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02

「もうここって博麗神社の目の前か」


「あんだけ遠いとな、微調整も面倒なんじゃよ?」


 転移の行き先は弘毅が決めたが調整は鬼々がする。というのも、弘毅が力を使っている訳ではなく、鬼々の力を弘毅が借りて使っている。

 なので、鬼々が力を扱っているのだ。まあ、弘毅も鬼々さえ居れば、力を使うこと自体はできるのだ。下手だが。


「ありがとうな、鬼々」


「けっ。礼など欲していないぞ、主よ」


 弘毅は、鬼々に苦笑いをして、一声上げる。


「うし、じゃあ行くか」


 そう言い、弘毅は神社の方を向いて、階段をゆっくりと上りはじめた。







 万屋の前で、文が一人で考えていた。


「さて、どうしましょうかね……?」


 文は、速さなら幻想郷一の自信があるが、残念ながら弘毅は、点と点の移動である。その点の先がわからぬ文は、こうして悩んでいたのだ。


「文。お前も弘毅を狙ってんだろ?」


 魔理沙は、文に声をかけた。狙う、というと、意味がありそうに見える言葉だが、そのような意味は勿論ない。


「あ、出てきましたか、魔理沙さん。狙っているというか、是非、取材させて頂きたい対象ですからね」


 そういうのを狙っているって言うんだろ、魔理沙は言いながら、口の端を上げる。


「ところで、文。弘毅がどこに行くか知っているんだが、来るか?」


 確認の様に、文に訊く魔理沙。文は


「行くに決まってますよ!」


当然のように首を縦に振った。

 こうして、幻想郷の最速と思われるコンビが結成されたのだった。


「それで、どこに行くんですか?」


「言わないから、ついてきな!」


「あやややや、取り柄の速さでも私には勝てませんからね」


 コンビ内で悶着はよく起こりそうだが。







 所変わって博麗神社。その境内に入った弘毅は、どこからか威圧の感触を感じていた。


「ん、なんだ、この感じ……?」


 万屋の仕事で、弘毅が博麗神社に足を運んだ時にはなかった感覚であった。鬼々は、理由を知っているのか、笑っていた。


「フォッフォッフォ。主よ、神社に来たらまずすることがあるじゃろ?」


 諭す様に言う鬼々。


「ん……賽銭かな?」


「そうじゃな」


 弘毅は、理解をしていないまま、戸惑いながらも賽銭箱に金を放り投げた。


「んー。願いか……。やっぱり、今日の依頼の成功だよな」


 そう言い、目を瞑ろうとした、弘毅。

 が、


「その願い、叶えてあげるわっ、よろず屋さん!」


 突然、少女が姿を現した。色は赤白で(わき)が開いている、特徴的な服を着ている。


「巫女さんか。いま、そのことを丁度頼みに来たところだよ」


「大丈夫よ。私に任せなさい」


 胸を張ってやる気満々の少女……博麗霊夢は、この博麗神社の巫女である。鬼々は、声は出していないが、相変わらず笑っているように感じられた。







「要するに吸血鬼共と和解した振りをして、私が解放されたことになればいいってこと?」


「ああ、一応そう考えているけど……」


 縁側にて相談をする二人。依頼に呆れながらも、きちんと手伝う意思はあるようだ。


「でも、退治を依頼されてるなら、倒さなきゃ駄目じゃないの?」


「いや、巫女さんを解放するために、吸血鬼を退治してくれとは言われたが、あの人は巫女さんが解放されれば、満足する様子だったから、大丈夫なはずだ」


 弘毅は、最低限の労力で依頼を解決させる様にするため、依頼人の願いを理解してきた。そこらのことはわかっているのであろう。


「なら、いいけどね。ところで、あなたって魔理沙の知り合いでしょ。あいつには頼まなかったの?」


「え、魔理沙は本当に異変解決やら妖怪退治をしているのか?」


「してるわよ。時には私の邪魔も」


「はは、それは魔理沙っぽいな」


 それを信じなかった理由は、主に子供扱いしていたから。本人が聞いたらどうなる事やら。


「って、そうだ。これ、魔理沙からの依頼の酒」


 思い出したのか、弘毅は酒を二升、霊夢に渡す。


「あら。魔理沙からだったのね、これ」


 そう言いながら、早々に酒を開ける霊夢。そのまま、開け口から呑んで、酒を一升空けてしまった。


「一気飲みか……」


「酒に飢えているのよ、あとご飯にも」


 弘毅は、その年で酒に飢えるとは如何なものか、と思ったが口には出さなかった。


「そうか。あ、前の依頼で米を沢山貰って、正直食べきれないんだが、いるか?」


「……」


 無言で目を見開いて弘毅の方を見る霊夢。


「わかった、わかった。やるから」


「……け、結婚しましょう!!」


 酒がまわるのがはやいのか、それともそんなことを口走る程、飢えていたのか。嬉しそうに霊夢が笑顔になった。

 その時、二人の目の前に人が降ってきた。正確には飛んできただが。


「あやややや、魔理沙さん。遅すぎて欠伸が出そうでしたよ」


「よく言うぜ。というかお前、なにが、欠伸が出そうだよ。普通にしまくってたぜ」


 弘毅や霊夢には、聞き覚えのある声が聞こえた。


「……よろず屋さんがこいつらをよんだのかしら?」


 笑っていたのも束の間。霊夢が面倒くさそうに言う。弘毅は苦笑いを浮かべた。


「多分な」


「どうみても、お前のせいじゃろうが」


 鬼々がもっともなことを言う。


「あら、喋るのね、そのお札」


 霊夢は、興味なさげに言った。そのことに驚いたのか、


「あ、ああ……気にならないのか?」


弘毅はつい尋ねた。


「別に。そういうのに興味を持つのは、そこの文屋とか、魔理沙とかの好奇心旺盛な人だけよ」


「おい! 霊夢。だれが好奇心旺盛だ!」


 霊夢が面倒くさそうに溜め息をつく。


「それより魔理沙。なんでここに来たんだ? これじゃ、依頼の意味がないし……記者天狗も連れてきてるし」


「おう。文が弘毅に会いたがっていたからな。連れてきてやったんだぜ? 弘毅の札のことも気になったしな」


 多分、後者が本音だ。弘毅は鬼々のことがバレてしまい、悔しそうな顔をした。


「私は記者ですので、あんな面白いスクープを放っておくわけはないじゃないですか」


「よく言うぜ、私が居なかったら、なにも出来なかったクセに」


「あら、そんなこと言いますか? いろんなことをばらしますよ」


 そう言って、手帳を取り出す文。二人は、相変わらず口喧嘩をしていた。


「二人とも。喧嘩するなら他所でやって。私は、今から紅魔館に行かなきゃいけないのよ」


「霊夢がわざわざ紅魔館に行くって、どんな気紛れだ?」


「すごいですね。万屋さんが何かやったんですか?」


 霊夢はいろいろと言われている。ここは、発言をしたら責められる場なのだろうか。

 霊夢は怒りながら、


「あなたたちでは、絶対にしないことよっ!」


と言った。


「なあ、鬼々。俺は何をしたんだ?」


「主よ、わからんのか?」


 呆れた声の鬼々。相変わらずわかっていない弘毅は首を傾げている。

 鬼々の発言に反応して、文が思い出したように尋ねた。


「そういえば、私の用事はそのお札さんです。教えてくれますよね……?」


 弘毅は、霊夢になにをしたのかを、考えるのをやめ、文に返事した。


「逃げたのにここまで追ってこられたし、もう諦めたよ。……鬼々はいいか?」


「好きにすればよい」







「大体、そういうことなんだが……。これでいいか?」


 弘毅は鬼々の持つ能力を話した。


「大丈夫ですよ。お札さんは、魔力の貯蔵と転移だけじゃなかったんですね」


 そう言いながら、手帳に何かを書き込む文。


「ああ」


 文は、鬼々の魔力から、転移の可能で魔力の貯蔵が可能な魔法具だと思っていた。だが、本来はそれに加えて分身と遠隔操作が可能であり、分身したものは意識を持たないが、札の硬度を変えることができるという特徴がある。

 魔力の限りお札を無限に増やすことができ、分身した札はあくまで分身なので、消えたら、鬼々に還元される。


「でも、これって、万屋さんの魔力はもつんですか?」


「わしが周囲から魔力を吸収しているんじゃ。主は、転移に必要な魔力など、ないからの」


 弘毅は、魔力はあることにはある。が、決して多くはない。


「……ってことは、弘毅は戦えるって事だよな?」


「まあ、ある程度はな」


 簡略に纏めれば、戦う力を持っていることになる。


「お! なら……」


 興奮する魔理沙。だが、言葉は遮られた。


「ちょっと待ちなさい。よろず屋さんとは話すことがあるから」


「えー。霊夢、ケチ言うなよ」


「はいはい」


 適当に相槌をうちながら、俺の方に顔を向ける霊夢。


「一応、和解の振りについては頼んでみるけど、駄目だったら諦めて正面から退治してね」


「りょ、了解。すまんな」


 さらっと、退治という言葉を言ってきて、戸惑いを見せた弘毅。周りの二人はなんのことかわかっていないようだった。


「いいわよ、お賽銭もくれたし」


 直後、弘毅は頭にハテナマークを浮かべた。後ろで二人があー、という声を出していたが、弘毅はそれに気づかなかった。


「まあ、それだけ確認しただけよ。行ってくるわ」


「おう、いってらっしゃい、巫女さん」


「……さっきから思っていたけど、巫女さんは気恥ずかしいからやめて」


 そう言って逃げるように飛んでいった霊夢。魔理沙は、弘毅の後ろでニヤニヤと笑みを浮かべていた。

 霊夢の見送りが終わり、魔理沙は何かを手帳に書き込む文に訊ねた。


「さて、新聞天狗はさっきから何をしてるんだ?」


「文でいいですよ。……万屋さんの能力について纏めていたんですよ。作業を始めると集中してしまいまして」


 すいません、と照れ臭そうに言う文。魔理沙はなるほど、と納得したようだ。


「そうだ、弘毅……! さっきの話の続きだ」


「……決闘か?」


「おう、スペルカードは考えてあるよな?」


「鬼々と一緒に考えてある」


「なら、話が早い! 後で、紅魔館の連中となにがあったか聞くからな?」


「あ、ああ」


その説明もしなければいけないのか、そう思いながら弘毅は札を構えた。


「うし、じゃあやるか?」


「勿論、手合わせしようぜ!!」


「万屋さん……いえ、弘毅さんでいいですか。実力を見てますね」


「ん、自由に呼んでくれ。――実力、そんな大層じゃないぞ?」


 こうして、弘毅と魔理沙の決闘が始まった。

プロットでは最終話が見えているんですが、文字にするとやはり難しいですね。

予定より話が進まなかったし……。感想、アドバイス、どしどし待ってます

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