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儀式

プロローグで切る所間違えてますね。完全に。

地球に生物たちが隕石のように落ちてきてから、人類は衰退の一途をたどっていた。

それもそのはず。落ちてきた生物たちはとてつもない生命力の持ち主だったのだ。

人類は銃火器に爆弾、果てはミサイルまでをも持ち出し生物に攻撃を仕掛けたが、生物たちが死ぬことはなく、逆に人間たちの都市へ襲いかかってきた。

人間たちの必死の抵抗もむなしく、発展した都市は生物たちに破壊され無残な焼け跡をさらしていた。

人間たちは、生物を『スレイヤー』と名づけた。

人間たちはスレイヤーについて研究し、弱点を探ったがなかなか望む結果は得られなかった。

そうこうしている間にもスレイヤーたちの侵攻は止まらず、ついに人間たちは都市を捨て森の奥深くへと逃げ込むこととなった。


スレイヤー達が落ちてきてから約二百年の時が流れた。

人間たちはかつての文明的な生活とは程遠い、狩猟・採集で命をつなぐという原始的な生活を送っていた。かろうじて、銃火器や刀剣などの知識は残されていたものの、スレイヤーたちを追い払うことが出来るくらいで、人間たちが隠れ住んでいる集落は年々数を減らしていた。


人類が滅亡してしまう!と危機感を抱き切羽詰った人々が頼ったものは『預言ノ書』であった。

二百年前の、文明的な生活を送って言うときであれば見向きもされなかったであろう書物はぞんざいに扱われてきたせいか、ところどころの文字が読むことが出来なかった。

それでも、人々は必死に『預言ノ書』をしらべ、ついに望む一説を見つけ出した。


それが、

二つの顔を持ちし者、(こと)なる世界より来たりて運命(さだめ)を変える。

刻印が現れしとき、世界は破壊へと向かう。

すべてを止めるは白き青年なり。

という一説である。


そして、『預言ノ書補足』というなんとも胡散臭い題名の本には『二つの顔を持ちし者』の呼び出し方が書かれていた。『二つの顔を持ちし者』の呼び出しには神官と魔方陣が必要らしい。

人々は、『預言ノ書』に熱心だったものたちを神官と定め、ついでに『二つの顔を持ちし者』という呼び名が長い!との理由で『二つの顔を持ちし者』を『勇者』と呼ぶことを(勝手に)決めた。



そして、来たる勇者召喚の儀式の日。

神官たちはこれまでに用意した道具を魔方陣の内側に並べ、文言を唱えた。


「お願いいたします。私たちの世界の滅びの運命を変える勇者様よ。異世界よりお越しください。」

「「「勇者さまっ! 勇者さまっ!」」」

召喚の儀式というよりも懇願と期待の連呼というものだった。

神官たちの(自称)儀式を呆れた目で見ている男と女がいた。

二人は壁際に控えていて、何かがあったらすぐに対処できるように儀式を行っている広間内に目を配っていた。


「イヤ、さすがに無理あるでしょ~。」

「そんな事言っちゃだめだよ。もうこれしか頼るものがなくなっちゃったんだから。たぶん、この儀式やってる人たちの中に本気で勇者の存在を信じている人たちなんて半分もいないんじゃないかな?予言とかって昔の人たちの妄想と戯言でしょ。ホント、こんなくだらないことやってるくらいなら剣の修行してる方が、何倍も生き残る確率が上がるって言うのに、馬鹿だよね。」

にっこりと笑いながら隣にいる女をなだめる男は腰に剣を刺し、簡単な鎧を身にまとっていた。

対する女は、布で作った簡素な服を身にまとっており、とても身軽そうに見えた。

「は、はは。毒舌もほどほどにしておかないといつか刺されるわよ。」

「返り討ちにしてきたけど?」

「・・・・すでに経験済みか。それよりも予言ノ書を戯言とか言って良いわけ?アレ書いたのってあんたのご先祖様なんでしょ。」

「やだなぁ。ご先祖様だからこそ、だよ。ご先祖様があんなのを書いたおかげで子孫ぼくらがどれだけ迷惑しているか。大体、書くならもっと具体的に書くべきだよ。何?『二つの顔を持ちし者』って。人間に顔が二つついてるってコトかな?なにそれ、化け物なの?たとえスレイヤーたちを倒してくれたとしても、その後僕たちもその化け物にやられちゃうんじゃないの?そんな、僕たちを助けてくれるかどうかもわからない相手にすがるなんて、どれだけ切羽つまってるんだか。」

ため息をつき、首を振る男。

「結局私よりもボロクソに言ってるじゃない。」

「そうかな?」

「そうよっ。」

その時、ぼわむっと音がし白い煙が魔方陣から吹き出てきた。

「えっ、嘘でしょ。」

「面倒くさいことになりそうだね」

神官たちは狂喜乱舞しているが、男は腰の剣に手を添え身を構えた。


「「「勇者様~~」」」

神官たちが手を空に掲げ、喜んでいる。

が、すぐに戸惑いの声に代わることになった。煙が晴れるとそこには、

「え?こ、ども?」

成人女性の腰の辺りまでしかないような小さな体に縞模様のある毛皮を頭からかぶっている人影があった。勇者(仮)の前髪はぼさぼさに伸び放題で、こちらからは勇者(仮)の顔を見ることは出来なかった。

「ナニ?テメーら。つかここドコ?」

「勇者様~~」

「ウッザ。いきなり何。あ、もしかして、オレをここに呼んだのってあんたらなワケ?」

「はいっ。実は勇者様にこの世界を救っていただきたく」

「オレさぁ、この一週間ずっと働かされてて今日、久しぶりに寝れるところだったんだわ。ワカル?今、まさに寝ようとしてたの。それを、テメーらが呼びやがったせいでっ」

「ひぃっ」

イラついたように神官の言葉をさえぎりにらみを利かせる勇者(仮)

「つーワケで、オレは寝る。だからテメェらは今すぐ俺の前から消えうせろ。ゼッテェオコスナ。わかったナ?」

「ゆ、勇者様?」

「なんか、性格悪くね?」

「あぁ。しかもさ、なんか小っちゃいよな。」

「実は勇者じゃないんじゃないのか。」

「あ゛~もう!ウルセェ。」

ざわつく神官たちを置いて勇者(仮)は窓枠に足をかける。

「勇者様!どちらへ行かれるのですか?!」

「テメェらがウルセェから外で寝るんだよ!」

そう言葉を残し窓から消えていく勇者(仮)

「お待ちください!勇者様!勇者様?!おい沙希サキ!早く勇者様を追え!」

「大して親しくもないくせに名前で呼ばないでくれる?」

詠唱こんがんをしていた神官が壁際に控えていた女に命令をする。

女は絶対零度のまなざしを向けながらも命令に従い、窓から飛び出していった。

不定期更新です。

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