第五話「朝食」
「・・・何もありませんでした。」
「え?」
俯いたままマナが話しはじめた。
「タクト様とワタシ、何もありませんでした。」
でも、状況的に・・・
「ワタシも父にそそのかされて・・・そのつもりでタクト様を脱がすまではしたのですが・・・・」
したんかよ!って、そそのかすって何やってんのよ萩原さん!!
「・・・パンツを脱がせた時に・・・その・・・あまりに逞しいタクト様の・・・に興奮してしまって・・・」
やばい、恥ずかしすぎるぞ?これ・・・
「・・・思わず鼻血噴き出して・・・貧血で倒れて・・・そのまま朝に・・・」
「え?んじゃあの血って・・・」
「はい、ワタシの鼻血・・・です。」
真っ赤になりうつむきながら話すマナ。
話を聞いてちょっとほっとした。未遂だったか。
「でも!!」
真っ赤なまま顔をあげ・・・目が合う・・・
「責任取っていただけるなら今からでも!!」
「なんでそうなる!!」
「ワタシはいつでも覚悟出来てます!」
裸のまま真剣な顔でにじり寄るマナ・・・
「すまんがのう・・・そろそろ朝ごはんなんだが・・・」
ドアのところでニヤニヤする萩原さんの一言で・・・何事もなく助かった。
「すみません、すぐに朝食をご用意いたしますね。」
色々リセットできたのかマナは朝食を作りに行ってしまった。
そういえば、こっちに来て料理してないな・・・世話になってるしせっかくだから作らせてもらうかな・・・
「萩原さん、朝食、俺が作っても良いですか?」
「ん?別に構わんが・・・」
「このところ世話になってますし、たまには俺の作ったもん、味見てくださいよ」
そう言ってマナのいる台所へと向かう。
「タクト様が作られるのですか?」
「うん、世話になってるし。」
「・・・・」
「あれ?ダメかな?」
「・・・ワタシの味付けに不満でも?」
「いやないない!」
「・・・ではやはり・・・ハダカエプロンじゃないことに」
「思ってもいないからね!!」
「・・・まさか、朝から女体盛り」
「ちっがーーーーう!!」
作らせてもらうってだけでえらく疲れた。
気を取り直して今ある食材をみる。
何の肉かわからないけど赤身の感じが豚っぽい・・・市場で見た双頭の豚?
鶏の卵より一回り大きい、何やら迷彩っぽい柄の卵。
見た目と味見した感じではレタスっぽい紫の謎の野菜。
よくわからんものが多いが・・・まぁ何とかなるだろう。
コンロの使い方を聞いて驚いた。ガスじゃなく魔力で火をつけるらしい。
試しにコンロの前に立ってみるとちゃんと火がついた。
俺にも魔力、あったんだ・・・火力の調節も思うように出来るし、これは便利かも。
久々ということもあるし炒飯。中華の基本で技術の差がはっきりと出るので。
そのまま朝から脂っこい中華ってのもなんだなぁ・・・ってことで
さっぱりとした昆布?みたいなやつの出汁をかけ、スープ炒飯ってやつ。
具はニンニクみたいな野菜、紫のレタス、迷彩柄の卵、豚肉っぽい何か。
肉は賽の目に切り、ニンニクで香りづけしつつ焦げ目をつける程度に焼く。
強火に油をひき刻んだニンニクを少し炒め、割りほぐした卵を一気に入れる。
半熟トロトロなところでごはん投下。手早くご飯をほぐしつつ卵と混ぜ合わせる。
全体に卵がいきわたったあたりで直火で焼くかのように鍋を振る。
中華鍋っぽい鍋があって助かったわ。
味付けは塩と胡椒。
しっかり味がいきわたったところでレタスっぽい葉っぱと香りづけに醤油を少々。
出来上がった炒飯を少し深めの皿に盛り付ける。
別鍋で用意していた昆布のだし汁に片栗?コーンスターチ?を水でといたものを加えとろみをつける。
出来ただし汁を炒飯にかけて、仕上げに三つ葉?みたいな葉っぱ。香りが気に入ったので中央に乗せる。
まぁ、ありあわせの材料だし、こんなもんかな?
マナはとなりで付け合わせのサラダを作ってくれてた。
「夫婦の共同作業です♪」などといっていたがそのままスルーした。
簡単な朝食になってしまったが萩原は驚いていた。
「こっちの世界の食材でここまで・・・」とか言ってた。