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東方SS(第二期作品)

語られない戦い

作者: 紀璃人

椛を戦わせたかった。

以上。


 さまざまな妖怪や強力な人間の気質が漏れ出し、周囲の天気に影響を与えると言う異変が起きていたころ。魂魄妖夢もまた、この異変の解決に乗り出していた。

 スキマの妖怪との戦闘を終え天狗の山に足を踏み入れた時、遠くから飛来する一つの影を捉えた。急襲に備え、柄に手を掛けて足を半歩開いて待ち構える。

「何をしてるんですか、柄から手を離してください」

「そう言うなら先ずはその抜き身の太刀をしまっては?」

現れたのは左に楯を、右に抜き身の太刀を携えた白狼天狗の犬走椛であった。

「なんの用です?この先は立ち入り禁止ですが」

「山の上に、異変を解決しにいくのです」

「はぁ、最近そんな人ばかりですね」

「では通りますので」

「立ち入り禁止、そう言いませんでした?」

 そう言うと椛は太刀の切っ先を妖夢に向けてきた。妖夢は白楼剣を抜いてそれに答える。

 それが闘いの合図であった。


 先ずは互いに距離を詰めていく。やり取りは刹那。椛を貫かんと白楼剣を前に打ち出し椛は楯でその剣を弾く。そしてもう片方の太刀で足に向かい振り下ろす、かと思いきや途中から袈裟に切り上げる軌道をとる。妖夢は楼観剣でそれを受け、楯に蹴りを入れて距離をとる。

 開いた隙を突くべく椛は妖夢に追いすがり、次は先の軌道を逆に摺る様に袈裟切りを放つ。妖夢は楼観剣でいなし、その流れに沿って一回転。太刀を振り切った肩に向けて白楼剣を振るう。椛は楯を逆の肩にあてがい、それを防ぐ。


この間およそ数秒。お互いに一太刀も入れられずにおり、拮抗しているようにも見える。だが、二人の間には決定的な違いがある。それは椛の左にある獲物が楯であること。これはそちらからは攻撃が来ない事を意味している。

もしこれが人間同士の戦いであれば椛に軍配が上がるだろう。ヒトの打つ刀は斬ることは出来ても攻撃を受け止めればその刀は折れてしまうからだ。しかし妖夢の刀は妖怪が打ったもの。その強度は推して知るべきで、攻撃を受け止める程度であれば造作もない。

 故に妖夢の剣は剣であると共に楯でもある。それが椛との差。僅かではあるが、決定的な差。そのため今の一瞬で椛は劣勢に立ち、妖夢はそのアドバンテージから来る余裕を持って攻めに転じることが出来るのである。

 しかし椛も職務であるため、また一端の天狗としてのプライドのために退くことはかなわない。


 次に先手を打ったのは妖夢であった。互いの射程のギリギリで妖夢は腕を右が上になる様に交差させ、双の刀の峰をわが身にあてがった。もし相手が攻撃に出ても右手の白楼剣で防ぎ楼観剣で一閃できるためだ。しかし椛の行動は妖夢の予想を裏切るものだった。楯も前面に出し、体当りをしたのだ。そして椛は予め左腋に引いておいた太刀で以って一閃する。妖夢は楼観剣で防ぐも無理な体勢が祟り、その剣を弾き飛ばされてしまう。その剣は樹木の高い所に突き刺さり落ちてくる様子はない。それをみた椛は勝利を確信する。「これで圧倒的に優位に立った。負ける訳がない」と。妖夢はその気の緩みを見逃す筈もなく、先ほど引いていた白楼剣で椛の脇腹を切り裂いた――。


実際密着した状態からの斬撃ではあるため殆ど威力はなかった。しかし夏のため薄着だったことや切れ味の良い刀だったため、浅くではあるがしっかりと切り裂いていた。

椛は倒れながら自らの慢心を呪ったのだった。


「まさか刀を弾き飛ばされるとは思いませんでした。が、その慢心が祟りましたね」

「わぁかってますよ…」

 妖夢は椛の台詞が聞き取れなかったものの、様子から理解していることを察知し、刀を回収してか山へと分け入った。



飛んでいてばれると面倒なので歩いて山を登っていると開けた土地にでた。そしてその向こうにいる文と目が合った。

「飛んで行けばよかった」

「後悔後にたたず、ですね」

いつの間にか文は隣におり逃げられそうになかった…。


「貴女が異変解決に乗り出したのですか?」

「意外ですか」

「いえ、よく主は許可しましたね」

「ひと悶着ありまして」

「あぁ、やはり。その話もきかせてくださいね」

 妖夢はいつの間にか取材を受けていた。そうして20分程取材を受けた頃、唐突に文は

「そう言えば侵入者の知らせがあったんでした。とりあえず形だけでも戦いませんと」

 そう言って扇を取り出した。

 その瞳は“形だけ”では済みそうになさそうであったが。


結果、全然形だけではなかった。

「それでは始めましょうか。スペルカード!」

「ちょ、いきなり!?」


風符「天狗報即日限」


 文は常人には認識出来ないスピードで動きだした。まぁ、妖夢は常人ではないのだけど。

文は周囲を飛び回っていたが妖夢の背後に飛びかかった。妖夢は半歩開いてかわし、文を掴もうとしたがその時には既に文は十分な距離をとっていた。そして上空にいる文は次の宣言を行う


突符「天狗のマクロバースト」


文から地面に向けて無数の風圧弾が飛び出し、妖夢を狙う。しかし妖夢は同時に宣言を行っていた。


断霊剣「成仏得脱斬」


 妖夢は双の剣を交差させて振り下ろし、地面から上空に向けて剣気の柱を生み出した。その剣気は力の奔流となり文を襲った。普段の彼女ならば容易にかわせるのだが自らの断幕によって視覚出来ずもろに喰らってしまい、風圧弾もまた彼女の制御を離れ見当違いの所へ飛んでいった。

 文は当たったもののケロッとしており一言

「私は闘ったのでもう取材に移りますね」

 といって後ろについていくからさぁ進めとでも言わんばかりにじっと見つめてきて妖夢を嘆息させた。


今回の妖夢の活躍は気質の異変に対し立ち向かった一人として「文々。新聞」の超特大増刊号という雑誌程の量の号外に掲載されたのだった。

天狗との戦いを除いて。


Fin



でもこの設定だと椛は負け確定だと

戦闘シーンになって始めて気がついた作者です。

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