三話 あの現象に付いて考えよう?
溶岩という天然温泉に浸かりながら、あのふと知らない事が考え付く現象に付いて考える事にした。
あの現象が起こるのにはちょっとしたトリガーがあるのには気が付いていた。
先ず、俺が知らない事に付いて考えている事。
そして、その考えに明確な答えがある事。
最後に、俺が知りえる、もしくは想像出来る事には起こらない事。
以上の三点さえ守れば、あの現象がおきるのだろうと予測する。
なので先ず考えるのは、この現象は何なのだろうと考える。
――高階梯魔物の誕生初期段階における、知識サポート。
なるほどと納得する。
そして同時に、何て親切な世界だろうと感想を抱く。
何せ生まれて間もない頃限定といえど、如何したら良いのかを教えてくれるのだ。
こんなサポート体制があれば、なるほど親が子育てする必要性は無いかもしれない。
寧ろ無い方が自立して成長する気がする。
さてでは次。
この知識は何処から得ているのかに付いて考える。
――この世界の全ての生物の蓄えられた記憶から、疑問に合う答えを自動検索。
という事はだ。この現象は所謂、浅草芸人が「やほー」と言い間違えるようなのが代表な、ネット検索サービス的なものなのだろう。
てっきり俺は、根源世界の知識――所謂アカシックレコードからの引用かなと予想していたのだが、ちょっとだけ裏切られた気分ではあった。
しかしながら、もし俺がこの世界に居る誰も知らない疑問を持った場合、この現象はどう答えるのだろうと考えてしまう。
――この世界全ての生物とは、創造神も含まれる。その為、答えられない疑問は『存在しない』と答える。
ほほぅ、なるほどね。
これはつまり、二重の意味があるということだろうか。
片方の意味は、この世界で創造神が知らない事は無い為、答えられない疑問は『存在しない』のだろう。
もう片方の意味としては、前世では在ったが、今世では創造神が設定していない現象に付いて。
俺はその現象を前世の知識で知っていて、その詳しい内容が知りたいと考えたとする。しかし知識サポートからは、その現象は『この世界には存在しない』とアナウンスが流れる、という訳だ。
なるほど、奥が深い。
さてでは次。寧ろこれが一番知りたい事。
つまりは、どうやったらこの知識サポートを永続的に使えるのかを考える。
――このサポートの繋がりを意識しつつ、繋がりの通路を魔力で固定する。
という事は、知識サポートが使用出来る期限までに繋がりを固定できなければ、二度と繋ぐ事が出来ないという訳か。
まあそれは良いか。
それでどうすれば繋がりを固定出来るのかを考えよう。
…………
答えが無いという事は、どうやら俺が想像出来る範囲内の事らしい。
あまり想像力が豊かでない俺でも考え付くという事は。
うーん……呪文――は俺が思いつくことじゃ無いしなぁ。
でも『繋がりの通路』っていう事は、俺の体の何処かに知識サポートと繋がっている部分あるはず。
ネットに接続するのに、有線だったり無線だったりでサーバーに接続しないといけない感じで。
それを魔力で固定するっていう事は、そこに魔力の糸を通してみる。
その位しか考え付かないぞ。
これが間違っているのか合っているのかのアナウンスは、やっぱり知識サポートから来ないし。
それでもサポートが今日中に切れるという事は考え難いし、取り合えず試しにと実行してみる事にする。
という事で、俺のこの竜の体の何処に、知識サポートと繋がっているのかを考えてみる。
…………
まあそうですよね。教えてくださいませんよね。
うーん、じゃあちょっと体内に巡っているこの魔力を、目を瞑って知覚してみようかな。
繋がりがあるのだったら、何処かに変わった部分があるかも知れないし。
ふむ~……ふむ~~~……
体に流れている魔力に淀み無し。
体から外へと流れ出る余剰魔力に、変わった部分は無し。
試しに体の外へと流れ出る魔力を多めにしても、何処かに多く流れたりは無しっと。
体に魔力を供給してみても、体を強化する事が判明しただけ。
一体何処に繋がりがあるのやら。
これはアレだな。
知識サポートに接続した瞬間を感知しないと、何処に繋がっているか分からない感じだろう。
となればだ。
俺の知り得ない知識で、質問すればいいわけだから。
よし、目を瞑って体の感覚に集中してから。
この世界の名前はなんていうのかを考える。
――平面世界。
……注意深く感知してみた結果、体の外から接続された感覚は無かった。
どうやら体の外ではなく体の中に通路があるようだ。
では次の質問をする前に、体に流れる魔力を多めに流し活性化させる。
そして、俺の居るこの火山の名前はなんて言うのかを考える。
――休み無く噴煙を上げる山として、近隣住民に知られている《ブンボルガー火山》。
今度はちょろっと何処かに魔力が流れていく感覚が分かった。
場所は頭の中。つまりは脳の中。
その中心部分から、どこかへと魔力が流れた。
でもそれは三次元的な、いわゆる上下左右方向に向かうものではなかった。
四次元的と言う表現が正しいかは分からないし、的確な表現も難しいが。
脳の中心だというのに、更に中心に行ったというか、中心の奥へと突き進んだような、そんな感触だった。
試しにその感じた場所に魔力を集めてみる。
するとその中心点が排水溝であったかのように、どんどんと魔力が何処かへと流れていく。
そして透明に作られた配管が水で薄っすらと浮かび上がるかのように、知識サポートの繋がりが知覚出来た。
途中で魔力が霧散してしまうのか、つい近くまでしか浮かばなかったが、意外な事に繋がりは太い。
体に流れる魔力を可能な限りその繋がりに注いでみても、まだまだ果てが無さそうな感じだ。
一体どれほどの魔力が必要になるのかと考えてしまう。
――貴方がいま生み出し蓄えられる魔力の、およそ三倍が最低量。
とまあ親切に答えが返ってきたところで、ガックリと項垂れてしまう。
三倍って。
そんなホイホイ魔力量って上がるものなのか。
それとも竜だから上がるというのだろうか。
もしくは簡単に上がる方法があるのか。
そんな風に色々と考えて見るものの、知識サポートからの返答は全く無い。
つまりは俺が考え付く限りの事をしろって事だね。
そう納得しつつも、前世ではニートでゲーム以外では頑張る事などした事が無い俺。
折角竜に生まれ変わり、知識の泉に接続できる方法も手に入ったというのに、早くも挫折しかけてます。