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第11話「前夜の攻防と、商人の切り札」

 騎士たちが放った魔法や矢は、畑の外周に植えられた【鏡面大豆ミラー・ビーンズ】の強固な反射障壁によって全て弾き返された。

 さらに、地面から伸びた【拘束カボチャの蔦】が、騎士たちの足を次々と絡め取る。

「な、なんだこれは!?植物が動くだと!?」

「うわああ!剣が通じない!」

 混乱する騎士団の中央に、フェンが躍り込んだ。

 彼が軽く咆哮しただけで、衝撃波が走り、鎧を着た大人たちが将棋倒しになる。

 ギルバートは腰を抜かし、這いずりながら後退した。

「ば、バカな……たかが農民一人に、王国の精鋭が……」

「農民だからこそ、ですよ。自分の畑を荒らす害虫には容赦しない」

 僕はゆっくりと彼に近づく。

 ギルバートは恐怖に顔を歪め、飛空艇へ逃げ込もうとした。

「覚えてろ!こうなれば、世界中に『この万博は詐欺だ』と触れ回ってやる!貴様の評判を地に落とし、誰も来ないようにしてやるからな!」

 捨て台詞を残し、飛空艇は逃げるように飛び去っていった。

 残された村人たちは不安げだ。

「カイル様……大丈夫でしょうか。あんなことを言われては」

「王国の影響力は侮れません。もし本当にお客さんが来なかったら……」

 ソフィアも心配そうに眉を寄せている。

 その時、ポンと手を叩く音が響いた。

 ベルナルドだ。彼は全く動じていないどころか、不敵な笑みさえ浮かべている。

「ご心配なく。あのような小物に、商人のネットワークは崩せませんよ」

「策があるのか?」

「ええ。実はですね、招待客のリストには、ギルバート殿下に恨みを持つ……もとい、彼の無能さを知る各国の重鎮がズラリと並んでおりまして」

 ベルナルドは髭を撫でながら、一枚の紙を取り出した。

「それに、今回の万博のメインスポンサーは、帝国の『美食ギルド』と、聖王国の『治癒院』です。彼らはすでにあなたの野菜のサンプルの虜。王国の妨害工作など、彼らの『もっと食べたい』という欲望の前には無力です」

 さすがは世界を股にかける商人だ。

 さらに彼は続けた。

「それに、最高の宣伝文句になりますよ。『王国が軍を出してまで奪おうとした伝説の味』。これ以上のキャッチコピーがありますか?」

「……たくましいな、君は」

 僕たちは顔を見合わせ、笑い合った。

 夜、僕は畑に出た。

 明日の本番に向け、虹色果実が最後の仕上げに入っている。

 淡い七色の光を放つその実を見つめていると、後ろからソフィアが近づいてきた。

「カイル様」

「ソフィア。眠れない?」

「はい……楽しみで、そして少し怖くて」

 彼女は僕の隣に立ち、夜空を見上げた。

 満天の星空が広がっている。

「私、ここに来て本当によかったです。泥にまみれて、美味しいものを食べて、笑い合って……王宮にいた頃より、ずっと人間らしい生き方ができている気がします」

「僕もだよ。君がいてくれてよかった」

 自然と手が重なる。

 彼女の手は、農作業で少し荒れていたけれど、どんな宝石よりも温かく、愛おしかった。

「明日は最高の一日にしよう」

「はい……!」

 そして、運命の朝がやってきた。

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