エピローグ「そして楽園は続く」
あれから数年が経った。
カイル農園は今や大陸最大の農業都市へと発展し、「食の聖地」として巡礼者が絶えない場所となっていた。
かつての「死の荒野」という呼び名は消え、今は「緑の聖都」と呼ばれている。
王国は第一王子の失脚後、第二王女が即位し、僕たちとの国交を回復して、なんとか食糧難を脱したらしい。
そして、カボチャハウスの庭先。
「パパ!見て見て、大きなお芋が取れたよ!」
「ママ!私はトマト取ったの!」
二人の小さな子供たちが、泥だらけになって走ってくる。
銀髪の男の子と、黒髪の女の子。僕とソフィアの子供たちだ。
背中には小さなフェンリルのぬいぐるみを背負っている……と思ったら、本物のフェンの子供たちだった。フェンもいつの間にか家族を持っていたのだ。
「おっ、すごいな。レオンもミナも、才能があるぞ」
「ふふ、将来はパパみたいな世界一の農民になるのかしら?」
エプロン姿のソフィアが、優しい眼差しで子供たちを見つめる。
彼女のお腹はまた少し大きくなっていた。
「農業もいいけど、ママみたいに優しい人になってほしいな」
「あら、カイル様ったら」
僕たちは微笑み合い、子供たちを抱き上げた。
風が吹き抜け、世界樹の葉がサラサラと歌う。
土の匂い、緑の香り、そして夕飯の支度をする美味しそうな匂い。
「さあ、ご飯にしようか。今日のメニューは特製カレーだぞ」
二人は声を揃えて歓声を上げ、家の中へ駆けていく。
僕とソフィアは手を取り合い、ゆっくりと歩き出した。
追放されたあの日、絶望だと思っていたこの場所は、今、世界で一番幸せな楽園になった。
僕の、そして僕たちの大切な庭。
これからも、この豊かな実りある日々を守っていこう。
そう心に誓い、僕は愛する家族と共に温かな食卓へと戻っていった。




