生懸命練っている生徒。
お湯を沸かしてゆでている生徒等・・・
「うどん?・・・そば?かな?」
そっか、こっちの世界にも麺類あるんだなぁ・・・と、一人の生徒に目が留まる。
野菜を切ろうとしている様だが・・・なんとも危なっかしい。
本人もかなり緊張しているようだし・・・あぁぁ、それじゃ手ぇ切るぞ・・・
「・・・・・あぅぅ・・・」
わたし、黛 由香里は料理が苦手だ。
だって、必要ないじゃん。うちではお手伝いさんがやってくれるから困らない。
うちで食べなくったってお金払えば普通に食べられる。
なんで私が作らなくっちゃいけないの?
未来の旦那様の為?なんだって女だからってそんなことする必要があるのよ。
「おぃ、あぶないぞ!そんな手つきじゃ!!」
隣に見知らぬ男が立っていた。服装から生徒じゃないのはわかる。
首から身分証・・・ゲスト?
「ちょっとかしてみな!」
持っていた包丁を取り上げられた。
「いいか?こうやって・・・猫みたいな手にしてな?」
しゅぱぱぱぱぱ・・・・
「こうやって切るんだ。」
すごい手際・・・
「最初はまぁ、ゆっくりとでもいい。慣れればこれくらいは簡単に出来るようになる」
なに?この人・・・
「しっかし、良い包丁だな、これ。使いやすいわ」
鉛筆でも回すかのように軽々と包丁をまわして・・・何者?
「あぁ、あとそっちの!粉物こねるときはもっと力をいれないと!」
そう言って少し離れたところで麺担当の生徒のほうに行ってしまう。
「そうそう、、そうやってもっと体重使って・・・袋に入れて足で踏むなんてやり方もあるんだぞ?」
次々とてきぱきと指示を出していく。あまりの手際に先生も呆然と見ているだけ・・・
そんなこんなであっという間にざるうどんが出来上がった。
試食タイム・・・・
あれ?いつものよりおいしい。
「どうだ?うまいだろ?ちゃんとつくると。自分たちでもこれくらい出来るんだぞ?」
これって食堂で食べるうどんよりもおいしいかも・・・
この人、いったい何者なんだろう・・・ゲストっていったい・・・・
でもなんか楽しかったな・・・
「あ~~~~!こんなところにいた!!」
ん?あれは隣のクラスの・・・萩原さん・・・
「探したんですよ?まったく!」
「すまんすまん、つい・・な?見てられなくってさぁ・・・はは」
「お昼まだですよね?タクト様。一緒にたべましょ!」
そう言ってぐいぐい引っ張って行ってしまった。
・・・へぇ、タクトっていうのか。あの人・・・
「ほんと、料理のことになると他が見えなくなるんですね。」
にやにやしながらマナが見ている。
「いやぁ、つい・・・ね。」
どうもあのおぼつかない手つき見てるとね、我慢できなかったわ。
「怪我しそうで見てられなかったと?」
なんか楽しそうだね?マナさん?
「うん。まぁね。でも、あれで少しでも楽しいって思ってくれたらいい・・・かな?」
「へぇ~♪」
にやにや。
・・・そのにやにやがちょっと怖いんですけど?




